建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
7月18日(木)19:00より、6次産業化に関する講演会を開催します。
 
講師の磯山友幸氏は経済ジャーナリストとしてご活躍中で、
6次産業に関しても全国を取材されています。
 
今般ご来熊の機会をとらえ、
急遽6次産業化に関する各地の先進の実例を紹介していただくことになりました。
 
必ずや示唆に富むお話を伺えると思いますが、
期近の開催となりますので、どうか皆様よりご友人・同僚の方々にも
このメールを転送して講演会のご紹介をお願いいたします。
 
詳細は、添付のチラシをご覧ください。
 
江頭 実


磯山氏は本年2月に菊池市にも取材訪問され、
いくつかの記事を書かれています。
以下のリンクからご覧ください。
 

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「モノを仕入れて売るだけなら商人ではない。売人でしょう。オンリーワンの逸品を年に3つでも4つでも創り出してお客さんに売っていく。それが本当の商人だと思います」

 熊本県菊池市にある「渡辺商店」の渡辺義文さんは酒小売店の3代目。商店街はご多分に漏れず「シャッター通り」で、渡辺商店はさらに一本路地を入ったところにある。

 それでも渡辺さんは意気軒昂だ。独自に開発した商品を直接インターネットで消費者に販売。昨年の年商は何と2億円。前の年から6,000万円も増えた。店を継いだ時には家族以外に1人だった従業員は、今や18人。経済停滞の町で新たな雇用を生んでいる。

 渡辺さんが手がける「商い」は独特だ。地元で埋もれている豊かな食材に目を付けて農家から買い、時には地元の業者に持ち込んで加工、その様子をイ ンターネット上で事細かに消費者に伝えることで共感を引き出し、買ってもらう。基本は「自然」。無農薬栽培や有機栽培、無肥料栽培といったオーガニック・ フーズだ。渡辺さんが運営するネットショップ「自然派きくち村」の商品を覗いてみれば分かるように、商品それぞれにストーリーがある。

 「それぞれのプロが、同じコンセプトの中で1つにまとまる。それが本当の6次産業化だと考えています」

 渡辺さんは、3次産業である「商人」が、1次産業の作物づくりから、2次産業の食品加工までを取りまとめて「逸品」さえ創り出せば、必ず売れると信じている。いわば6次産業化の総合プロデユューサー役を務めているわけだ。 

初めから順風満帆であったわけではない。渡辺商店の飛躍には大ヒット商品の存在がある。

 「ごぼう茶」 だ。今や全国的な大ヒット商品となっているが、6年前、"全国で初めて"製造・販売したのが渡辺商店だ。もともとのきっかけは、地元の名産品だった「水田 ごぼう」を使って、何か加工品が作れないかと考えたこと。菊池は米どころとして知られるが、水田ごぼうはその裏作として作られている。

 ごぼう茶が完成し、細々と販売を始めてから3年ほど経ったある日のこと。フジテレビの『人志松本の◯◯な話』という番組で、「若返りするマル秘ゴ ボウ茶」として渡辺さんのごぼう茶が紹介されたのだ。すると番組放送中に注文が殺到、すぐに「売り切れ」の表示を出したものの、瞬時に600個を売り切っ たという。それからの1週間というもの、徹夜で発送作業に追われたそうだ。

 「1週間もしたら全国各地からごぼう茶が発売されて、もうびっくり」

 そこから全国的な大ヒット商品に育っていった。それでも渡辺さんは無理な製造拡大はせず、「自然派」の素材にこだわった。菊池産の水田ごぼうを使ったごぼう茶は「元祖ごぼう茶」として今でも人気商品。ごぼう茶だけで年間3万個、年商で3,000万円を稼ぐ。

 逸品作りの原点は2001年。もともと免許業種で守られてきた酒小売業だが、規制緩和でコンビニやスーパーでも酒が売られるようになり、このまま ではいずれ渡辺商店は廃業に追い込まれる、と渡辺さんは考えていた。そんなある日、環境問題の講演を聴いて、本物の自然志向の食べ物を作ろうと思い立った のだという。

自ら田んぼを借りて米作りを始めた。29歳の時だ。「地域にはすごい爺ちゃんがいるもんで、後藤さんという方の言う通りに米を作った」という。もち ろん無農薬栽培である。そしてその米が九州米サミットの食味品評会で最優秀賞を取ったのだ。「伝統の力を見せ付けられた」と渡辺さんは振り返る。

 ところが、その米は4俵しか売れなかった。

 転んでもただでは起きないのが渡辺流。その米を球磨焼酎の蔵元である熊本県人吉市の「那須酒造場」に持ち込んだのだ。家族経営の小規模ながら数々の賞に輝く本物志向の蔵元だ。そして生まれたのが「蔵六庵」という米焼酎。ラベルには「ただただ自然」と書き入れた。

 これをネットに載せたところ800本が売れた。このとき渡辺さんは「売りたいものが作れる」ということの喜びを満喫したのだという。

農家が儲かる仕組みにしなければ良いモノはできない

 「自然派きくち村」では地元の農家が作った米も販売するが、この販売方法も独特だ。「秋岡夫妻の自然栽培米」「北野」「木庭さんの自然栽培米」と いった具合に生産者独自の"ブランド"が付いている。「生産者それぞれに思いが違うので、その考え方を伝えて売るのが大事」だと渡辺さんは言う。

 生産者から買った米は店先には並べない。保冷倉庫に入れ、インターネットなどで注文が来るたびに精米し、真空パックにして送り出す。最高の品質のものを消費者に届けるのが"商人"の務めだと考えているからだ。

 仕入れ価格は、生産者の希望通り。決して買い叩かない。「その価格にうちの儲けを乗せて売ればいいだけの話なので、買い叩く必要はない」と渡辺さ ん。しかも委託販売ではなく、自ら売れると見込んだ分量を買い取っている。そこには、農家が儲かる仕組みにしなければ本当に良いモノはできない、という考 えがある。「渡辺流6次産業」を貫く信念だ。

 渡辺さんはさらに「こちらも自分でリスクを取らなかったら本気でモノは売れない」と考えている。時に「売り切れ」となるが、それはそれで「仕方がない」と割り切っている。

 現在売り切れ中なのが「緑玄米餅」。 地元の富田さんが自然農法で作った「古代緑米」を買い取り、それを菊池の銘菓「松風」で知られる「中原松月堂」の3代目中原大松さんのところに持ち込み、 丸もちを作った。緑米だけでなく、赤米、黒米とすべての古代米で試作した結果、緑米がもっとも美味しい餅が作れるという結論に至ったという。

 価格は10個で1,200円。菊池基準で言えば猛烈に高いが、こだわりの逸品は、その誕生ストーリーと共に6000個も売れたのだ。


もともとが酒屋だけに酒造りにも回帰した。菊池にかつてあった酒蔵は、最後には他の酒造から「桶買い」した酒を瓶詰めして売っていた。それが何とも口惜しかったという。その酒蔵が廃業した後、地元の本物の酒、誇れる酒を作ろうと考えたのだ。

 菊池市を流れる「菊池川」にこだわり、その源流の阿蘇山系の自然水と菊池産の米を使い、菊池川流域にある「千代の園酒造」に委託して日本酒づくりに乗り出した。

 酒米は百年以上前に発見された「雄町」という品種を、地元のグループ「菊池環境保全農業技術研究会」のメンバーが無農薬・無肥料で育てた。酵母に は「熊本酵母」を使うところまで、「地元」にこだわった。名前も、純米吟醸酒「菊池川」とした。もちろん、もともと酒小売店である「渡辺商店」の店頭にも 並べられている。

 

 取材を終えて、一緒に地元の居酒屋に入った。渡辺さんは当然のごとく「菊池川」を注文する。猪口で一杯ぐいっと飲み干すと、奇怪な行動を始めた。今度はおもむろに手の平に酒を注ぎ、ペタペタと頬に塗り始めたのだ。

 「添加物を一切入れていない水とコメと酵母ですから。酒と言えば酒、化粧水と言えば化粧水なんですよ。どうですスベスベになるでしょう」

 どうやら今度はこだわりの化粧品を考えているようだ。 




九州・熊本市の北東に位置する菊池市の中山間部に年間94万人が訪れる「卵の直売所」がある。九州北部と阿蘇山を結ぶ国道沿いにあるとはいえ、周囲に目立った観光施設はない。コッコファームが運営する「たまご庵」を目指して多くの人がやってくるのだ。

 直売所といっても今や、卵から鶏肉、鶏肉・鶏卵の加工品、卵料理が中心のレストランなどを併設する複合商業施設になっている。だが、あくまで目玉は自社の養鶏場で生産する卵だ。

 お店の一番奥にある鶏卵コーナーには、無造作に卵を詰めたダンボールの小箱が並ぶ。ひと箱3キロ。40~45個ほどの卵が入っている。よくスー パーで見かけるプラスチックのパック詰めはしていない。自社の養鶏場で朝取れた卵を、そのまま売る。「生みたての温かい卵をお客さんに届けたい」という創 業以来の精神が息づいている。

「お客さんに近づく農業」を模索

 この小箱がみるみるうちに売れていく。ひと箱1,200円。決して安いわけではない。にもかかわらず1日の販売量は平均1000箱。1日で1620箱売れた記録もある。

 もちろん卵の売れ行きは日によって違う。飼育する8万5000羽の鶏が生む卵は1日4トン。販売量と生産量に差が生じるわけだ。その余った卵をど う使うか---そこからさまざまな加工品が生まれてきた。酢味たまごや卵を使ったロールケーキ、アイスクリーム、余った卵白を活用したシフォンケーキ、卵 白石鹸など種類は豊富だ。 

朝つぶしたばかりの鶏肉も店頭に並ぶ。鶏卵用の鶏は食肉用のブロイラーと比べて小ぶりで味はいいが、産卵期を完全に終えてしまうと身が硬くなり売り 物にならない。産卵がピークを越え身が硬くならないタイミングを狙って食肉用に加工する。まるごと一羽を蒸し焼きにした「紅うどりの蒸し焼き」は10年来 のロングセラー商品だ。

 たまご庵にあるレストランのメニューは基本的に2つ。自社産の卵と鶏肉をたっぷり使った親子丼とオムライスだ。

 「定期的に目的買いをしていただくには、わざわざ足を運ぶ価値のある商品を揃えることが何より必要です」と創業者で会長の松岡義博氏は言う。松岡 氏は創業以来、「お客さんに近づく農業」を模索してきた。18歳で都会に出て様々な仕事に就いたが、20歳でサラリーマン生活に見切りを付け故郷に戻っ た。

 地元の農家に話を聞いて歩いたが「従来の農業に失望した話ばかりで、将来の夢がまったく描けなかった」と松岡氏は振り返る。農家は作ることはでき ても、売るのは苦手。すべて農協任せになる。農協が自ら赤字をかぶることはないから、儲からない農業のしわ寄せは農家に来る。きちんと儲けて夢を描くには 消費者に自ら近づいて販売していくほかに道はない。そう松岡氏は心に決めたのだという。

目標は年間来店客数100万人

 養鶏場を始めると、卵の行商や、卵拾いの観光農園など様々な試みを経て、小さな直売所を設けた。早い段階からハンバーグやオムレツの加工に乗り出 し、当初はスーパーや弁当店に納めていた。だが、そうなると納入業者同士の激しい競争にさらされる。そこで発想を転換して考え出したのが、「自社加工品を 直売所で売る」という手法だ。そして、いかにして店に来てもらうかに知恵を絞り始めたのだ。

この発想は今でも変わっていない。自動車以外の便はなく、熊本市内からでも往復すればゆうに1時間以上はかかる。たまご庵にしかないモノをいかにそろえるか---物産館では周辺農家の野菜なども売るが、扱う商品の8割は自社生産したものだ。

 商品づくりに加えて、還元率を高くしたメンバーズカードの導入など固定客を作る仕掛けづくりにも力を入れている。今では年間94万人の来店者の半分はリピーターだという。インターネットによる通信販売も手掛け、「かしわめしの素」などがよく売れているが、まだまだ売り上げのごく一部に過ぎない。あくまで、来店してもらう、というのが基本コンセプトなのだ。

 レストランの横にあるバナナを植えた温室も顧客を呼び込む工夫の1つだ。バナナの木にオーナー制度を設けるなど遊び心いっぱいのアトラクションに なった。なぜ、養鶏場でバナナか、と思うに違いない。実はここにも再利用の発想が息づいている。卵の殻を砕いたものがバナナの培養土に適しているのだとい う。

 来店してもらうのが基本コンセプトである以上、顧客を呼び込むためのPRには力が入る。月刊情報誌を発行、「コッコの6次産業化物語」などを連載することで、商品づくりへの思い、店づくりへの思いを顧客に訴えてきた。「たまご庵ソング」というPR曲も作った。

 最近はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)による情報発信に力を入れており、スタッフがそれぞれの名前で発信する「コッコブログ」に取り組む。さらに、たまご庵の内部に設けたスタジオから定期的にUstreamで放送する「コッコすとりーむ」も始めた。そうした努力の積み重ねで年間来店客数100万人を目指しているのだ。

農業を、未来の夢を描ける産業に

 現在、売上高は年間29億円あまり。従業員数は167人にまで拡大した。養鶏場での卵・鶏肉生産という1次産業と加工食品などの2次産業、たまご 庵での販売やレストランといった3次産業を組み合わせ高付加価値化を進めてきた。1+2+3=6のいわゆる「6次産業化」に邁進してきたわけだ。農業の高 付加価値化によって地域の雇用を生み出した「6次産業化の成功例」として視察が絶えない。

 実は松岡氏にはさらに大きな夢がある。コッコファーム全体をこの地域の交流の場として、さらに発展させていこうというのだ。たまご庵の中央には舞 台を備えたホールがあり、ここで地域の伝統芸能が披露されたり、クリスマスコンサートが開かれた。また、会議室やインキュベーションのためのオフィスを作 り、貸し出している。物産館では地域の農家が生産する野菜類の販売も始めた。地域が元気になる拠点にしていこうというのだ。

会長室の壁にはパステルカラーの大きなイラスト画が掲げられている。2000年に「10年構想」として作り上げたものだ。地域の人たちが集まるだけでなく、都市と農村が交流し、農業が未来の夢を描ける産業に変わっていく。そんな未来を描いている。

 「社員の誰もが、こんな事できっこないと思った」と販売企画室の中庄司秀一課長は当時を振り返る。絵に描かれたディズニーランドのような建物こそないが、コンセプトは一歩一歩実現しているようにみえる。

 松岡氏は現在、日本農業法人協会の会長を務める。同協会には全国にある農業法人1750社が加盟する。メンバーには農協と一線を画して農業の未来 を模索している農業経営者が多くいる。こうした協会の仲間たちと共にネットワークを構築し、コッコファームで培ったノウハウを共有していこうと考えてい る。自分たちでモノを売る仕組みを作り、そこに地域の農業を巻き込んでいこうというのだ。

 全国に自ら消費者に近づいてモノを売っていこうという生産者が増えていくことになりそうだ。 

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