初代門司港駅の遺構解体 イコモスが中止求め「ヘリテージアラート」
毎日新聞20240904 伊藤和人記者
北九州市が解体を予定している明治期の初代門司港駅(当時の名称は門司駅)関連遺構について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス、本部・パリ)は4日、市に解体の中止を求める国際声明「ヘリテージアラート」を発出した。国内での発出は4回目。
イコモスはアラートで、遺構は鉄道と港湾建設で日本の近代化に重要な役割を果たした門司の誕生を再発見する重要な文化遺産と評価し、市の対応が遺構の保存を怠っていることに遺憾と失望を表明。その上で市に対し、現在進行中の開発を前提にした発掘調査と施設建設を中断し、遺構の価値を総合的に評価するための学識経験者らとの協議や、遺構の保存計画の策定を求めている。
また、遺構の延長部分が埋蔵されているとみられる一帯でビル建設に伴う工事を進めているJR九州に対しても、遺構保存のための工事中止を要請した。アラートは文部科学省や文化庁、福岡県にも送られる。
日本イコモス国内委員会によると、危機にひんした文化財の保護を求めるアラートの発出は今回が25回目で、国内での発出は4回目。近年では2022年の鉄道遺構「高輪築堤」(東京)、23年の明治神宮外苑(同)に続き3年連続となる。
アラートには拘束力はないが、溝口孝司・日本イコモス国内委員会副委員長は「日本の文化財行政そのものが国際的に問われかねない異常事態」と市に早急な対応を求めた。
遺構は市が計画する複合公共施設建設に伴い23年秋に実施した埋蔵文化財発掘調査で発見。約900平方メートルの敷地から、1891(明治24)年に造られた初代門司港駅舎の外郭や赤れんがの機関車庫基礎部分などが確認された。
市は8月から遺構周辺約770平方メートルを追加調査中。10~11月にも調査を終えた後に遺構を解体。施設造成工事に着手する方針だ。【伊藤和人】