毎日新聞 2015年02月05日 13時36分(最終更新 02月05日 17時24分)

5日から全国を巡回する尹東柱の遺稿・遺品展=福岡市早良区西新の九州大学西新プラザで2015年2月4日、野田武撮影
◇福岡皮切りに京都、東京を巡回
第二次世界大戦中、治安維持法違反容疑で逮捕され、1945年2月、27歳の若さで福岡で獄死した韓国の国民的詩人、尹東柱(ユン・ドンジュ)の自筆原稿のレプリカなどを紹介する初の展覧会が企画され、5日スタートの福岡市の会場を皮切りに京都、東京を巡回する。没後70年を機に尹の詩を読むグループなどが準備を進めてきた。
尹は17年、旧満州・北間島(現中国延辺朝鮮族自治州)生まれ。ソウルの延禧(ヨンヒ)専門学校(現延世<ヨンセ>大)を卒業後、立教大を経て同志社大留学中の43年、ハングルで詩を書いたことが朝鮮独立運動に関与したとみなされ、治安維持法違反容疑で逮捕された。
当時の司法省の部内資料で「民族の言語を守らねばならない」という友人との会話が独立運動にあたるとみなされたことが分かっている。翌年京都地裁で懲役2年の実刑判決を受け、45年2月16日、旧福岡刑務所で獄死した。死因は不明。
尹がハングルで書き残した詩は48年、韓国で詩集「空と風と星と詩」として出版され、日本や中国、仏など6カ国で翻訳出版されている。時代の荒波の中で書き残した叙情的な詩は今も国内外で人々の心をとらえている。
遺稿は長年、遺族が管理してきたが、2012年に延世大に寄贈された。その後、福岡、京都、東京で尹について学んできた3グループが遺稿の存在を知り、延世大に巡回展を打診、今回初めて認められた。
福岡の巡回展は、94年から毎月勉強会を続けてきた「福岡・尹東柱の詩を読む会」の会員らが実行委を作り、5〜9日の午後1〜6時、福岡市早良区西新2の九州大学西新プラザで開催。尹が原稿用紙にハングルで手書きした詩や散文十数点を精巧に複写したレプリカや蔵書、尹の生涯や詩作への思いを紹介するパネルなどを展示している。8日午後2時半には、尹のおいで韓国・成均館大教授の尹仁石(ユン・インソク)さんの講演も予定している。
「福岡・尹東柱の詩を読む会」の馬男木(まなぎ)美喜子代表(50)は「福岡に尹東柱という詩人が居て、こんな詩を書いていたんだということを知るきっかけにしてもらいたい」と話している。
巡回展は尹ゆかりの同志社大(13〜17日)と立教大(21〜25日)でも開かれる。3会場とも入場無料。【祝部幹雄】