建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!



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いつもその溌剌さや浩瀚な社会的活動に注目してきた西澤泰彦先生(名古屋大学大学院教授)が退官年度という。現在、最終講義シリーズを意欲的に展開されており、東大大学院時代の先輩だった私にも不思議なテーマで声がかかった。

私たちは同門で、幕末明治以降の日本近代建築の近代化過程を跡付けていた東京大学生産技術研究所第5部の生産技術史研究室村松貞次郎先生の門下、独自の研究テーマに熱中しながら日々研鑽につとめていた。九大建築学科〜藝大院修士課程を経て村松研究室博士課程に在籍していた私が先輩、名古屋大学建築学科から修士課程に進学してきた西澤さん(敬称略)が後輩。1974年来、先陣を切って東京建築探偵団を展開していた藤森照信さん(東大名誉教授)堀勇良さん(元文化庁)に習い私たちも連れ立って全国各地を歩いた。

わけても個別の遺産遺構を訪ね歩く建築探偵稼業は、村松貞次郎世代から藤森世代を経て日本建築学会編『日本近代建築総覧』へ見事12,000棟もの遺構を跡づけて結実。さらなる近代日本の国土全体の近代化過程をとらまえる発展的テーマが、近代化遺産・土木遺産・産業遺産の枠組みとして眼前に広がっていった。

折しも横須賀市教育委員会が村松貞次郎研究室に研究委託した米海軍横須賀基地内に現存する洋風建造物調査は近代建築のみならずドライドック(修船施設)の歴史的意義や建設過程を本格的に調査分析するものであり、少壮の建築史学徒だった私たちにとってまさにドン・キホーテのような巨大テーマへ挑む高揚感や複雑な臨場感あふれる調査研究の現場体験をもたらした。

複数年度にわたり、毎夏の現地調査を軸とした総合調査成果は1988年に提出した報告書に詳しいが、10/11(土)午後、名古屋大学での西澤さんとの対談では黎明期往時の調査研究エピソードに触れる必要がある。

私たちは、例えば長さ300メートルを超える規模の巨大な第3号ドックの実測調査を旧式の巻き尺を連続的に用いながら行うという途方も無く愚直な方法に邁進したが、身体的な行動のおかげで巨大建設事業の背景に隠されていた謎が次々と副次的に解明されていった。そこには一日朝から夕方まで現場を何度も歩き回りながら浜風陸風を肌で感じ、強い夏の日差しに照らされた石造壁面を凝視しながら気づくことが多々あった。ドック建設には前提となる土地見や風向きや方位検討が加わっていたのではないか。巨大な国家的国土開発とも言える建設事業に・・・・!このような風土的かつ身体的な理解を伴わせながら粘り強く解釈するヒントが現場にあったとは!そのことを思い出さないわけにはいかない。

陶芸家河井寛次郎が唱えた「足思手考」を村松貞次郎先生もまた座右の銘とし、クロード=レヴィ=ストロース『野生の思考』から「ブリコラージュ」の考え方も門下生を鼓舞するためによく示唆されていたが、まさに村松貞次郎研究室由来の建築探偵や土木探検隊といった現場主義的悉皆調査手法は門下の私たちに染み込んだ〈態度〉そのものであった。

数々の研究知見は西澤さんが誠実に学会発表されてきた論文群ならびに東大村松貞次郎研究室・藤森照信研究室「横須賀市文化財調査報告書第17集」『米海軍横須賀基地内洋風建造物調査報告書』横須賀市教育委員会1988年に詳しい。だからこそ10/11(土)午後の対談では、西澤さんを相手に、未踏の研究分野に乗り出す際の私たち研究者の冒険魂や現場での〈態度〉に触れることも大切なミッションかもしれない。どうぞご期待乞う。

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