『平成 28 年度日本水道協会専門別研修報告書』によればベルリン上下水道公社
BerlinerWasserbetriebeへの視察時に以下の情報を得たとのこと。(抜粋)
「ベルリン上水道は、1852 年にプロイセン政府と英国会社Fox 及び Frampton との間で、ベルリン市に水道水を供給する契約がなされ、1856 年にベルリンで初め
ての水道会社が運営を開始した。一方、下水道は1873
年に建設が始まった。第二次世界大戦後の 1945 年に
全ての上下水道資産がベルリン市の所有となったが、
1949 年、ソ連によるベルリン封鎖などにより、ベルリン市が分割され、これに伴いベルリンの上下水道資産
も2つに分割されることとなった。その後、1990 年のベルリンの壁崩壊を契機に合併が進み、1994 年に現在のベルリン上下水道局が誕生した。1999 年には部分的民営化を経験した。つまり、ベルリン上下水道施設の株式のうち、ベルリン市が 50.1%を、残りの 49.9%を RWE と Veolia が所有する形態となったが、
2011 年に州民投票により部分的民営化を廃止し、再公営化することが決まったため、
ベルリン市はRWEとVeolia から株式を買い戻し、2013 年に完全な公営企業として再ス
タートし、現在に至っている。
(中略)ベルリン上下水道公社の原水は、93%が地下水であり、残りの 7%は表流水を使用しているとのことであった。浄水場は 9 箇所あるが、主に 3 つの大きな浄水場(テーゲル、 フリードリヒスハイン、ベーリッツホーフ)から給水を行っているとのことである。浄水処理方式はどの浄水場でも同じで、地下水を取水後、エアレーション、反応槽、急速ろ過を経て、配水池に貯留され、市内にポンプ圧送される。ベルリンではほぼ地下水を使用し、水質も安定していることから、塩素は漏水事故などの緊急時を除いては使用していないとのことであった。なお、地下水の取水から給水の末端までの到達時間は季節にもよるが、概ね 60 時間以内であるとのことである。ベルリン市内における配水運用のポイントとして、給水区域は高低差により大きく 3 つに分けられるとのことである。ベルリン市内をベルリン-ワルシャワ渓谷が横断しているため、市内北部および南部の標高が中央部に比べて高く、30〜50m の高低差がある とのことであった。これらの高地区に対しては、途中で加圧ポンプ施設を設置し、再加圧して配水しているとのことである。 原水の取水地域は水源保護地域に指定されており、3段階に分けて様々な制 限を設けているそうで、これらの水源保護地域はベルリン市の面積の 25%、森林地域も 含めると実に35%にも及ぶ」
都市全体の上下水道施設の概要は以下のとおり。
・給水人口:約 400 万人(ベルリン市内:350 万人、周辺地域:50 万人)
・浄水場:9 箇所
・下水処理場:6 箇所
・給水契約数:約 29 万(建物単位での給水契約であるため、契約数は少ない)
・配水管延長:約 7,900km(平均埋設年数:52 年、最も古いのは約 120 年)
・下水道管延長:約 9,600km
しかし毎日暮らす中、飲料水や湧き水の美味しさを知る者としては、石灰分の多い硬水はそのまま飲むのにははばかられます。そこでもっぱらスーパーで炭酸入りのペットボトルをまとめ買しして用いてきました。余談ながらペットボトルは1.5リットル入り一瓶0.25€のリサイクルがあるので、スーパーへ持ち帰って購入クーポンにしていくのですが、そのペットボトル一瓶が0.70€程度。お安くアルプス地方の南部ドイツ原産の美味しい水にありつけるという趣向です。
この点に関しては、さらにネットで見つけたフォーラムbmkというサイトの2005年の記事に以下のような興味深い説明がありました。
「水道水の品質
南ドイツの水道水のうまさを知っている人には、ベルリンの水道水がドイツでトップクラスだと言ったら笑われるだろう。ベルリンの水は石灰分の多い硬水で、味の点ではお世辞にも「高品質」とは言えない。北ヨーロッパでは、アルプスなど山地に近い南部の方がうまい水の産地で、有名なミネラルウォーターの源泉はその地方に集中している。
だが「水道水」には、水道水の評価基準がある。サイトの説明によると飲料水や料理に使えることはもちろんのこと、乳児に与えることができるほど安全で清浄だとのこと(www.bwb.de/deutsch/trinkwasser/wasserversorgung_berlins.html)。トップクラスだという根拠は、ドイツのテレビ番組雑誌HOR ZUが実施した水道水テストで、化学物質の検出を基準として4万人以上の住民に水を供給する270都市の水道水を評価したところ、ベルリンの水道水は「良プラス」だったということだ。その上の格付け「とても良い」はバーデン-バーデン、バイロイト、エアランゲン、ノイシュタット・アン・デア・ヴァインシュトラーセの4都市だけで、いずれも中小の都市で、ベルリンのような大工業都市ではない。ベルリン水道公社のサイトでは、ミネラルウォーターとの比較も憚らないと言っているが、それは宣伝が過ぎるというものだろう。
そのような高品質の水をつくる浄水技術を視察しようと、そして最近では民営化研究の事例にしようと、日本からも毎年何組もの視察団が浄水の現場を訪れる。筆者も、そのような視察団の通訳として、2005年8月ベルリンの浄水場の一つベーリッツホーフ (Beelitzhof) 浄水場を訪問した。そのときの様子を交えてベルリンの浄水システムの特徴を報告したい。
技術の問題か?
まず驚かされるのが浄水技術。高品質の水道水を供給するからには、よほどの技術、ハイテクがあろうかと考えるのが自然だろう。しかし実際に行って話を聞いてみると、浄水技術に関しては全く予想を裏切られる。
浄水のプロセスはというと、まず地下からくみ上げられた水は、空気に曝し、硬度を調節する。その後、砂、礫の高速フィルターを通して、不純物を濾しとる。これで水道水の出来上がり。その後、必要があれば消毒、殺菌用に化学物質を加えることは技術上可能で、そのための施設も用意されてはいるが、非常時以外には使われない。このように塩素等の化学物質を加えないということが、乳児にとっても安全な水という根拠なのだろう。
実に単純な浄水技術だ。案内役の浄水所スタッフの口からも、「我々はプリミティーフ(原始的)な方法で」との説明が何度もあった。そして、彼はそれを誇りにしてように感じられた。
浄水場外での努力
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| 水源保護地域の道路標識 |
どのような対策が講じられているかというと、水道水の水源を確保するために、ベルリンの面積のほぼ25%が水源保護地域に指定されている他、地下水のくみ上げによって地盤沈下が発生しないように、地下水を人工的に作り出す努力も行われている。そのためには、徹底した下水処理はもちろんのこと、表層水を浄化して自然の湖沼に流すなど、地道な努力が行われている。地下水位については、ベルリン全体の地下水位が各所に設置された測定装置とコンピューターにより計測、観察されている。
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| 市民の憩いの湖 シュラハテンゼー |
ベルリンの水道事業には、ただ飲料水を作るだけでなく、使った水を処理し、自然に返すという環境配慮や循環のコンセプトがあり、これこそがベルリンの「原始的な浄水方法」を支えている。そして浄水場のスタッフが、「原始的な浄水方法」を誇るのも、ここに理由があるのだろう。 このような自然の循環を利用した浄水コンセプトはベルリンに限らず、ドイツでは一般的なのだが、ベルリンは大工業都市でありながら、コンセプトを成功させている事例と言って良いだろう。
参考:ベルリン上下水道公社 (Berliner Wasserbetrieb (BWB)):www.bwb.de」
そこで、ベルリンのまち歩きの途上で見かける塔屋などを頼りに、19世紀末期から20世紀初頭へかけての浄水場、配水場、水道路線等の関連施設を鋭意探索中です。











































