建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

2017/12/22西日本新聞

野外円形劇場よみがえる 「道の駅うきは」敷地内 農民劇団育てた医師ら建設

うきは市浮羽町山北の「道の駅うきは」敷地内にギリシャ式の野外円形劇場が復元された。92年前、地元の医師、安元知之(ともゆき)(1890~1927)が主宰した農民劇団「嫩葉会(わかばかい)」の提案で造られたが、安元の死去に伴い一度も劇は演じられないまま土に埋もれていた幻の劇場だ。市の復元事業でよみがえった劇場を起点に足跡をたどった。

 「観客が舞台を見下ろす観劇方法は当時としては画期的だったはず。彼らは大正デモクラシーという時代の先端を歩んでいました」

 遠く筑紫平野を望む観客席から舞台を見下ろし、安元の孫に当たる知臣(かずおみ)さん(72)はつぶやいた。

 劇場は底の部分に直径約10メートルの半円形の舞台があり、さらに奥行き約4メートルの長方形の舞台につながる。その周囲を当時は土を固めた座席で5段、現在は石積み7段の客席が半円状にぐるりと囲む。どの位置からも舞台がはっきり見えるし、屋外なのに芝居小屋のような一体感も味わえそうだ。

 市が劇場の整備に乗り出したのは2015年。国が地方創生の拠点として支援を強化する「重点 道の駅」に選ばれたからだ。劇場の発掘では舞台と客席を区切る石の列が当時のまま見つかるなどの発見もあり、その後、復元に約2千万円を投じた。市教育委員会文化財保護係の生野里美さんは「観客席の段数を増やして座りやすくするなど、当時の雰囲気を残しつつ安全面や使い勝手を考慮した」と説明する。

   ◇    ◇

 大分県と境を接する山春村(現うきは市)に「嫩葉会」が誕生したのは1923(大正12)年4月。長崎医学専門学校(現長崎大医学部)時代に演劇に傾倒した安元は、地元教師らの要望で農村青年の教養を高めようと劇団を結成する。日本の近代演劇の先駆けとされる「築地小劇場」の開設の1年前だ。

 周辺と比べても貧しい農村だった山春村。学校にも満足に通えない若者が多く、まずは字や脚本の読み方から指導が必要な状態だったが、安元の情熱と若いエネルギーが無限の力を発揮した。

 初年度から菊池寛や武者小路実篤の作品を上演すると、その後はチェーホフやメーテルリンクなど海外作家の作品も取り入れた。

 久留米市や大分県日田市での公演も成功させると、評判を聞きつけて東京などからも芸術家の卵たちが集まってきたという。知臣さんは「山村の若者に自信と希望を与えた。それこそ祖父の狙いだった」と語る。

   ◇    ◇

 嫩葉会の活動に地元の理解も広がり、安元たちは村民が一堂に集まり演劇や講演会を楽しめる野外劇場の設置を村に提案する。当時の河北俊義村長が土地を提供して1925年10月に建設が始まり、地元住民ら延べ331人による8日間の作業で完成した。

 フランスの劇作家、ロマン・ロランが提唱した「ギリシャ式野外劇場」を意識した造りは「民衆のための劇場」そのものだったが、安元が37年の生涯に幕を下ろしたことで嫩葉会も尻すぼみとなり、劇場に役者の声が響くことはなかった。

 安元は今、劇場から約1キロ離れた墓地にある納骨塔で眠る。「実質4年に過ぎない活動だが、嫩葉会が演じた戯曲は56演目に及ぶ。本当に濃密で奇跡のような時間だった」と知臣さんはギリシャ神殿風の石塔を見詰め、誇らしげに語った。

 復元された劇場は21日、地元住民にお披露目され、有志が嫩葉会の歴史を劇で紹介した。90年の時を経て、劇場にようやく魂が込められた。

2017/12/22付 西日本新聞朝刊=


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