建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

先日、6月11日(土)に九州大学大学院環境・遺産デザインコースの芸術・文化環境論の学外演習が竹田で行われました。

芸術・文化環境論の授業では、今年4月から時代の趨勢や産業の構造変化により、余儀なくされたブランフィールドを回復していくための世界各地の創造的な活動を事前学習したところ、今回は身近いところで行われている日本の竹田市の活動に注目し、学外演習を行うことになりました。

竹田市は、大分県の南西部に位置している人口約2万3千人の典型的な中山間地の1つです。しかし、高齢化や過疎化が進んでおり、どんどん地域の活力がなくなっている地域でもあります。一方新しく赴任した首藤勝次市政が始まってから平成21年「農村回帰」の宣言後、積極的な地方創生政策を行っています。その1つが文化芸術が持つ創造性に注目した地域再生プランです。その努力は日本全国に知られ、去年は文化省長官表彰「芸術文化創造都市部門」に受賞されることになりました。
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今回の学外演習の日は、その授賞式を兼ね、藤原先生と首藤市長、また地元の竹芸家中臣一氏との記念トークショーが行われる日でした。藤原先生は、昨年度竹田市が展開されました芸術文化創造人材の移住定住を促進した竹田市再生計画の助言者であると同時に文化庁長官表彰「芸術文化創造都市」部門同表彰審査委員として立ち会っていたので、首藤市長をはじめ沢山の竹田の方々が藤原先生に感謝の気持ちを伝えてくださいました。

まず竹田市に到着してからは、街を歩きしつつ竹田市の街並みを探索しました。その中で最初に気が付いたのは綺麗な水音でした。もともと竹田市は江戸時代の岡藩の城下町として繁栄され、当時から稲葉川から水を取水し街全体を流す水路が備えられ、ユニックなまちの景観を構成しています。その水路は当時に頻繁であった火事を防ぐために防火水として使われたそうです。

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街を歩くと突然立派な鏝絵と会うことができました。鏝漆喰が流行りなっとのは江戸時代終わりから明治時代にかけて活躍した伊豆の長八という左官の影響だそうです。この作品を残したのは後藤五郎さんという方です。鏝でこのような立派な作品ができるなんて、左官の腕に頭が下がります。

このように竹田市では先達の知恵や技術があちこち残り、街の魅力を高めています。

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この空間は、街中の創造拠点にしようということで今年3月に作り出したそうです。出来る限り静かな街並みと合わせるように工夫され、窓を開けると水路の清涼感を味わうことができます。このようにリモデリングされた空間も地元の文脈を十分考え整備されています。
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次に尋ねたところは紺屋「そめかひ」という所でした。
そめかひの店主である辻岡快さんは、大学時代に日本画や染色を学び、竹田市には2013年に移住し店を開いたそうです。竹田市を選んだ理由は、水が綺麗し、コミュニティ環境がいいので子育てするのにいい環境だと思ったそうです。
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店に入ると、なんか体に優しそうな匂いがするのですが、その理由は、原材料として利用している藍が発酵されている匂いでした。
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このように染めた布は、水に洗い何回も色染めを繰り返するとどんどん濃い紺色に変わっていくそうです。
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また、辻岡さんは材料として使われている藍を自ら栽培しています。
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もともとこの空間は作り酒屋でしたが、昭和の中頃には倉庫として使わられた空間だそうです。
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色染めができた製品は「青は藍より出でて藍より青し」ものになり、とても美し色に変わります。
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辻岡さんと話してみたところ、辻岡さんは、もともと民芸運動に興味を持っているということで、竹田で作業活動をしながら持続可能な地域づくりを考えていました。すなわち、単なるものを生産して販売するだけではなく、このようなものづくりが衣食住全体に広がり、私たちの日常生活を見つめ直す切っ掛けになることを願っておられました。今度の辻岡さんとの交流がとても期待されます。

竹田市では、ユニックな工房やギャライー以外にもB級グルメで有名な所もあります。その一つがとり天で有名な丸福という店です。
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13時からは、竹田総合学院(TSG)で開かる文化省長官表彰「芸術文化創造都市部門」授賞式及びトークショーに参加しました。

文化省は2007年より、文化芸術を持つ創造性を地域振興、観光・産業振興などに領域横断的に活用し、地域の特色を活かした文化芸術活動や社会問題の解決に、行政と住民との協同、行政と企業や大学との協力などにより取り組み、特に顕著な成果をあげている市区町村に対し、文化省が表彰を行っています。

去年は、北海道の剣淵町と富良野市、また大阪府の豊中市と共に大分県の竹田市が選ばれたのです。
今日は、文化省の宮田亮平長官が竹田市来られ、授賞式が行われました。

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竹田市が文化芸術創造都市部門に表彰された理由は、地域の過少化や高齢化といった地域問題をアーティストや若い人々を移住・定住させ、地域コミュニティの活力や新たな産業を生み出しているからです。その主な拠点になるのが、今回授賞式が行われる竹田総合学院(TSG)です。

竹田総合学院は、旧竹田中学校校舎をリモデリングし2014年4月17日オープンしました。ここには、工芸家方などに作業場を提供し、人材育成を図るインキュベーションの役割や、芸術家が一定期間入室し、地域に根付いた作業活動の場を提供しています。ちなみに、竹田市の移住・定住政策の拠点といえるでしょう。さらに、竹田市の移住・定住の重要な特徴の一つは、アーティストやクリエイターたちを市の中に呼び込み、地域の活力を取り戻すと同時にそれに基づいた新しい産業やコミュニティ再生に取り組んでいることです。
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授賞式が終わった後、すぐ藤原先生と首藤市長、また地元の竹芸家中臣一氏との記念トークショーが行われました。まず、首藤市長から竹田市の地域遺伝子という話が出て、城下町で繁栄してきた竹田市では、もともと彼らを受け入れる包容力があり、文化芸術が豊田地域であったこと、また藤原先生からアーティストの移住にとどまらず、それらをマネジメントしていく都市引退者たちとのネットワークを通じた「インキョ(隠居)ベーション」役割など多様な提言や意見交換が行われました。

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トークショーが終わった後は、竹田総合学院の各創作空間をお尋ねました。

新本聡さんは、西洋画の作家として竹田市には2014年に地域お越し協力隊として竹田市に移住したそうで
す。竹田市に来てからは、地元の子供向けのワークショップを開催したり、地域のリサーチやヒアリングを通じて地元の歴史や建物からインスピレーションを受けたものを作品として制作したりしています。
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森貴也さんは、今年4月に地域お越し協力隊として竹田市に移した方です。
ステンレスと鉄を一緒に使い時間に立つと鉄の部分だけが錆がつき、時間の経過を楽しめるユニックの作業活動を行っています。地域お越し協力隊は、市の非常勤職人であるが、アーティスト作業活動を市の仕事として扱い、彼らの創作活動を地域活性化に活かしているのがとても印象的でした。
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甲斐哲哉さんは、もともと竹田市の出身の方で、東京から2014年に竹田に帰省し地域お越し協力隊として活躍しています。主に版画や陶芸の創作活動をしています。

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竹田総合学院には窯がないので、隣の街の窯を利用しているそうです。
窯に入れる余った薪は、面白い作品に変わります。
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このように竹田総合学院では、沢山の地域お越し協力隊の方々が自分の作業活動を通じて、地域の新たな文化芸術環境を創出しています。
最初の1年目の竹田総合学院は半分美術館の役割もありましたり、アーティストたちは街の中のイベントなどを手伝ったりしたそうです。また2年目、3年目には総合学院の活動に固まってきて、今年から入った方々は、主に自分の作業活動を中心に、地域文化芸術インキュベーション施設として竹田総合学院を活用しているそうです。

奈良出身である山本哲也さんは、今年が3年目になる地域お越し協力隊の方す。山本さんは芸術というのは3年間の間に大きな結果を出すのが難しいので、実際に家族と竹田市移住して、地域お越し協力隊との3年期間が終わっても、竹田を拠点に作業活動を続けていきたいと言われました。
このように、竹田総合学院を通じて山本さんのような人材を育成していく中で、竹田市は文化芸術の仕事に関わっている人々に対する積極的な移住・定住政策を行っているのが特徴です。
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中臣一さんは、地域お越し協力隊ではない形で、もともと竹田市の出身の竹芸家の方です。
竹田総合学院には半分は、地域お越し協力隊の方ですが、そのほかは、安く空間を借り、作業活動を行っています。中臣さんは、2012年に竹田市へ移住した先駆的な方で元々自宅形工房で作業活動をしましたが、竹田市総合学院ができてから、こちらで作業活動を続けているそうです。また、それとは別に竹田市の中心商店街では、大都市からユータンし、工房やギャラリー、飲食店などを開ける人や、隣の都会に住みながら、週末だけ竹田で店を開ける人など沢山の人々が文化活動を展開しているそうです。

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最後に向かったのは、滝廉太郎記念館でした。
滝廉太郎は、12歳から14際まで竹田市で過ごしたことがあり、明治30年には脚気を患い竹田に戻り静養をしと事があります。滝廉太郎記念館は、もともと滝廉太郎の父が直入郡の郡長だったため、郡長官舎として使われた武家屋敷でした。現在は、滝廉太郎が聞いたはずの「音」を体験できるユニックな記念館として使われています。

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街をあるくと若いアティスと、子供たちが笑顔で「こんにちわ」と親しく迎えてくれます。
大人のみならず、子供の話を聞くことも大切!
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竹田市は、昔からの城下町としての多様な文化や人材を受け入れながら繁栄してきたそうです。それで、昔から継承されている先人たちの知恵や文化などが今まで地域遺伝子として残り、新しい文化芸術による地域再生の捨て石になった気がします。これから、竹田総合学院を拠点としたアティスとの活動や文化・芸術を用いた移住・定住政策などなどがあと5年後、10年後にどんな形で地域を支えて行けるのかとても期待されます。

D3ジャン

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