日本伝統の遊び“折り紙”と日本のソウルフード“おにぎり”を合体させたペーパークラフト「オリニギリ」が2017年4月に発売され、話題になっている。2~3の三角すいが連なった形や鳥、富士山の形など従来の型ではできないユニークな形のおにぎりを、折り紙を折る感覚で簡単に作ることができる。おにぎりを握ったことのない外国人でも、折り紙に挑戦するように楽しく握ることができるという。
同商品を開発したのは、建築設計事務所・向日葵設計の新田知生氏。コンペに出すビルの設計をするために紙を折りながらデザインを検討していたときに偶然、三角すいが2つ連なる形状を発見したのがきっかけ。「折り紙のように折れば、いろいろな形のおにぎりができるのではないか」と考えて試してみると、1日で9種類もの型ができたという。その型をオリニギリと名付け、東北復興イベント「東北風土マラソン2015」でのボランティア活動を皮切りに、「一枚の紙から無限大の形ができる創造性を多くの人に伝えたい」と考えて各地でワークショップを行うようになった。
「おにぎりを作るだけの便利商品ではなく、使う人々の創造力次第で一枚の紙からオリジナルのおにぎりが出来上がる、そんな知育・食育のお手伝いをする商品であることを重視している」(新田氏)。2016年にグッドデザイン賞を受賞したのを機に商品化。2017年5月からAmazonで、6月からロフトや東急ハンズなどの一部大型店舗での取り扱いが始まった。
店頭では通りすがりに買う人はほとんどいないが、メディアに取り上げられるとAmazonで注文が殺到し、1日に100件の注文が入った日もあるという。最近では各地でのワークショップ活動の成果もあってか、毎月の注文が増えてきているそうだ。またボランティアでワークショップを手伝う「オリニギリ隊員」が全国に60人ほどおり、2017年8月には米ニューヨークにも拠点ができた。先進国の肥満と途上国の飢餓の同時改善を目指すNPO団体「Table For Two」にも参加しており、この秋、米国で実施される「おにぎりアクション」の活動で得た収益の一部を寄付する予定だ。
「何でも簡単にすぐにできてしまうのに少々飽きてしまっている方に、自分の手から生まれる創造的な作品を、目でも舌でも楽しめる楽しさに気づいてほしい」(新田氏)という。
(文/桑原 恵美子)