建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

 「釜山港へ帰れ~」1976年、韓国の国民歌手チョー・ヨンピルが歌って大ヒットしたこの歌は釜山という都市のアイデンティティをよく表しています。日本植民地時代には植民地労働者たちが踏んだ最後の国の土地であったり、朝鮮戦争の時は沢山の避難民たちが別れ、家族を待っていた約束の場でもありました。彼らは釜山港で「釜山港へ帰れ~」とよびながら懐かしい兄弟や恋人を待ってきたのです。

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 1876年、韓国で最初に開港された釜山港は1939年には釜山の人口の222160名の中で日本人が51829名、つまり人口の約1/4が日本人だったそうです。釜山は今も地形の7割が山地で当時は日本人から土地を奪われた多くの人たちが山に新しい家を作り住みはじめました。その後1945年の独立を迎え海外同胞の帰国や1950年は朝鮮戦争をきっかけに多くの避難民が釜山に入り、釜山の人口は195170万人まで急速に増えました。

 その結果、釜山は山の中腹に住宅が並ぶという特徴的な景観のまちを形成していますが、一方で、少子高齢化により山腹道路(韓国では山の中腹にある町を山腹道路と読んでいる)の人口の減少率が36%にいたるほど衰退が進んでいます。釜山はこのような歴史的事情と現在の地域の疲弊を背景としながら再生を目指しており、その特徴はこのような山腹道路をよみがえらせていることだと言えます。この他、釜山では日本人が馬小屋として使っていたところに人が住み始めてできた村の再生や7080年度急速の工業化により発展したものの、90年代後半市役所の移転により空洞化した旧都心再生まで様々な場面で都市再生が行われています。
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<甘川文化村>

住民、行政、専門家によるガバナンス構築によるまちづくりが始まってから5年。

9677人が住んでいる町に年間観光客80万人。


 甘川文化村は朝鮮戦争から避難して釜山のボスドンに集まった太極道(1921年にできた民族宗教の一つ)信者たち約1000世帯が1955年現在の甘川2洞(ガムチョンドン)に新しい信仰村を作ったのがきっかけです。その後釜山の産業化により新しい人が流入され10年前は約3万人以上が住んでいた賑やかな村でしたが現在は9677人しか住んでいません。しかし、2009年にアート作品を設置することをきっかけに、現在は年間80万の観光客が訪ね失った村の活力を取り戻しています。初めて村にアート作品の設置による地域活性化を提案した韓国・ドンソ大学のリ・ミョンヒ教授はアート作品を通じて人々に注目されることを目標にしたそうです。すなわち単なる観光客のためではなく、今まで村の活動には興味がなかった人たちを村の活動に参加させるために、そして増加している観光客をみて行政が関心を持たせるように村に作品を設置したそうです。実際に作品の制作を担当したジン・ヨンソプ氏は「ここは貧しい人が住んでいるまちであるので高い美術は住民たちをいじけさせる。それで、少ない予算で住民たちに分かりやすくて親しい作品を設置しようとした」と述べています。その結果、村の親しい作品は観光客を呼び寄せることにとどまらず、住民協議会ができたり、行政による住居環境整備やマスタープランの樹立により村の発展のための持続的な予算を確保することができました。
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 村住民協議会ゾン・スンソン副会長は村マップの販売や村の企業(カフェー、食堂、アートショップ)の運営を通じて共同体を中心に仕事を創出しながらも村の所得で生活環境改善事業などを行っていく予定だそうです。その他行政からは区の予算で空き家を買入れ、ゲストハウスやアーティストアトリエなどを作っている最中です。
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 甘川文化村を初めて訪れた人たちは作品よりカラフルな建物の色にびっくりします。ドンソ大学リ・ミョンヒ教授によると下の港まちで船に塗って余ったペンキを持ってきて壁に塗ったから船のように華やかな色になったのではないかなと推測しています。現在甘川文化むらでは村の原型を保存するために5つの色を決め、住民たちにこの5つの色の使用するように勧めているそうです。
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 村計画家リ・ミョンヒ教授と村活動家ジン・ヨンソプ作家は甘皮文化とちょうど似合う服を着て村の住民たちと深い交流を続けています。どこに行っても懐かしく迎えてあげる住民たちをみると彼らたちが村でどのぐらい信頼されているのかがよく分かるようになります。
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<メチュクチ村(マウル)>

3無(台所、トイレ、木)3多(空き家、共同トイレ、老人)の村


 釜山で一番劣悪な住居環境で知られているメチュクチ村を初めて訪問した時の印象はまさかこちが釜山なのか?という質問から始まるかもしれません。建築エンジニアリングの会社を運営しているアン・ヒョドク氏が2010年に都市美観整備事業の用役業者としてこの村に入った時も同じ感想だとそうです。その後、アン氏はただ外観だけではなく村の人たちのために休み場一つくらい作って欲しいということで、自費を使って村のコミュニティ場である村喫茶店を作り村のまちづくりに積極的に参加しているそうです。


 1876年、開港以来釜山は海岸の方面に平地が少なかったので1898年に本格的な海の埋め立て工事を始めました。メチュクチ村がある所は日本時代の1932年に工事終了され日本軍のシベリア出兵のための兵站基地として使われたそうです。メチュクチ村のメチュクとは「埋築」の韓国語の発音で主に隣の港から降りる日本の軍馬と馬子の休み場として使われたそうです。太平洋戦争が終わり空き地になったのですが、また朝鮮戦争の時に避難民たちが入り込み、馬小屋を改造して住始まったのがメチュクチ村の起原です。1954年に大きな火事ができ村は新しく再生されましたが、当時のまちの区画や馬小屋の様子が推測できる家屋が残っています。P3210319

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 村計画家(釜山市から任命された住民主導の地域再生専門家)であるアン・ヒョドク氏は

「地域の専門家は行政も都市再生専門家ではなくて地域で4050年住んでいる村の住民だ」と話しています。しかし、彼らは地域のことを改良、図面化ができないのでアン氏のような村のコーディネーターたちはドライビングの役割をするべきだと述べています。アン氏は住民の話を傾聴しながらいらない水タンクや空き家を活かして家庭菜園を作り、音楽際や演劇際など文化イベントを開催したり、住民たちと一緒にクッキーを作って販売もしています。メチュクチ村は20年前から再開発対象地として選ばれていたので撤去された家の跡に美術作品を設置したり、いつでも移動が可能な住民運動施設を設置したりして空き空間を活用しているのが特徴であります。
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 「メチュクチ村の地域住民の生活はとても劣悪な反面、空間と境界の微妙な調和で釜山近現代の大切な文化的空間と歴史的な価値を同時に持っている地域である。(2013年、住民自叙伝、アン・ヒョドク氏の発汗辞の中」
 

 アン・ヒョドク氏はメチュクチ村は韓国の近現代の大切な文化資源だと述べています。しかし、アン氏が考えている資源というのはマニュアルされた歴史や建物ではなくその時空間でも苦労しながらも家族を養い、みんなが協力して生きてきた隣の人たちの話です。アン氏は2013年、いつかは無くなるかもしらない村の記憶を残すために住民10名をインタビューし、住民自叙伝を本で作ったり、ドキュメンタリー映像で作ったりしました。メチュクチ村はこのように住民の話を聞く中で彼らの人生は素晴らしいだったと住民たちの昔の記憶を再評価しながら地域再生へつないています。
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(休憩している調査団にお菓子を渡す地域住民)
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昔には火事が発生した時に鐘を鳴らして住民たちにお知らせしたそうです。
しかし、現在は CPTED(Crime Prevention Through Environmental Design)事業を通じて安全・安心まちに変わっています。
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トタトガ 


「衰退している旧都心を文化空間として使う」
 

 韓国の釜山市は1997年まで市役所がある中区が行政、ビジネス、文化の中心地でありました。しかし、1988年現在の蓮堤区に市庁舎が移転することになり元々市役所があった旧都心は空洞化が急速に進んで来ました。それで釜山市は6年まえから衰退している旧都心を再生するために地域の芸術団体の要求により空き事務室を買入れアーティストの作業空間として提供することになります。現在、トタトガ(旧都心創造空間)には355人(20153月)のアーティストが自分の作業活動をしながら地域に失った活気を取り戻しています。

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市役所の移転とともに昔の活力を無くした旧都心は、最近山ほど積み上げている白菜のように失った村の元気を取り戻しています。


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現在のトタトガセンター長であるキム・ヒジン氏は元々映画監督として釜山という地域を背景とした様々な物語を発掘して地域のアイデンティティを映像で表現していましたが、トタトガで市民のための映画教育をしたのがきっかけになり、現在はトタトガのセンター長として空間管理及び運営、市民を対象とする芸術教育、イベントなどを総括しています。キムによるとトタトガは初めてからジィントリフィケーションを防ぐため目に立つところより目に立たない空間を借りてアーティストの空間として使いはじめたそうです。トタトガは釜山市が賃貸を払い、アーティストが3年間ただで空間を使うことができます。しかし、トタトガで活動するためには自分の創作活動が50%で残り50%は地域活性化のために市民に対する文化サービスをすることが条件になっています。今年410日(金)から630日まではトタトガで祭りが行う予定です。キムはこの祭りを通じて「小道を歩く中で隠れている文化空間を発見し、日常の祭りというもとで日常生活での多様な芸術体験ができるようにしている」といわれています。

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(アーティストの恊働作業室)
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 もし、このような市民を対象とする文化活動でアーティスト自身の創作時間を奪われる恐れはないのか気になったですが、キムによるとトタトガに入られる競争率がやや41で、審査をするときに3年間地域のためになにができるのかを一番重視しているそうです。


6年間、地域のアーティストにも地域社会でもいい評価をされているトタトガですが、これからのジェントリフィケーションを予防するために建物1棟ぐらいは市から買い入れる必要があるという声が上がっています。釜山市はトタトガエリアにある100年が経った地域の近代建築をトタトガセンター長キムの粘り強い説得の末に買い入れることを決定しましたが、トタトガの空間として活用するかどうかはいまだに未定。今後釜山の芸術文化活動の拠点としてトタトガエリアにある近代建築がどう活用されていくのか期待されます。
 


 韓国の釜山では多様な形で文化芸術が持っている創造性に着目し多様な地域再生を試みています。アートを通した景観改善のみならず、芸術文化を通じた共同体復元、地域仕事創出など。今や芸術文化というのは都市の副産物ではなくて都市と一緒に成長していく重要な都市の一部になっているようです。アメリカの美術家であり美術評論家であるSuzanne Lacyhはパブリックアートをただ公共空間に設置されているの作品を称するのではなくて多様な観客と一緒に彼らの暮らしと直接関連があるイッシュに対して意見を交わしながら作品自体より作り過程を重視する視覚芸術をNew Genre Public Artで再定義しています。目に見えないものをデザインする韓国の地域再生調査!アートが単なる視覚的なことだけではなくて人と人の心を動かして都市全体を動かす可能性を分かるようになる良いきっかけになりました。

以上
D2ジャン


 


 











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