建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

1.主旨

 竹田市総合文化ホール〈グランツたけた〉(大分県竹田市)の活動を通じて、地方都市における公共ホールの役割や存在意義を理解するとともに、広義のアートマネジメントが、地域社会発展にいかに寄与すべきか、を議論する。

 講義形式のみならず、藤原先生と受講者との間のディスカッションを通じて、深い理解を目指す。

2.日時  73日(月)4限(1540分~1725分)

3.進め方 105分授業のうち70分程度藤原先生にご講義いただき30分をディスカッション。

 授業はZOOMによるオンライン形式、学生諸君および土屋先生は教室にて受講する。

 

4.内容

◆土屋先生からの問いかけ(Reserch Question

(1)地方都市における公共ホールの役割や存在意義を理解する。

(2)広義のアートマネジメントが地域社会の発展にいかに寄与すべきか。

 

◆本日のお話

☞1 はじめに

20214月〜竹田市総合文化ホール〈グランツたけた〉開館3年目に指定管理者制度を導入、竹田市より竹田市文化振興財団は指定管理者を受託、財団設立にあたり私・藤原惠洋は財団理事長として招聘された。当時人口2万余(20237月現在、1万9千人に減少)の竹田市が抱える厳しい少子高齢化や人口流失・過疎化という待ったなしの地域課題を、音楽や演劇を通した非日常の魅力と観客席で泣き笑う感受性の共感・共鳴・共振・共創を通して克服すべく、グランツ事業への全員市民参加やアウトリーチ公演を日々こころがけている。

・竹田市総合文化ホール〈グランツたけた〉の指定管理者として常に市民目線から公共ホールのあり方や費用対効果を模索・検討している。

・アウトリーチ演奏は、現在日本の公共ホールでは「生の音楽を届ける」を主眼とするものの、一方的な「出前演奏」で終わらせることが多い。どんなに名だたる演奏家や芸術家でもせっかく竹田市へ訪問演奏するのなら、竹田ならではの地域特性や魅力とも言える日本有数の湧水群(軟水も硬水もあり)や北に久住連山、南に阿蘇五岳や祖母傾山系の雄大な九州山脈風景を見上げる小宇宙の城下町に魅せられて市民や子どもたちと交流しながら生まれる印象や舞台の上で演奏する人、観客席で聴く人が対等である双方コミュニケーションをたいせつにしてほしいと願う。

・理事長の公的な立場に加え、202211月から竹田総合学院(旧竹田中学校再利用施設)において竹田市民公開講座アルティザン・トークを毎月展開中。誰もが周知するアーティストや有名人ではなく、竹田ならではの地産地消型ものづくり・ことづくり・ひとづくりに輝きを見せる街角の達人・名人(=アルティザン)を招き、たっぷりと双方向の対談を楽しむ。おおむね月替り、毎月の語り手はすでに10名を超えた。

☞2 理事長藤原惠洋とは何者か?

・藤原惠洋のルーツは阿蘇南郷谷、育ちは菊池川流域の穀倉地帯、体格が群を抜き熊本県赤ちゃん大会では優勝を飾った。子ども時代は運動万能、走り高跳びと相撲で名を馳せ、周囲からの大相撲力士への期待に悩んだ。九州大学工学部では建築学を物理と方程式で学ぶことに違和感を覚え、芸術と生活をつなぐ本来の建築に回帰したいと設計現場に勤務。一方で東京藝大の社会人大学院として建築理論を修め、東京大学生産技術研究所の博士課程で建築史学の工学博士を取得。生産技術史研究室は戦後の登呂遺跡の発見や1960年代グラバー住宅の再発見を主導した梁山泊、居心地が良く6年間も研究三昧で知的遺産が培われた。

・現代美術家である芥川賞作家であった赤瀬川原平氏との交流も1986年創立の路上観察学会で生まれた。無用の長物だが異彩を放つ路上の物件を超芸術トマソンと命名、鳥瞰的な計画構想を我が物へ勝手に変容させる生活者の旺盛な虫瞰世界を対比させ、まちの肌触りを炙り出す感性が国民的共感を呼んだが、そのブームのまっただ中に路上を歩きながら市井に浸った。

・研究者としては日本近代建築遺産の全国リスト作成を端緒に建築保存と再生・活用の相乗作用を検討、空き家や無指定文化財の対策、市民参加に基づく文化財まちづくりの標榜など、来たるべき再生型社会のあるべき姿を標榜してきた。

・こうした経験知が集積され、文化審議会では長らくユネスコ世界文化遺産国内候補を審議、一方、市井や路上では世間遺産を再発見。世界遺産から世間遺産まで真剣に論じる稀有な研究者として知られていった。

・竹田との出会いは小宇宙とも言える盆地世界への関心がきっかけ、大学教育に有効な生活環境フィールドとして抽出し九州大学学生帯同の演習を重ねた中、前市長の農村回帰政策に賛同し知的交流を深めた。社会再生・都市再生の壮大な実証実験の場として城下町を再整備していった際の補助金事業評価委員会を所掌、それらの事業取り組みのいっかんとして20127月水害で被災した旧竹田文化会館の建て替え時、建築家選出プロポーザル審査の委員長を務めたが、よもや201810月開館した竹田市総合文化ホール〈グランツたけた〉を、開館後3年めから指定管理する財団の理事長に推挙されるとは思ってもいなかった。

・ならば竹田の魅力たっぷりの文化資源を深掘りするしかないと年に4回の理事会では飽き足らず、旧三町を張り巡らした灌漑用水路遺産を手始めに入田湧水群や長湯温泉群、11座も残された神楽舞や神社祭礼、高燥な尾根沿いを求めた農家屋敷や歴史的建造物の数々、なにより由緒深い土地の物語や記憶を語り継ぐ古老たちへの初見参挨拶を兼ねた突撃インタビューを繰り返しながら、大学時代と変わらぬ勢いで自主的フィールドワークを一年に70回以上も重ねてきた。各地区を托鉢僧のように行脚しつつ、好奇心溢れる質問を重ねる姿に最近は泊まっていいよ、とのお許しも嬉しい。

・今の夢は竹田市のどこかに棲みつくこと、そこで大学研究室を埋め尽くしていた学術書や研究専門誌を一堂に集め藍蟹堂(らんかいどう)文庫をかたちづくること。ちなみに藍蟹堂とは藤原の画号。由来は宮澤賢治「やまなし」に出てくる川底の子ども蟹。青い空が映る川面を見上げていると、ぷかぷか流れてきた山梨に美味しいかなと気を寄せるも、突然急襲してきたカワセミが尖った嘴で奪い去っていく。臆病者の子ども蟹には一瞬の恐怖だが、青ざめて見守っていたばかり、に違いない。世界の転変や変容にいつも臆病に臨むしかない私は、この蟹そのものであり、たとえ自己改革や自己変容を標榜するも、何事もこの臆病にも青ざめた私からしか歩み出せない、と自戒を与えたものです。

 

3 地方都市における公共ホールの役割や存在意義

(1)    自主事業の創出


(2)   専門家・専門業者委託を超えて市民参加・市民参画へ

(3)    2012(平成24)年制定「劇場・音楽堂等の活性化に関する法律」は「新しい広場」「世界への窓」をめざそう

(4) 
  竹田市総合文化ホール〈グランツたけた〉を支える市民の箴言(実践的教訓)


 広義のアートマネジメントが地域社会の発展にいかに寄与すべきか 

(1)    広義のアートマネジメントがめざすものは、文脈の再生、矜持の再生、紐帯の再生


(2)  文脈、矜持、紐帯は、地域社会の持続可能な発展に欠かせないベースメント・リソース(基本的な地域固有資源)

(3)  アートマネジメントとは「暴れ馬を飼い慣らす」、したがってマネージャー(調教師)の能力形成が鍵

 
(4)  
未来へ〜ウェルビーイングとしての拠り所

 
☞5  受講学生諸君とのディスカッション
 

ご意見・ご質問は、藤原惠洋メールまで 

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