

ある映画評から・・・・・・・・・・・出典:東京新聞 20241229
<本音のコラム>「日本人」のつくり方 前川喜平(現代教育行政研究会代表)
「小学校〜それは小さな社会〜」という映画。見ていて苦しくなった。
冒頭は、新1年生が家庭内で給食の配膳の練習をする場面。さらに教室の机を目測しながらまっすぐに並べる児童の姿が映る。新1年生の担任教師は「腕を耳に当てて」と挙手の仕方を教える。
6年生の担任教師は、体育の授業の開始時刻に全員がそろわなかったことを厳しくしかる。提出物を忘れた児童にはタブレットを取り上げる罰を与える。音楽教師は、合奏の練習で暗譜してこなかった1年生を叱責(しっせき)する。教師は児童に「殻を破る」よう促すが、破った先に求めるのは、教師の規範意識にかなう児童像だ。
教師の規範意識は確実に児童間の同調圧力になる。脱いだ上履きはかかとをそろえて置くこと。係の児童は靴箱の中を点検して○や△で評価し、タブレットで証拠写真を撮る。教室では背筋を伸ばして着席すること。係の児童は各人の座り方を点検し、正しく着席した者の名を挙げる。コロナ対策でマスクを着用すること。マスクをする児童が、マスクをしない児童を「良くないね」と言う。
こうして規律正しい「良き日本人」がつくられる。ここには障害のある子も、外国ルーツの子も、性的マイノリティーの子も、不登校の子も登場しない。この映画の英題は「The making of a Japanese」だ。(現代教育行政研究会代表)