建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

20240905 西日本新聞  壇 知里、古川 努
 

初代門司駅遺構「軽視に失望」 イコモス本部が北九州市にヘリテージ・アラート発出【アラート全文】

北九州市が門司区で計画している複合公共施設の建設などに伴って取り壊される予定の初代門司駅関連遺構を巡り、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス、本部パリ)は4日(日本時間)、市に対し、建設の一時中断と遺構の保存などを求める国際的な緊急要請「ヘリテージ・アラート」を発出した。
 

【関連】門司駅関連遺構を巡る「ヘリテージ・アラート」全文
 

 イコモスは「日本そして世界にとって重要な文化遺産を、北九州市が軽視していることを深く遺憾に思うとともに、失望している」としている。
 

 アラートでは、市に対し、進行中の発掘調査や施設建設の一時停止▽文化財価値を評価するための学識経験者との協議▽市民、専門家らとの開かれた対話▽遺構の保存計画策定▽遺構の破壊につながる建設行為の不許可-を求めた。

 さらに、駅舎本体が埋まっているとみられる区画で、市の了解を得て給排水管敷設の掘削工事を進めているJR九州に対しても、工事の中断と見直しを要請。文化庁と福岡県に対しては、市に対し文化財の評価に関する専門的・技術的助言と指導を行うよう求めた。
 

 イコモスは文化遺産の専門家でつくる国際非政府組織(NGO)。ヘリテージ・アラートは文化遺産の危機を世界に周知する目的で発出する。法的拘束力はない。国内では高輪築堤(東京)、明治神宮外苑(同)などに続き4例目で、九州では初めて。

(壇知里、古川努)
 

北九州市が門司区で計画している複合公共施設の建設などに伴って取り壊される予定の初代門司駅関連遺構を巡り、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス、本部パリ)が発出した「ヘリテージ・アラート」(日本語訳)は以下の通り。(日本イコモスの発表はこちら

   

 日本イコモス国内委員会が表明した懸念に連帯し、また、2024625日付けの私の書簡のフォローアップとして、イコモスは国際的なヘリテージ・アラートを発し、初代門司駅が遺跡が直面している、差し迫った、そして不可逆的な脅威に注意を喚起します。 

 門司は19世紀後半までは小さな集落でありました。本州と九州を隔てる関門海峡という戦略的な立地ゆえに、門司は1880年代に近代的な都市と交通の要所となるべく選ばれました。近代的な港と鉄道の建設は1889年に開始され、2年後に完成し、門司は日本の石炭輸出、アジア諸国との連絡路、そして近代化推進のための最も重要な港のひとつとなりました。鉄道は、炭鉱、門司駅、港を直結し、近代化に極めて重要な役割を果たしました。門司には近代的なビルや銀行、商社が建ち並び、国際都市として繁栄しました。 
 

 初代門司駅が建設されてから23年後の1914年、港により近い場所に新しい駅舎が建設されました。この二代目門司駅は現存し、駅舎として機能し、重要文化財として保存されています。この駅舎は、地元の人々の誇りとアイデンティティの源泉となっています。しかし、初代門司駅は、2023 年に初代門司駅に関連する機関庫などの遺構が発掘されるまで、忘れられていました。この発見は、近代門司誕生の地の再発見であり、重要な歴史的価値を持つものです。発掘された遺構は、当時の建築・土木技術の物的証拠であり、近世の伝統技術を用いた日本の技術者と、近代的な西洋の技術を習得した技術者の協力関係があったことを示しています。この遺跡の歴史的、建築的、土木技術的、科学的価値は、日本の多くの学者や学会、また、国際産業遺産保存委員会(TICCIH)を含む国際的な学会や組織によって広く認められています。
 

 しかし、2023年末以来の学会や市民団体からの多数の保存要望の提出にもかかわらず、遺跡が所在する土地の所有者である北九州市は、複合公共施設の建設計画を進め、遺跡の保存を怠っているとイコモスは認識しています。イコモスは、日本そして世界にとって重要な文化遺産を、北九州市が軽視していることを深く遺憾に思うとともに、失望しております。 

 私たちは謹んで以下の行動を要請します:
 

北九州市当局に対して:

遺跡内において進行中の開発事前発掘調査と複合公共施設の建設を一旦中断すること 

遺跡の文化財価値を総合的に評価するため、学識経験者との協議を速やかに開始すること 

市民、専門家、学識経験者と開かれた対話を行い、遺跡の保存について協議すること 

学術的・専門的委員会を設置し、評価された価値と開かれた対話の結果に基づき、遺跡の保存計画を策定すること 

初代門司駅遺跡内での遺構の破壊につながる可能性のある建設行為に対しては、いかなるものであっても行為の許可を出さないこと 
 

文化庁及び福岡県に対して:

北九州市に対し、初代門司駅遺跡の文化財価値の適切な評価に関する適切な専門的・技術的助言と指導を行うこと 
 

株式会社JR九州に対して

門司駅に関連する遺構の保存を確実にするため、門司駅遺跡の範囲内における工事を中断し見直すこと 
 

イコモスは、北九州市、文化庁、福岡県が初代門司駅遺跡の保存に取り組むにあたり、専門的知識を全面的に提供し、支援します。 
 

敬具 

テレサ・パトリシオ 

ICOMOS会長

 

 

 

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