みなさま、お元気でしょうか。
今年はどういう年だったでしょうか。
毎朝、9時頃に黄金町のギャラリーに来ると、前の道路はきれいに清掃されています。近くの簡易宿泊所の初老の男性が落ち葉などを掃いてくれています。黄金町のスタジオに入居しているMさんは、通勤途中に吸い殻や空き缶を拾いながら、黄金町にやってきます。彼らの活動によって、町はちょっときれいになっています。私も何かしなくては考えさせられる今日この頃です。
今年の衝撃は10月の台風19号。関東地方をはじめ、長野、茨城、福島、宮城など多くの場所で河川氾濫があり、多数の家屋が水没、多くの死者・行方不明者を出したことです。災害列島日本は、今年も地震、台風、夏の異常気象など、様々な災害をもたらしています。
私の友人の弟夫婦は、宮城県丸森町で農業に従事していましたが、10月12日の台風でがけ崩れにあい、亡くなりました。妻はまだ、行方不明のままです。11月末に東北地方を旅しましたが、2011年の東日本大震災で被害を受けた場所が、今回の台風でまた被害を受けるなど、これからの生活再建をどうしようかと悩んでいる人も多かったのは悲しいことです。これらの異常気象は、地球温暖化がその一因となっていることは、ほとんどの専門家が指摘しているところです。温暖化の影響で、ベネチアも大雨などの災害がなくても街は浸水してしまいました。11月にベネチアを訪ねた友人は、長靴持参でひざ下まで来た水の中のサンマルコ広場を歩いたといっていました。
地球環境のために何ができるのか、16歳のグレタ・トゥーンベリさんの国連気候変動サミットでの発言は胸に刺さります。次世代の若者が真摯に発言していることについて、私たちは身の回りのことも含めて考えていかなければなりません。私の日々の生活は、ほとんど自炊で、食品ロスをなくすため余ったら冷凍。空調は最低限にして電気をあまり使わない。買い物は控える(買いたいものがなくなっている)。コンビニや通販で買い物はほとんどしません。それでも、日本社会のエネルギー政策が不十分でまだまだです。二酸化炭素放出の多い石炭火力からの撤退はしません。原発は二酸化炭素の放出量が少ないと言われますが、放射能の危険が大きすぎて絶対反対です。
台風19号の翌日13日に横浜国際競技場で「スコットランドVS日本」ラグビーが行われました。スタジアム周辺は前日の鶴見川の流量が多くなったため、周りの鶴見川多目的遊水地に川の水を引き込みました。これは国の事業で、目標として戦後最大降雨の昭和33年狩野川台風規模の洪水に対する安全性を確保するため、260m3/sの洪水調整を行っています。このため、国際競技場でのラグビーの試合は行うことができました。関係者の苦労は並々ならぬものだったに違いありません。そのかいもあって、今大会のベストマッチと言っても良い素晴らしい試合でした。しかし、観戦途中に宮城県の友人から、丸森に住む弟夫婦ががけ崩れで行方不明、助けてくださいとフェイスブックに記載されました。ラグビーの試合を見ながら心はアンビバランス。神様に祈るしかありませんでした。
自民党の二階幹事長「台風被害はまずまずで収まった」という発言は、自分のいる場所(東京)さえ大丈夫ならば、ほかは「まずまず」で済ませてしまう感覚、「さくらは見たくない」という官房長官の発言に象徴される、隠蔽、無視、モリカケ問題以降の隠蔽体質の政治は「卑怯者」と言わざるを得ません。この国の政治家、官僚、リーダーはどこを見て社会のためと思って動いているのだろうかと考えさせられます。ギャンブルをはじめとするIR事業など、経済性ばかりを追求する世の中、嫌ですねえ。林横浜市長は、例えば自分の孫がギャンブルにはまり、お金をくれと何回も言って来たら、お金をあげるのでしょうか。自分の問題として切実に考えてほしいものです。
今年、印象に残ったことは、80歳で現役の詩人「吉増剛造さん」に会って話ができたことです。石巻リボーンアートフェスティバルで2か月にわたって「詩人の家」で創作活動を行い、来る客に対して丁寧に話をしてくれる姿を見て、感激しました。学生時代に吉増さんの詩集を購入して読んでいたことを話すと、とても喜んでくれて、吉本隆明さんとの話など楽しい20分余りの時間、最後には妻と3人のスリーショットを撮らせていただきました。「生涯現役」ずんと胸に響く出会いでした。
一方、9月4日の朝日新聞「終わりと始まり」の池澤夏樹さん(74歳)の文章。「自分が老いたと思う。それが日々実感される・・・」と毎日の出来事にある老いの現象を書きながら「身体能力が足りないからエネルギーを節約する。つまりすべてにおいて横着になる」「知的好奇心が衰えた。新しいものに飛びつかなくなった・・・」と、「高齢化でこの国は活力を失うだろう・・・あとは衰退の一途である」「我々は商業資本とテクノロジーが提供する目の前の悦楽にうかうかと身を任せ、出産・育児・教育という投資を怠ってきた。・・・・・」
そして最後に「これは悲憤慷慨ではない、いずれ退場する身とは承知している。では若い人に席を譲ろう。年下の諸君、幸運を祈る」と締めくくっています。
吉増剛造さんとの出会いの後にこれを読んで、「池澤さん、どうしたのしっかりしてよ。まだまだたくさん言いたいこともやりたいこともあるはずだ。」と感じました。池澤さんの分析は当たっているでしょう。しかし、それでも行動し続けるのが私たち初老(古希を迎えたので中老か?)の役割ではないでしょうか。「生涯現役」で社会に参加していくこと、それをしっかり胸に刻んで生きたいと感じました。
愛知トリエンナーレを巡る「芸術活動」への行政の介入の在り方。芸術は、いつも反体制的なのはあたりまえ。批判精神をなくした活動は、戦前の大政翼賛会的であり、怖いと思わなくてはなりません。補助金の問題を含めて、いつも声をあげていかねばなりません。自由な精神と活動、平和で健康であること。それが民主主義の基本です。
高齢者による悲惨な交通事故の際に「上級国民」という言葉が一部で使われました。いやな言葉です。人間には高級も低級もないと思いますが、阿久悠さんが残した未発表の詩に下記のようなものがありました。自分も「上級試験」をいつも受けているのだと思います。
「上級試験」
自分を捨て 他人のために役立ちたい たとえ 一生は 貧しいままであっても
狭い家に住んでも 誇りというあかりがあるから 心が沈むことはない
誘惑をふり払い 欲望を押し籠めて
つまらぬ人だと云われても 胸をそらして笑っている
そういう人にわたしはなりたい
そういう人にわたしはなりたい
こういう世は 愚かなほどにマジメがいい
変わり者だねと 指す人がいたって
派手な友達に会っても 自信というオモリがあるから 心が揺らぐことはない
贅沢に溺れずに お世辞など聞き流し
今日より明日の世を思い 澄んだ瞳で見つめている
そういう人にわたしはなりたい
そういう人にわたしはなりたい
作詞:阿久悠 作曲:山崎ハコ アルバム「山崎ハコ・横浜から」より
10月で古希を迎えました。昔ならば、稀に生きる年齢だったのでしょうが、人生90年の現在では通過点です。若いころと違って、身体的、社会的な課題を抱えていますが、私の生活は質素でゆったりと楽しいものになっています。毎日、家でワインを呑みながら、健康に生活できている幸せをかみしめ一日一日を過ごしています。
「清く楽しく美しく」が信条ですが、好々爺になるのではなく、今までと同じように,理不尽なことには口煩く発言することを忘れずに、煌々爺を目指します。
あと20年くらい?皆様とお付き合いさせていただき、自分のために行うことで人の役に立つことを行う・・・それが、私の目指す良い人生です。
みなさま、これからもよろしくお願いします。
では、みなさま 健康で文化的な生活を楽しみながら、災害のない良い年をお迎えください。
MZartsは12月22日(日)〜2020年1月8日まで休廊します。
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