大学院特別講義「文化政策特論」に神戸大学大学院国際文化学研究科教授の藤野一夫先生にお越しいただきました。今回は九州大学大学院芸術工学府で劇場やホール運営、アートマネジメントなどを学ぶ学生に対して「公共文化政策の基礎と事例」および「ドイツの文化政策」についてお話いただきました。

ちなみに私は藤野先生と初めてお会いしたのは昨年春に文化経済学会・松山大会でした。その後、昨夏の利賀インターゼミ、さらに秋にドイツで開催された日独文化政策会議にても大変お世話になりました。
「公共文化政策の基礎と事例」という内容において、前半はコミュニティ創生と社会理論と法制度について、先生自らが制定にかかわられた「明石文化芸術創生基本計画」および文化振興条例を例に、創生という言葉にこめた想いや、社会学の観点からコミュニティ創生にむけた文化政策の必要性などをお話いただきました。さらに後半は公共文化施設の公共性とアートマネジメントとしてアートマネジメントの必要性とそれが生まれた背景、公共文化施設の公共性と今後のあり方について講義いただきました。あいにく全て拝聴することが叶いませんでしたが、大変有意義でした。
2日目の25日はドイツの文化政策についてお話頂きました。日独比較をふまえて、日独の文化振興政策の類似点や相違点、ドイツの地方自治体がもつ公共劇場、そしてその文化を担保するための寛容な精神と自由など非常に興味深いお話を頂くことが出来ました。

ドイツは連邦制の国家です。連邦法は州法より優位で外交や防衛、通貨、関税、労働法などの立法権を持っていすが、教育制度、文化政策、地方自治制度などは各州独自の立法権として認められています。一方で連邦制の問題として、州間の格差が挙げられます。旧東ドイツの州は旧西ドイツの州に比べ生産力や労働力の低く、実際に現在、経済的に豊かな州が貧しい州の財政を支える「州間財政調整制度」が問題になっているようです。
合併から25年経ったドイツの首都ベルリンという都市のもつ独自性は、東西分断されていたということにあります。旧東ドイツ側の地区は地価や生活費が安く、若者やデザイナー、アーティストなどが多く住み込んできました。藤野先生は「かつて(自分が訪れた時は)スラム街のような荒涼とした地区だった場所が今ではセンスの良い若者やニューリッチ層が住み着いていて子育てのしやすい場所に変貌しているのはおどろくべきことだ」とおっしゃっていました。
そんなドイツでは文化政策に行政、特に政府は関与せず、各州や各自治体の文化を司る長は基本的に芸術家や思想家などの出身者で占められているそうです。それは行政マン出身者が文化を司ることは政府の意に沿う表現がすすめられるという、文化のプロパガンダ化、ナチス・ドイツへの深い反省に立脚しているからということでした。
このほか、ドイツにおける文化費の割合や各自治体の文化総予算は日本の10倍であるという事実、文化政策の根底にあるカントやシラーの美学論理については目から鱗が落ちる思いでした。
ドイツは日本と比べて市民の文化活動が特筆するほど豊かか・と問われれば、日本も負けていない部分もあるとは思いますが、やはり国として市民の自由権、文化権を担保する、その象徴として基礎自治体レベルでの取り組みが社会教育的にも効果的なのかもしれないと思いました。
なかなか盛りだくさんの内容で、お話いただいたことの全てを理解するにはまだまだ勉学が足りないと実感しましたが、非常に興味深く何度でも議論出来るような、示唆深い講義を頂くことが出来ました。
大学院特別講義「文化政策特論」は2月4日(水)、5日(木)にも九州大学大橋キャンパス4号館にて開講されます。あくまでも受講者が優先されるとは思いますが、興味のある方は出席されてみてはいかがでしょうか。
文責:M1 吉峰














