建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

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九州産業技術史研究会では、毎月1回、第34週の火曜日の夕刻より定例会を
行っています。定例会では、産業技術史に関する様々なテーマの元、ゲスト講師、
研究者、会員、博士後期課程の学生等が発表し議論を深めています。

さる322日に行われました定例会では、倉敷市立短期大学服飾学科 准教授の
松内紀之氏をお招きし、『北部九州における祇園山笠の山笠台補強手法に関する
技術史研究』と題した発表と、活発な議論が行われました。

 

日時:2016322日(火)18302030           

場所:九州大学芸術工学部(大橋キャンパス)

   5号館531教室

 

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松内先生は、千葉大学時代、学部生と修士一年生の時に藤原惠洋先生に師事され
ました。その後、福岡の西日本工業大学で教鞭を取られます。その後、九州大学
石村眞一研究室に所属し、現在は九州大学藤原惠洋研究室にて博士後期課程の
研究を行われています。
祇園山笠の補強手法に関する研究を始めたきっかけは、元来祭礼関係のことに
関心があったことが大きいとのこと。また、福岡在住時、3年程インテリア
デザインの企業に務めていたことがあり、木組に関する仕事をしていたことも
大きかったそうです。祭礼のこと、木材のこと、福岡固有のことが合わさって
博多祇園山笠の山笠台の研究を行われることとなりました。

 

 

研究のきっかけは、博多祇園山笠を作る大工の方が「山笠台を補強する八ッ文字縄
は、激しい巡幸でも木材の傾きを正す働をしている」と語られたことに大きな
驚きと、本当だろうか?という興味関心が沸いたからであるとのこと。
その後、縄の伸び具合の実測調査、シュミレーション調査といったことを
繰り返すも、好ましい結果は得られず、他地域の山笠と比較研究を行うことに
なりました。
 
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写真は 2014年7月14日 ふ印ブログよりhttp://keiyo-labo.dreamlog.jp/archives/1992593.html 

 
 

博多祇園山笠は、舁き山と飾り山に分けられます。以前は飾り山を巡幸させて
いましたが、電線のため舁き山が生まれました。車輪はなく、アスファルトに
衝突しながら引きずっていることから、大きな負荷がかかり傾くことを見越して
山台が作られます。山台はクギを使わず縄だけで作られており、台脚の丈夫には
縄が対角線のように巻かれています。その形から、この縄の部分を八ッ文字縄と
呼びます。八ッ文字縄という独特の締め方は、山笠台の傾きを正し、また衝撃を
緩衝するといった大きな働きをしているそうです。それらを科学的に調査する
ことが出発点となりました。

 

実測調査やシュミレーション調査を経て、北部九州にて他の山笠の事例調査へ
乗り出した松内先生。八ッ文字縄を使用し、祇園山笠と似た立体的な対角線の
結びは、約40事例のうち7件が該当しました。生立八幡神社の山笠、上須恵
祇園山笠、鐘崎祇園山笠等が挙げれました。

それぞれの山笠では、使用する素材や、縄巻の順序、棒間を繋ぐ縄の形態や
目的に差異が見られたとのことでした。

 
 

これらの研究発表を受けて、質疑応答では、産業技術史的な視点や建築的な視点
から、様々な議論が活発に行われました。

特に、博多祇園山笠の技術的変遷をどのような形で立証していくのか、またその
社会的意義はどこにあるのか、といったことが重視されました。山笠における
技術的な変遷は、過去の写真や絵はがきから見てゆくといった方法が提案され、
また、縄の意味が形骸化している場合においても、神聖性という価値がある
のではないか、といった視点も提案されました。
松内先生の研究は、山笠の伝統的技術継承のための記録・保存といった価値
のみならず、地震大国日本における、木造建築の技術が凝縮された対象であり
それらを紐解いていくといった価値もあるのでは、といった意見もありました。

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 松内先生のご研究は、祭の担い手となる様々な人々と、丹念に関係性を作り上げ

ながら得た知見であることが感じられました。山笠ではその装飾やスピード、
担ぎ手といった華やかな面に注目が集まりがちですが、それらを支える山台の
技術や、縄の存在にも光を当てられています。その工夫の中には、古の人々が
培った生活のための技術が反映されていることを知り、興味深く感じました。
松内先生、どうもありがとうございました。

 

次回の研究会は、
419日(火)18302030 

九州大学大学院芸術工学府大橋キャンパス5号館5階 531教室にて、

中西哲也氏(九州大学総合研究博物館准教授・地質学専門)による発表を
予定しております。

会員・非会員に限らず、どなたでもお気軽にご参加できます。
ぜひご参集ください。



写真:岩井  文:國盛 

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