20240401 毎日
佐藤姓、なぜ「圧倒的に東北」に多い? 氏姓研究家がひもとく
日本で一番多い「佐藤さん」のルーツはどこに――?
東北大高齢経済社会研究センターの吉田浩教授が1日、選択的夫婦別姓制度を導入しなければ、2531年には日本人全員が「佐藤さん」になるというシミュレーションを公表した。「佐藤」姓の増加率を基にした試算だが、そもそもなぜ佐藤姓が多いのだろうか。氏姓研究家に聞いた。【菅野蘭】
◇主な内容
・「光る君へ」時代がルーツ
・佐藤の起源
・東日本に「佐藤」が多い理由
・自分で調べるには?
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写真特集・日本の佐藤さんたち
「藤原」ばかりで不便
「いまのような名字ができたのは、平安時代と言われています。ちょうどNHK大河ドラマ『光る君へ』のころなんですよ。SNSでは、ドラマを見て『藤原さんばかりで分からなくなる』なんて声も上がっていますよね」
そう笑顔で話すのは氏姓研究家の森岡浩さん(62)だ。
藤原一族が摂政や関白など要職を占め、摂関政治で権勢を極めた時代。確かに、藤原道長、道隆、公任……。登場人物は藤原姓がとても多く識別しづらい。
森岡さんは、その「不便さ」が、名字が多様化した理由だと指摘する。例えば、京都の一条に立派な屋敷を持っているので「一条」、西園寺という寺を建てたので「西園寺」などと、藤原姓を改名していったのだという。
一方で、誰もが屋敷を建てるなどの財力があるわけではない。そうした場合、役職や支配する土地の名称などで自分の「家柄」を示した。ここで重要になったのが「藤原」とのつながりだった。
「佐藤」姓の割合が増えていく様子をイメージした動画から=「Think Name Project」の動画より
「当時、藤原氏は権力の頂点を極めた名前なので誰もが『藤原の一族』だと名乗りたい。そこで、『藤』を残しました。伊勢の藤原さんなら、伊勢の『伊』と藤原の『藤』を足して『伊藤』。すると一族と関係があると対外的に示せるんです」
「佐藤さん」の起源は?
現在、日本人の名字で一番多いのは「佐藤」とされる。確かに「藤」が含まれるが、その起源はどこにあるのか。
森岡さんによると、最初に「佐藤」と名乗ったのは平安中期の貴族、藤原秀郷(ひでさと)の子孫にあたる公清(きみきよ)。左衛門尉(さえもんのじょう)という役職だったことから、「さとう」氏になった。
しかし、なぜ「左」ではなく「佐」になったのか。その説は大きく二つあるという。
「左衛門尉」は高位ではない役職だったことから佐渡国(現在の新潟県)の長官「佐渡守」として知られていた家系図上のおじの役職名を取って「佐」になったという説。もう一つは、下野国(現在の栃木県)の佐野(同佐野市)という地名にちなむ。「藤原秀郷」の城が佐野にあり、その子孫であるため「左」ではなく、「佐」にしたという説だ。
いずれの説も裏付けるような史料は存在しないため、断定はできないという。
京とのつながり求め
ただ、佐藤姓は現在、栃木県佐野市に特別多いわけではない。「1000年近く前の話なので、みんながそこにずっと住んではいませんよね」と森岡さん。
とはいえ、佐藤姓は東日本に多い。中でも「圧倒的に東北に多い」という。
最初に「佐藤」を名乗った公清の一族は一度没落した。だが、「近藤」を名乗っていた公清のおじの孫が、陸奥国の信夫庄(現在の福島県)に住み、佐藤氏を名乗るようになったという。森岡さんは「この系統が新しい佐藤一族の本家になり、その子孫が『大発展』しました」と説明する。
森岡さんによると、京都から離れている東北では、京とのつながりを示すためにも「藤」の名字を残したという。現在、佐藤姓が最も多いのは秋田県という。
自分の名字はどのようなルーツがあるのか。興味を持ったら自分でも調べることができるという。多くは地名に由来しており、名字と同じ土地を探すのが入り口だ。森岡さんはアドバイスする。
「庶民は明治時代に名字を付けられたと教わった世代もいると思います。ですが、今は室町時代には農民にも与えられていたと分かっています。先祖代々伝わってきた名字を調べると、自分たちの先祖がどこに住んで、どんなことをしていたか、分かることもありますよ」
森岡浩(もりおか・ひろし)さん
1961年、高知市生まれ。早稲田大卒。中学生の頃から名字に関心を持ち独学で姓氏研究を続けてきた。「名字の歴史」「47都道府県 名字の秘密がわかる事典」(ともに宝島社)など監修した書籍多数。
















