↑サンフランシスコ公共図書館
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6月26日(金):カリフォルニア大学バークレー校とサンフランシスコ公共図書館訪問、
ALA(アメリカ図書館協会)展示オープニングレセプション
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↓ カリフォルニア大学バークレー校を訪れました。木があちこちにあり、安心できる環境です。
図書館研修は丸善と図書館総合展合同の企画で、この研修には現地対応をしてくれた総合展のスタッフ・エドワード増井さんも同行しました。そしてエドさんは、このカリフォルニア大学バークレー校哲学科の出身とのことです。母校の話題提供をしてくれたのですが、なぜか学生の一部に、ヌーディストになって大学内を走るグループがあったそうです。
カリフォルニア大学バークレー校C.V東アジア図書館に行き、日本語資料司書のマルラ俊江さんからお話を聞きました。カリフォルニア大学は、カリフォルニア州バークレー市にある州立大学で、1868年設立。
学生数は37581人、教員数は1620人、大学院14、学部170。パブリックアイビーの一つ。
この大学図書館は州立ということもあり、無料で利用できます。スタンフォード大学は入るのに手続きが必要でしたが、こちらは何も手続きせずに入ることができました。日本では図書館を利用する人のことを利用者といいますが、アメリカは利用者のことを「patron=日本語発音でペイトロン」と言っていました。アメリカでは利用者はパトロンと呼ばれます。パトロンは辞書をみてみますと、支援者、保護者と言う意味を持っています。
中はいたって普通の図書館です。
24時間開放されている学習室。
この図書館にはキュレーターがいるとのことです。日本の図書館には常勤のキュレーターはいないと思われます。(国立国会図書館国際こども図書館には非常勤のキュレーターがいるとのことですが)。
キュレーターがいたら、図書館でできることの幅が広がるなあと思いました。図書だけにとらわれない、展示や面白い・興味深い企画をして多くの人に利用してもらうことが日本の図書館では必要だと思うのです。
また、24時間開放の学習室というのも良い試みだと思いました。日本は無理かと思います。
↑偕成社の今村社長と↑この大学OBエドワード・増井さん
大学近くでお土産を見ます。
カリフォルニア大学から、サンフランシスコ公共図書館へ移動します。↓はサンフランシスコ市役所
↓はサンフランシスコ公共図書館。創立は1878年。分館が27件あり、蔵書は346万冊です。電子図書も12万3440冊あり、2013-14年度予算は676万ドル(約8億4千万円)。1996年4月にオープン。6階および地下1階。
蔵書数は200万さつデスクトップパソコンは217台。ノートパソコン40台。ブレット6台。2014年度の利用者は141万4074人。収容人数2043人個人学習席23室。サービスとして、定期的展示会とイベント、無線ラン、就職活動のサポート、ヨガ・メディテーション教室、ITスキル講習があります。
シアトル公共図書館はホームレスの人々が無料で使えるシャワーや洗濯場について書かれたリーフレットを設置していましたが、サンフランシスコ公共図書館は、「職業案内・職業支援」「退役軍人のための職業支援」を非常にしているようです。日本のハローワークの機能の一部をもっているかのような案内が沢山ありました。
↑このメガネの彼は高校生ですが、図書館案内ボランティアをしています。私たちの団体が案内の予約をしようとしたら拒否をされたようですが、このように現地にいってお願いすると、この新しくできたメディアコーナーの部分だけですがボランティア案内で対応してくれました。
ここにゲームやダンスの映像を映して、皆で踊ることもできます。ゲームセンターではなく図書館で踊れます。
↓保育所ではありません。図書館内の児童エリアです。
↓就職(退役軍人含む)支援のためのプログラムや案内が沢山貼られていました。
図書館がこんなに就職支援をするのだということを初めてしりました。日本で図書館内に本格的な就職支援の場を設けているのは くまもと森都心図書館 しか知りません。大抵は、スキルアップ本や就職体験談や「なるにはBOOKS」シリーズを置いて、「就職支援コーナー」としているように思います。
この日までにシアトル公共図書館、ワシントン大学図書館、マイクロソフト社図書室、スタンフォード大学図書館、カリフォルニア大学バークレー校図書館、サンフランシスコ公共図書館を見てきました。
特に公共図書館に関しては、日本の公共図書館とはかなり違います。図書館の機能を提供する側の姿勢・許容性・包摂性、そして図書館機能を使う側の意識もその持ち方が日本とは違うように見えました。
図書館利用者のことを英語ではpatron(英語圏で「利用者」の意味)といいますが、これは図書館が天与の恵みで偶然与えられたものではなく、自分たちで苦労して築き上げてきたからこそ出た言葉のような印象を持ちます。単なるuserではないのです。
シアトル公共図書館のホームレスの人々に無料シャワーや洗濯の場を知らせるリーフレットの設置、サンフランシスコ公共図書館の退役軍人を含む人々への就職支援の多さに感動しました。
沖縄の嘉手納基地内の図書館でも思ったのですが、アメリカの図書館は蔵書数の多さを誇るより、それをどのようにpatronに利用させるか、多彩な図書館主催プログラムを提示して、その有用性を社会全体に示し、patronたちに存在を示し実行していくかに重きが置かれているように見えました。沖縄嘉手納基地内図書館では子供向けの楽しそうなプログラムが沢山用意されており、利用者は楽しみに待っているようでした。
アメリカの図書館は、利用する側の意識においても、日本のように無料貸本屋のような図書館ではなく、生活と一体化した図書館の利用の仕方をしているように見えました。
日本の図書館は首から上の「頭」「頭脳」の部分のみを相手にしていて、アメリカの図書館は「身体全体」を相手にしている印象を持ちました。身体性のある図書館と言いたいところです。
日本の公共図書館は、人によっては「有っても無くても同じ」という考えを持っている人がいると思います。税金が図書館に投入されることに反対の人もいるかもしれません。貸出返却だけなら司書でなくてもできるし、人でなくてもできます。実際、貸出返却機を設置している図書館が多くなってきています。図書館は蔵書を多くし、利用実績を増やすことのみに終始するのには違和感があります。それが目的ではないからです。住民の生活向上を目的の一つに入れてみてはどうでしょうか。そして、より多くの利用者userではなく、支援者・保護者patronを得るためには何をしたらよいのかを考えるがよいのではないでしょうか。コンシェルジュ対応が必ずしも正しい答えとは思えません。
図書館でできることを増やす、そして、それだけではなく、機能の増えた図書館の仕事に幅広く対応できる人材の育成が必要かと思います。大人しく座って事務的な仕事、調べ物の仕事をしているだけの図書館職員ではなく、まずは地域に出て何がこの町には必要なのかを感じとること自体にもう少し取り組むべきではないでしょうか。
岩 井