建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

20240528 朝日新聞デジタル 医療サイトアピタル

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「表現を諦めない」難病ALSのダンスアーティスト 絶望、それでも
 

ダンスアーティストの新井英夫さん(57)は2年前、筋肉が徐々に衰える難病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断された。日々動かなくなる体に絶望する日もある。それでも、表現活動はやめない。

 「不自由の中にも自由な表現があることを模索していきたい」

 病気になり外出がしづらくなってからも、できるだけ対面でワークショップの仕事を続けてきた。働くことが、社会とつながるパイプになるからだ。

 車いすに乗って電車通勤し、積極的に街に出る。子どもたちがじっと車いすを見つめていると「かっこいいでしょ」、若いカップルには「重いから手伝って」と声をかける。「僕を教材にして、困ったときは頼っていいんだよ、と伝えたい」

 新井さんは演劇やダンサー活動の経験を経て、10年あまり前から幼稚園や高齢者施設などでワークショップを開くようになった。闘病生活に入るまでは、年間150回近くを数えていた。

感じた体の異変 身体表現続けるかたわら

 教えるのは、決まった振り付けを覚えたり、技術を競ったりするダンスとは異なる。自分の中でわき起こった感覚を即興で表現するダンスや無理のない体の動かし方。新井さんは自らを「体奏家」と名乗る。体の力をできるだけ抜いて、重力を感じながら体をほぐし、ゆるめることを大切にしている。

 原点は、東京芸術大名誉教授の故野口三千三氏が創始した「野口体操」。戦時中に体育教師をしていた野口氏が考案した、戦後、戦うための強靱(きょうじん)な体作りではない、重力に身を任せた楽な動きを追求したもので、新井さんは、学生時代に野口氏の教室に通い、影響を受けた。

 各地を飛び回っていた新井さんが体調の異変に気づいたのは、3年前の秋ごろ。転びやすくなり、足がつるようになった。そういえば疲れやすくもなった。

 様々な検査を受け、2022年夏、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断された。

 今は、車いすで生活している。今年の正月には箸を持てていたが、今は食事の介助も必要になった。

 一般的には発症から24年ほどで人工呼吸器をつけるかどうかの選択を迫られる。話せなくなったときのため、自分の声を録音し、読み上げ機能があるシステムに蓄積している。

病気で得たのは「負荷」じゃなくて「付加」価値

 身体表現を続けてきた新井さんにとって、ALSの告知は「絶望だった」。今も受け入れているつもりでも、ひどく落ち込むこともある。

 その度に、各地で出会った人たちの存在と、恩師からもらった「感覚こそ力なり」の言葉に支えられてきた。

 病気で筋力は衰えても、「感覚やイメージがある限り、目線一つでも表現ができる」。言葉を話せなくても、寝たきりでも、手が曲がっていても、1人ひとりのからだが生み出す豊かな表現があることを、これまでのワークショップを通して知っていた。

 だから「自分が表現を諦めたら、参加してくれた病気や障害のある人たちの存在を否定してしまうかもしれない」。そう思うと、下を向いてはいられなかった。

 病気の進行とともに、ワークショップの多くはリモートに切り替わった。非常勤講師を務めていた大学は辞めた。できなくなった仕事もあるが、ALSと分かってからは医療関係者からの仕事の依頼が増えた。「病気になって『負荷』じゃなく、『付加』価値が得られたと思っている」

 自分1人で動かせない手は、パートナーの板坂記代子さん(44)が支える。1人でできる表現は限られてきたが、2人、3人でできる表現の可能性を探っている。作業療法士と一緒に、病気で外出が難しい人とオンラインで作品をつくる取り組みも始めた。

 ケアする、されるの関係性を超えたダンスは、支援者と被支援者を分ける福祉へ疑問を投げかける。「みんな年をとるし、障害者になる可能性もある」。新井さんは表現し続けることで、「社会に分断を生まないのりしろを作りたい」という。(三宅梨紗子)

働くためにヘルパー利用 区で初、自治体で大きな差 

 「僕にとって仕事は社会とつながっていると感じられる機会」。そう語る新井さんは、昨年8月から自宅がある東京都北区の「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」を利用している。障害者の就労機会を増やすため、国が2010月に制度化した。

 区市町村が実施主体の事業で、基本は国が2分の1、都道府県と区市町村が4分の1ずつと一部負担し、通勤や職場で障害福祉サービスの「重度訪問介護」や「同行援護」などを使うことができる。従来は、経済活動とみなされ対象外だった。

 新井さんは北区で初の利用事例。対面でワークショップをする時、仕事の準備や移動の支援をヘルパーにお願いしている。「事業が広まって、区内でもあとに続く人が出てくれれば」と話す。

 ただ、厚生労働省によると、2310月末現在で事業を利用できるのは全国77自治体(計159人が利用)に過ぎないのが実情だ。

 全国で1番利用者が多い(36人)大阪市の担当者は「働く意欲がある障害者が、ヘルパーを利用することで企業の採用につながる例もある」。一方で、対象外のある県庁所在地の担当者は「ニーズを把握することが難しい。事業を使いたいという相談があってから、予算の確保を含めて検討する」と話す。

 重度訪問介護の利用者は昨年4月現在約12千人。必要としている人が利用できていない可能性があり、国は今後、自治体に事業の実施を促していく考えだ。(三宅梨紗子)

 

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自宅のリビングで電動車いすに座る新井英夫さん。壁には仕事で使うさまざまな楽器がかけられている=2024515日午後、東京都北区、関田航撮影

 

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体の動かし方を伝えるワークショップで、参加者に笑顔で話しかける新井英夫さん(中央)=2024515日午後、東京都北区、関田航撮影

 
 

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パートナーの板坂記代子さん(右)と一緒に即興ダンスをする新井英夫さん=202451日午後332分、東京都江東区、三宅梨紗子撮影
 
 

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新井さんが開いたワークショップの様子=岐阜県の可児市文化創造センター ala提供

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