
11月24日、25日に熊本大学にて開催された文化経済学会が行われました。
熊大の渡部先生を委員長に、office musicaの西嶋さん、藤原先生が副委員長を筆頭に
沢山の方々と12回にわたる実行委員会会議の上、無事成功することができました。
学会では藤原研究室のメンバーも発表し、大健闘!準備から発表まで、学会を十分に
味わったひとときでした。
馬さんは、日本における創造都市論研究の第一人者である佐々木雅幸先生座長
の元で、福岡における創造都市のクラスターとして位置づけられる3つのアート
センターを元にした研究を発表しました。
「福岡における既存建築のリノベーションを通して創出されたクリエイティブ
クラスターの評価と課題」
・青山の同潤会アパートをモデルとしたアートアパート冷泉荘
・天神大名地区に拠点を持つアートセンター紺屋2023
・近年オープンしたオルタナティヴスペースFUCA
などの事例を福岡におけるクリエイティヴクラスターとして位置付けを報告。
建築分野から注目し、それぞれが行っている営みを詳細に挙げた。
討論者 本田先生:
3つの事例の背景や、ネットワークをサポートする人材の説明をしてほしい。
座長 佐々木先生:
3つの事例をクラスターという位置付けにすることが望ましい。
クラスターというのは分野としての差違があり、それらを位置づけることが
必要不可欠。その為にそれぞれの背景、役割、領域における位置付け、相互関係、
評価方法と軸が必要となる。クリエイティヴクラスターに関する研究は多々あり
評価軸に関する研究は先行研究もある。それらを踏まえておくことが望ましい。
また上海にもクリエイティヴシティの事例は多数派生してきているので、それらの
比較研究というのは可能性があると考える。
本田先生:まちづくりという言葉は曖昧極力使わないことが、どこに寄与して
ゆきたいのかがよりフォーカスされる。創造的都市論において3つのT→
タレント・テクノロジー・トレランスとして分類されているのも重要。
田中尚人先生
フランス・ロリアンにおいて、アートは日常生の高いものとして位置づけ
られている。ヴァカンスを体験させてくれたギエルム先生のもとに滞在、
地域的景観をもとにまちづくりを学ぶ。
1歴史 2自然環境 3生活・生業 地域の景観を文化財と位置づける。
フランスのエコミュゼには伝統的な民具が多数展示してあり、それらを元に長々と
人々が会話をする。親から息子に機能や歴史などがとくとくと語り継がれていた。
展示はあくまでツールである。
ロリアンの南東得エテルでは牡蠣漁が盛んであり、その景観に対する説明に対して
観光客は熱心に聞き入っていた。
地域に対する目線は、日本の観光と大きく違う。それらを3つの視点から述べる。
フランス人にとってヴァカンスとは?
1歩く 2食べる 3語り合う
これらを他者と行うことで、地域や歴史に対する愛着を醸成している。
フランス→時間の共有の仕方が巧い
フランスは日常と非日常性のローテーションによって一定のハレを保っている
フランスは日常生活の延長としてヴァカンスがある
日本→都市空間におけるハレとケ
日本は日常性と非日常性の瞬時の読み替えを行っているのでメリハリははっきり
しているものの一定の効果を保ち続けている訳ではない。
勝浦先生:日本とヨーロッパ諸国のヴァカンスの時間の差を見ると、日本人は
所得が高ければ高い程旅行(ヴァカンス)に出ているに対し、ヨーロッパは一般の
人においてもごく当たり前にあるもの。
日本は観光地、テーマパーク、温泉、グルメ、短期滞在、お土産、パック旅行など
ウエイトが置かれている事に対し、フランスのヴァカンスは日常性の延長にある。
これらをデータの裏付けによって証明するとより説得力が増す。
谷口先生:ヴァカンスの定義、根源は?
田中先生:基礎自治体が3万6千ある。シエスタ、ヴァカンス、作業期間の効率が
落ちる期間はいっそ休みにしている。
日本人とフランス人のヴァカンスに対する定義も異なっており、日本にそれらが
導入される日は来ないのではないかと思う程。
藤原旅人
近年国内において興隆するアートプロジェクトにはボランティアスタッフは不可欠
となっている。彼らはどのようにして集まり、どのような機能を果たし、そして
彼らの抱える課題や、ボランティアを扱うマネジメントに関する意識・研究は
どのような状態にあるのか。
アートプロジェクトボランティアの存在
・アーティストと鑑賞者以外の第三者の参加者としての存在
・地元住民とアーティストの架け渡し役。学芸員が果たして来た役割を担う
・アートプロジェクトにおいて、実際に鑑賞者と触れるのは
・ボランティアスタッフの場合が多くなっている
・運営において、ボランティアスタッフは不可欠な存在
■別府現代芸術フェスティバル2012「混浴温泉世界」 の例
調査方法 聞き取り ボランティア体験 視察調査
①ボランティア同士の交流の必要性(個人参加が多い)
②はじめてのボランティア活動の時の事務局スタッフの対応
③ボランティアスタッフの数の少なさ
④ボランティアスタッフの情報について
■調査データから読み取れること・評価・課題等
ボランティアの参加動機があいまい→「アート」が持つ非日常性に魅了
追跡調査として他の種類のボランティアだったら参加したか?
災害ボランティア、環境ボランティアに対して関心は希薄。
アートに対する知識が少ないにも関わらずアートだから参加した、という
参加者が大多数。
ボランティアの仕組みや制度を改良する必要がある。
勝浦先生:ボランティアの問題はアートプロジェクトが普及し学問としての
研究も進むにつれて重要なファクターとなっている。
アートプロジェクトボランティアに関する調査研究は及んでないとしても、
他のボランティアに関する研究は多々ある。調査方法や論考の組み立てなど
参考になるのでは。
國盛麻衣佳
「旧産炭地における市民の内発的矜持再生を促すアートプロジェクトに
関する研究」

旧産炭地は環境汚染、事故、差別、労働争議など事件、過疎etc…
「負の遺産」や「ブラウンフィールド」としての認識も高い
一方で「負の遺産」という見識から「産業遺産」、「近代化遺産」、「炭鉱遺産」
といった再評価、再認識がある。
負の遺産と言われた荒廃した土地―ブラウンフィールドを文化的側面によって
「創造都市(クリエイティヴ・シティ)」として再生することは国内の旧産炭地に
おいても可能性を持つと考える。
アートの中でも専ら過程を重視するアートプロジェクトに着目、石炭を顔料とした
作品制作ないしアートプロジェクトの実施。
旧産炭地の地域再生を「アートプロジェクトによる市民の内発的矜持再生」
という側面から関与する。
石炭・石炭灰を画材としたワークショップが教育・伝承・矜持に寄与する例:
2010年 北海道岩見沢市zaworld COAL PAINTワークショップアンケート
2010年 岩見沢市北真4年1組 出張ワークショップアンケート
2012年大牟田のいろクレヨン
(炭鉱遺産から6色抽出し、ご当地クレヨンとしての製品開発において)から
歴史の伝承・色彩、表現手法による地域に対する矜持醸成のアプローチの
有用性を述べる
1961年~2012年の旧産炭地におけるアートプロジェクトは12件。
過去の事例からアートプロジェクトが触媒となって地域に対する有用性を
高めるには
①旧産炭地をフィールドとした現地滞在制作型であること
②地域の文脈を理解し,地域の様々なストック活用すること
③炭鉱をテーマとした作品制作を地域住民参加型で行うこと
④モノとしての完成と同時に過程そのものを重視していること
⑤地域内外の交流を促し,コミュニティを創出すること
⑥これらのプロセスを継続させ発展させること などが望ましいと考える。
有馬先生:客観的なデータが乏しい。大牟田市民の総人口に対して何%の人が
アートプロジェクトに関わっているのか。
再生というのは何をもって再生というのか。経済的側面に対するデータもない。
山本作兵衛も文化資源として大きな力を持っているので、ぜひ山本作兵衛を
取り上げプロジェクトに加味してほしい。
谷口先生 「芸術創造と公共政策の共創を誘発するアートプロジェクト」
住民政策・領域横断・共同制作の場となるアートプロジェクトは国内において
1990年代より台頭し、さらに阪神淡路大震災を契機に普及したボランティア
概念がアートプロジェクトへの市民参加を加速させた。
共創表現・地域再編・共生作用を促すものとして多種多様なアートプロジェクト
が国内において行われている。
アートプロジェクトの副作用−—−ファルマコン(薬と毒)
公共政策・領域横断 ⇔ 純粋芸術 質が低い?
交流を促進 ⇔ 混乱・トラブル 暴力性
文化を誘発 ⇔ 文化を変容させてしまう
暴力 搾取 権力 支配といった状況を生んでしまうリスクがある。
このような危険性を事前に考慮することによって、より地域に対する
アートプロジェクトの有効性を高めることができるのではないか。
量的調査に加え質的調査
参加者の心の変化を重点的な聞き取り調査によってフォローしている。
有馬先生:一般的に賞賛され続けているアートプロジェクトに対して副作用の面を
明るみにしている点において大変素晴らしい。谷口先生の考察する評価軸と分類は、
分類することによって利点や意味はあるのか。
評価軸に分けることで、地域にアンマッチングなアートプロジェクトを見いだす
ことはできるのか?危険を事前に回避できるか?
谷口先生:
評価軸や区別においては、アートプロジェクトに対する共通語を作ってゆきたい。
地域地域に独立しがちなアートプロジェクトを、当事者の問題には留まらない
ものとして考察する場を設けていきたい。
中谷先生が座長を務められる分科会「非日常空間とアートプロジェクト」は、
討論者の先生方のご指摘がありながらも視点が面白く有意義だったといった
ご意見をいただきました。研究室一同発表に望むことができて幸せでした。
今後とも、先生方や多くの発表者の方々の研究を励みに頑張りたいと思います。
D3 國盛

















