20240607西日本新聞 古川努記者
補正予算案可決なら取り壊し…北九州市・門司鉄道遺構の議論はヤマ場に 市議会開会
6日開会の北九州市議会定例会は、市が門司区で計画する複合公共施設の建設と、現地で出土した初代門司駅関連遺構の取り扱いが最大の焦点となる。市民の意見が、遺構を取り壊した上での早期建設▽一部保存して施設との「共存」▽遺構の全面保存-に割れる中、市は施設建設費約123億円の債務負担行為を設定し、遺構の取り壊しに直結する補正予算案を提案した。議論は大きなヤマ場を迎える。
「債務負担行為の設定は拙速ではないか」。この日の質疑で藤沢加代議員(共産)はこう指摘した。答弁は武内和久市長ではなく、一貫して上村周二都市戦略局長が対応し「議会提案を踏まえて手続きを進めている。拙速との指摘は当たらない」と即座に否定した。
上村局長が言う「議会提案」とは、2月定例会で、市が提案した遺構の「一部移築」の費用を議会が認めなかった際、議員らが示した予算修正案の提案理由だ。特に①市民や議会への説明責任を果たし②適切な埋蔵文化財調査と厳密な記録保存を行い③速やかに複合公共施設の計画を進めるべきだ―の部分を指す。
上村局長は答弁で、この3項目を挙げ「4月から説明会を開き、追加の発掘調査範囲も決めた」と説明責任と埋蔵文化財調査を進めていることを強調。これに対し、藤沢議員は「現地での建設ありきで(提案理由の趣旨を)曲解している。市民や有識者の意見を改めて問い直すべきだ」と主張した。
また藤沢議員は、市が一部移築方針を決めた際の政策決定の過程についても質問。上村局長は「副市長、市長を交えて議論し、意思を共有しながら進め、方向性を導き出した。議事録はない」と答弁した。
有識者や学会がこぞって遺構を「国史跡級」と評価し、地元の合意形成の道筋も見えない中、市が提案した今回の補正予算案は、遺構部分にくいを打ち込む工事費も含む。予算案の可決は、遺構取り壊しの「ゴーサイン」を意味する。
施設と遺構を巡り、この日は2人の議員が質問した。7日はさまざまな立場の5人の議員が一般質問に立つ。会期末まで9日間。門司港の未来を左右する議論の行方に注目が集まる。(古川努)