建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

20241212 朝日新聞 青瀬健 高絢実

海底炭鉱に眠る遺骨 終戦から80年 戦中の水没事故 183人死亡

太平洋戦争の開戦からまもなく、山口県宇部市の海底炭鉱「長生(ちょうせい)炭鉱」で水没事故が起きた。日本人と朝鮮半島出身者の計183人が死亡したが、発生直後に坑道が埋められ事故は風化。82年を経た今年、市民有志が残された遺骨を収集しようと潜水調査に乗り出した。一方、実態把握に向けた国の動きは鈍い。

 宇部市沖約1キロの周防灘に、直径約3メートルの円筒形のピーヤ(排気口)2本が海中から突き出ている。194223日、この下に掘られた長生炭鉱の天井が崩れ、海水が流入。炭鉱員183人が亡くなった。

 10月末、坑内に眠る遺骨収集に向けた調査のため、このピーヤや坑道につながる坑口から水中探検家の伊左治佳孝さん(36)が海中に入った。崩れていない坑道内を約200メートル進んだところで調査を終え、伊左治さんは「継続すれば、遺骨は回収できる気がする。可能性は大いにある」と報道陣に語った。11日に東京・永田町であった集会に参加し、調査の様子を報告。「こんなところに遺骨が残っているのは悲しい。返すお手伝いをしないといけない」と力を込めた。

 調査を手がけるのは、市民団体「長生炭鉱の水非常(みずひじょう)を歴史に刻む会」(刻む会)。事故は、当時の炭鉱会社が発生直後に坑道を閉じたため、存在が忘れられた。

 地元の郷土史研究者らの調べでは、死者の7割は朝鮮半島出身者が占める。背景には、戦時中の政府方針がある。

 宇部市史によると、事故の3年前、生産カルテルの石炭鉱業連合会が「朝鮮人の集団移入」を求め、朝鮮人を炭鉱で従事させる方策をとった。海面から浅い長生炭鉱は事故リスクが高く、多くの朝鮮人の炭鉱員が「投入されることになった模様」と記される。

 郷土史研究者が、事故後に聞いた炭鉱員らの話をもとに資料や寺に残る位牌(いはい)などを調べ76年に論考を発表した。地元有志らも協力し、907月に犠牲者の数や名前をほぼ特定した。

 少しずつ事実関係が明らかになるなか、宇部市内のキリスト教の牧師らが中心となり犠牲者の追悼碑を建立するため、刻む会が91年に設立された。

 20年余りをかけて追悼碑を完成させると、次の目標に遺骨の発掘・収集を据えた。肉親を失った在日韓国人遺族らからの「遺骨を祖国に返したい」との声に応えようと、クラウドファンディングなどで資金を集めた。

 当時の炭鉱関係者らの証言をもとに、地形などを調べた末に今年9月、坑口の場所を割り出して10月の潜水調査にこぎつけた。11月には、政府側に行政主導の遺骨収集などを求めたが、明確な回答はなかった。

 刻む会は来年131日~22日、遺骨の発見や坑道内の状況把握をめざし、再び潜水調査に着手する。共同代表の井上洋子さん(74)は「遺族に残された時間はもうない。閉ざされた坑道に光を入れよう」と話す。


実態把握 後ろ向きな厚労省

 183人が犠牲になった「長生炭鉱」の水没事故から82年を経た。初めての本格的な調査に乗り出したのは、国ではなく市民団体だった。長年、国による調査を求めてきたが、国はかたくなな姿勢を崩していない。

 市民有志の「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」は今年9月、掘削工事を開始。10月には潜水調査を行った。

 刻む会の調査後、11月の会見で対応を問われた福岡資麿厚生労働相は「国による実地調査の実施や、民間調査への協力は現時点で考えていない」と答えた。理由として、海中のため遺骨の具体的な所在が特定できない日本人の遺骨と混在しているため、韓国に返還することが難しい坑道の安全性が確認できていない――と列挙。「実地調査の範囲を超えている」とした。

 そもそも、国の遺骨収集には温度差がある。

 先の大戦後、国は「戦没者」の遺骨収集の事業を実施。2016年に成立した戦没者遺骨収集推進法では、遺骨の収容を「国の責務」と定めた。だが、「戦没者」は戦闘行為などで亡くなった人が対象。水没事故の被害者は対象外だ。

 長生炭鉱に限らず、戦中・戦後に日本で亡くなった朝鮮人労働者の遺骨の調査は、「戦没者」の遺骨収集を担当する社会・援護局とは別の職業安定局に「人道調査室」を設けて実施している。

 人道調査室が動き出したのは、04年の日韓首脳会談で、朝鮮人労働者の遺骨の返還を求めた韓国側の要請に応じる形だった。

 また、05年には日韓両政府が、遺骨の問題について「人道主義」「現実主義」「未来志向」の三つの原則に基づいて取り組んでいくことで合意した。

 人道調査室では1611月までに、計237回の実地調査を実施してきた。遺骨の所在を調べ、過去の資料などから朝鮮人の遺骨かどうかや、返還可能かを確認するという。

 1018柱の遺骨について朝鮮人労働者のものと確認したが、韓国側への遺骨の返還は実現していない。担当者は「返還自体は外交上の話になる」と説明する。

長生炭鉱 現在の山口県宇部市で1914年に創業した海底炭鉱。40年度には、生産高153309トン、炭鉱員の数は992人だったという。当時は、中規模の炭鉱だった。

現地写真 藍蟹堂撮影

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