建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

先日4月19日(火)は、韓国ソウルで開催した「ソウル型都市再生の現況と課題」という討論会に行ってきました。今回の討論会は、「自律公共実践会議準備委員会」という民間組織が主催になり、以下のようなプログラムで行われました。

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1)事前行事 14:00~15:00
・見学:ソンスゥ洞散策
・挨拶の言葉1:イ・テホ(自律公共実践会議共同準備委員長)
・挨拶の言葉2:シン・マンスゥ(ソンドン共同社会経済推進団代表)

2)発表 15:00~16:30
・キム・ユンファン(トゥクド企画団長)「ソウルソンスゥ洞都市再生の現況と政策課題」
・カン・ウォンジェ(セウン商店街ガバナンス総括コーディネータ)「都心創意産業地再生活性化事業_ダシセウン(また立つ)プロジェクト
・ミン・ウンギ(SPACE BEAM代表)「仁川元都心都市再生の現況と東区べダリ活動」

3)討論 16:40~18:00・座長:キム・ジュンギ(美術評論家)・討論者:イム・ジュファン(thefairstory代表)、ユ・チャンボク(ソウル市協治諮問官)、ユン・ジョンウ(ソウル市都市再生支援センター推進班 住民コーディネート)、ジャン・ジヨン(ソウル市社会的経済支援センター)

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そもそも、「自律公共実践会議準備委員会」は、芸術の公共的実践を目標しているものの、自律性を一緒に議論するための芸術人たちのネットワークです。近年、韓国でも文化的な都市再生が盛んになっています。しかし文化を前に立たせるという行政の美辞麗句に隠れて、既存の再開発と変わらない都市再生を行っている場合もすくなくありません。「自律公共実践会議準備委員会」は、このような都市再生における、芸術家やアートの自律性を大切にするグループだと言えます。

私(ジャン)は、去年、日本社会で話題になった藤田直哉氏の『前衛のゾンビたち-地域アートの諸問題」という論考の話がいよいよ韓国でも課題になっているとと思い、急ぎ、韓国の状況を調べるために行くことになりました。

「自律公共実践会議準備委員会」のキム・ジュンギ氏(美術評論家)によると、「自律公共実践会議準備委員会」は、実際は、造形物市場の問題から始まったそうです。韓国では、1972年からある程度の規模の建築物を立てるときに建築費用の1%に当る美術装飾・造形物を立てることになっています。しかしある時期、1人の作家が80億ウォン(約8億円)をもらったこともあり、行政とアーティストの間の不適当な取引に問題意識を持つようになったそうです。それで今は、さらにアートが都市再生と関わってきて、芸術の公共性と自律性を確保するための「公論の場」を作っている最中です。

今回の発表者や司会者は、主に都市再生に関わってきた美術家や評論家で、討論会の時はソウル市の行政側からも沢山の方々が参加し有意義な議論を行いました。

まず、キム・ユンファン(トゥクド企画団長)氏から「ソウルソンスゥ洞都市再生の現況と政策課題」に関する発表がありました。キム氏は、統營(トンヨン)市「ガングアン青小道づくり事業」の総監督を努めて、地域の歴史や文化に合わせる造形物や美術看板などを設置する作業を行いましたが、現在は、地元であるソンスゥ洞都市再生の共同体事業チームを努めています。キム氏は今回の発表を通じて、ソウル市の都市再生政策の課題を取り上げながらいくつかの改善対策を見せてくれました。
まず、ソウル市は2014年より、都市再生示範地域を5つ指定し、様々な実践を行っています。しかし、
1)事業の推進方向には人中心を揚げ、共同体の主体的な役割を強調しているものの、実際の法案としては、公共主導で行っていること
2)大学の教授やエンジニアリング会社主導により計画を立て、住民の参加通路は図式的に止まっていることを問題として指摘しました。

ソンスゥ洞は、手作り靴の商店が約500か所が集まっているところです。また昔から製造業の工場や倉庫が沢山あった所でしたが、最近は工場が移動した所にアーティストやデザイナが入り、地域を元気づけています。
ソンスゥ洞は、住民教育のための都市再生大学を開催したり、住民協議体の参加者を104名まで増やしたり、住民公募事業を提案したりしながら、12個の分科を作り、住民主導の都市再生を計画しています。
しかし、総予算100億ウォン(10億円)のなかで、89億ウォン(約8億9千円)が施設工事予算であるとのこと。キム氏は、都市再生事業の中で既存の再開発式事業は、別の事業として扱う必要があると謳いました。



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次は、カン・ウォンジェ氏(セウン商店街ガバナンス総括コーディネータ)から「都心創意産業地再生活性化事業_ダシセウン(また立つ)プロジェクト」に関する発表がありました。
セウン商店街もソウル市の都市再生活性化地域の一つとして、住民主導の都市再生のいい事例として評価されています。
セウン商店街は、当時韓国を代表する建築家金壽根(キム・スゥグン)が設計し、1972年に竣工された当時には、メガストラクチャーの事例として世の中の注目を集めました。その後、老朽化されたセウン商店街は、再建築対象になりましたが、近年、空き店舗にアーティストが入り活動したことが切っ掛けとなり、現在は、都市再生の方針に切り替わっています。
カン氏は、去年からソウル市からガバナンス活性化計画を担当しています。住民主導の都市再生を行うために、最初は地元の商店主たちとの関係づくりから始めました。その方法として取り入れたのが、住民の肖像画を描くことでした。カン氏はこのように肖像画を描くなかで、住民に声をかけ、話を聞き、発掘された話をソウル市や建築関係者に伝え、商店街の歴史や文化が都市再生に反映されるようにしたそうです。
また、ジェントリフィケーションを防ぐために、オーナーと賃借人の間に「相生協約」を結び、さらに法的な力を持たせるため、「標準契約書」を回したそうです。その結果、今年からガバナンス運営は、エンジニアリング会社ではなく、ソウル市から直接支援をもらうことになりました。これからは、地元の修理工と青年たちが修理技術を媒介とした共同組合を運営する予定です。また、青少年技術代案学校や、協議体構成などを目指しています。
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最後にミン・ウンギ氏(SPACE BEAM代表)から「仁川元都心都市再生の現況と東区べダリ活動」に関する発表が行われました。ミン・ウンギ氏は、もともとハイアートを長らく続けてきた作家ですが、モダニズムアートが芸術の「基本的な美ともいえる自由さを無限に拡散できず、特定の形式の中に囲まれたまま、制度化され、人々を仕組みに閉じこめる規制になってしまった」と述べています。(ソウル大学美大卒業生がべダリ「住民になること」、ファンへ文化、2013.12)
それで、ミン氏は、「作家の概念を新しくし、ある意味があることを作る人(家)」で設定したそうです。
その彼にとって、仁川市で関わっている都市再生活動は、一つの芸術作業といっても過言ではないと思われます。
まず、彼は、仁川の中区の都市再生を「都市に粉を塗っている(化粧をしている)」として批判的な視点を持っていました。1883年度に開港され結成された仁川の東区は、歴史的な建造物が多く残っています。しかし、官主導の都市再生政策は、それ以降の都市の変遷や歴史、住民の暮らしに着目せず、都市のすべてを人為的な昔の街並みで飾っています。
それに対して、ミン氏は、べダリ村中心を横切る産業道路の計画に反対するため、べダリ村の古い醸造場へ美術活動拠点を移し、工事反対運動や周辺の全面撤去に向かってきました。また、工事が中止され、2年間放置されていた工事現場に地元の住民と無断に入り、ごみを片付けながら集められたごみで作品を作り「べダリエコパーク」と呼ぶなど、現在は住民の菜園としてコミュニティを生み出しています。その他にも陰暦正月に祭りを行ったり、空き店舗を活用し要らないものと必要なものの情報を交換することで、物々交換を行ったりしています。

(仁川市の行政主導の都市再生の例)
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発表会が終わった後は、討論会が行われました。
対論会で主に議論になったのは、概ね3つでした。

1つ目は、「主体としての住民」
現場で活動している方々は、実際に現地で活動してみると一番困るのが、主体とされていない主体(住民)がいるとのことでした。行政がマスタープランを樹立する時に集まった住民は、名分を立てることに利用され、実際に興味がある人は、すべてが行政が頭にいることにがっかりして帰ってしまうそうです。それで、参加者たちは、住民の公論の場を作ることが大切だと共通認識を持ちました。また、司会者のキム・ジュンギ(美術評論家)氏は、アートこそ、その公論の場を作るための適切な方法になると述べました。
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2つ目は、「カタリストの役割」
今まではウル市の都市再生において主に行政や住民の関係に関する議論が多かったのですが、そのほか、カタリストの役割を重視する必要があるという指摘がありました。つまり、日本のまちづくりで行っている「よそもの、わかもの、ばかもの」といったような「ファシリテーター(促進者)」の役割が韓国でも試行錯誤のあげく、似ている意味のほかの言葉で「カタリスト(触媒者)」が使っているようです。その意味で、これから韓国では、地域社会に興味を持つ多様な人々を活用する議論や行政の支援が行う可能性が高いと考えられます。討論会では、芸術家たちが住民を都市再生の主体に変わっていく「カタリスト」として注目していました。
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3つ目は、「わかもの活躍」
都市再生において、わかものの力が重視されています。韓国では「青年失業」問題が大きな社会問題になり、青年の革新的なアイディアやチャレンジ精神を、都市再生に活用する動きがみられています。しかし、青年芸術家が必要だ重要だと言うだけで、わかものがその活動を通じてどう飯を食って生きていけるのかに関する悩みは、少ないという現実的な課題に対する指摘もありました。
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今回の討論会の後、私は翌日チャンシンドンを再び訪ね、新しく変化しているチャンシンドンを見てきました。韓国は、変化のスピードが速すぎると思いながら、このようなダイナミックな変化の中で、韓国の都市再生や地域再生をみると今もあちこちユニークな事例が沢山誕生しています。

今回の調査は、ソウル市の都市再生の現況と課題はもちろん、韓国のアートの社会的な役割の変化などを一気に見ることができる有意義な時間になりました。

D3ジャン


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