2010年1月13日(木)
環境・遺産デザイン 大学院集中講義
稲葉信子先生 「国際文化遺産保護法」vol.2
昨年11月18日の第1回では,バーミヤンのガンダーラ美術を中心に,これまで稲葉先生が関わってこられた世界遺産の現場についてご紹介いただき,またその中に潜む,「保存とは何か,文化遺産とは何か」というテーマについて,受講者と論じあいました.
第2回となる今回は,世界遺産に関する条約が制定されるまでの経緯,変化の過程や,条約の本質について,また顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value)のとらえ方について講じられました.
今回のテーマには,わたしたちが何かを評価したり,価値を見いだすことの難しさ,また背景に潜む国際性や政治性などさまざまな課題について考えないわけにはいかない,重要なポイントが多く含まれていました.
文化財という言葉ひとつをとっても,国や地域によってその思想や文化の違いから多様な表現で言い表されていたり,また文化財がどういった枠組みで認識されているのかについても,国によって様々です.例えば,文化財の保護については,日本では文化庁が制定する文化財保護法の枠組みでとらえられていますが,イギリス・フランスでは都市計画法の中でとらえられているそうです.目的は同じでも,全く異なる枠組みに則っている,そういう違いを乗り越えて,あるいはまだ互いに乗り越えながら,世界遺産の登録や保護について取り組みがなされています.
しかしながら,稲葉先生の次の言葉に私はハッとしました.
「国という境界にとらわれないように考えることが重要です.」
つまり,1つのものの価値を見いだすのに国というヒエラルキーがあってはならないということです.一度,国という枠に捕われてしまうと,価値の本質を見いだすことが困難になってしまう,そもそも,国際的テーマに国境は必要ないということです.この言葉に,稲葉先生の凄みを感じました.世界をフィールドにするということはこういうことなんだ,というような.
稲葉先生の,これまでのご研究のアプローチや現場での取り組みに基づいたリアルなお話を伺い,大変刺激的な時間を過ごすことができました.ありがとうございました.
次回は,2月17日(木)午前10時からを予定しております.
また,変更などがありましたらご連絡いたしますが,まずはこの日程でご確認ください.
(D2 A.Nakamura)














