社会文化部門 菊池恵楓園絵画クラブ 金陽会(熊本県合志市)
ハンセン病患者への国の強制隔離政策で家族や社会と引き離された菊池恵楓園の入所者が、筆と絵の具で希望をつないだ集まりが「金陽会」である。望郷の念や言葉にできない感情を表現した作品群は、そのつらい境遇と裏腹に命の輝きや温かさを感じさせ、「光の絵画」と称される。ただ1人、制作を続ける吉山安彦さん(95)は言う。「生き抜くために描いてきた。絵は人生の道しるべだった」
金陽会の発足は、入所者の労働や外出を制限するらい予防法が制定された1953年。絶望しそうな時こそ太陽のように明るく描こうと「陽」の字を当てた。独学で絵を学び、毎週金曜に作品を見せ合ってきた。
強制堕胎など悲惨な記憶を想起させる絵もあるが、作品からは恨みより自由に表現する喜びや人生への肯定感がにじむ。17歳で入所し泣き暮らしていた吉山さんも前を向くため、自分を癒やすように古里の海や空を繰り返し描いた。幻想的な青は今では「吉山ブルー」と呼ばれ、展覧会などで見る者の心を癒やす。
熊本市現代美術館で初の企画展を開き、活動が知られ始めたのは結成から半世紀の2003年。当時10人ほどいたメンバーは次々と他界し、残るのは吉山さんと矢野悟さん(82)だけ。矢野さんは光の表現が巧みだったが数年前に視力を失った。それでも展覧会の感想が届くたび「希望が誰かに届く喜びを感じ、頭の中で絵を描けるんだ」と笑う。
アトリエの隅に今は亡きメンバーたちの写真が飾られている。「受賞はうれしいね。皆が生き返ってきそう」と吉山さん。「仲間の分も命ある限り描き続ける」と誓った。(川口史帆)
きんようかい ハンセン病の国立療養所だった菊池恵楓園(熊本県合志市)で1953年に始まった絵画クラブ。独学で美術を学び合い、画派や技法にとらわれない作品を多く生み出した。900点を超える作品が保存されている。2020年にくまもと県民文化賞、22年に瀬戸内国際芸術祭に出品。















