建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
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場を編むということ
これまでにも、「まちそだて」の「場」の創出に取り組んできました。
10年前にさかのぼりますが、天神町の古いお屋敷をお借りして、「まちそだて交流機構日田ラボ」を創設。自分が住んでいる地域のことから、世界のことまでを学ぶ、月2回のご隠居カフェ、日本全国杉ダラケ倶楽部の講演会、さらに川原一紗さん・藤川潤司さんによる夏の音楽祭やバリ芸能集団スダマニとウロツテノヤコによるスダマニミニ公演など企画開催してきました。
そして、2年前の夏(2019年8月)、「日田市自治基本条例の成り立ちやそもそも自治基本条例とは何?」ということを知るパネルディスカッションをきっかけに「ひた未来まちそだての会」を創設。
私たちは、日田のまちそだての課題を把握し改善していくための取り組みを話し合うには、「誰でもが集う場所」がたいせつだ、と考えました。人口減少や少子高齢化も緩やかな坂道を下るような傾斜を見せており、かつて繁栄した経済や商業や観光さえも、いつしか衰退を余儀なくされているという日田には、見えないけれども数々の地域課題が山積しているのではないか、と予測しあいました。そこで、せっかく有志が集ってまちそだてへ実践力を身につけ困難な地域課題を改善し解決していくには、まち中の忘れられた場所や使われなくなった場所を巡りながら丁寧に会合を開催しつつ、そうした場所を蘇らせていくことも兼ね合わせて進めていきたいと構想しました。そうした場でのひとときならば、日田の地域課題への切実な臨場感や緊張感を体感しながら話し合いも改善策も導くことができるから得策だね、と知恵を出し合ったのです。
自分たちの手でリノベーションして場所を蘇らせることと、場を生み出すことを良い機会・チャンス・挑戦だととらえて、これまで日田のまちなかで私と出会ってくださった方々や、十分にお互いを知る機会もないままだった方々、特殊な技能を私たちへ提供してくださるという方々、さらに未だお互いに知らなかったけれども、けっして簡単ではないリノベに力を貸してくださる方々、など、じつに多彩な方々の手を借りながら、私たちだけでは発想もできないようなアイデアや発想をいただきながら、誰もが出会い直しをすることができる場づくりを進めてきました。
そうした呼びかけをしていた私たちの足元に、捨てられてしまったままの場が眠っていました。
ひた未来まちそだての会を発起した仲間の一人の家業であった印刷業の発祥の地「日田時報社」が、70年以上も前、1951年に創業した記念すべき場所が倉庫となったまま、まちの中心部に眠っていたのです。印刷業の工場・事務所は、その後の事業規模拡大のため郊外移転して以来、40年間、忘れさられてしまったかのように、この場所は眠っていました。
ひた未来まちそだての会の活動を導いてくれた伴走役で専門家の藤原惠洋先生(九州大学名誉教授・まちづくりオルガナイザー・藍蟹堂ワークショップ主宰)が、この場所こそあらためて蘇らせていくべきではないか、と示唆してくれました。同時に、誰かが葬り去ったもの、必要ないと捨て去ったもの、記憶から忘却させようとするもの、文脈の中から弾き出され要素するもの、をもう一度復権させていくためには、その場の意味や可能性に気づく誰もが参加しあって、参加型のリノベーションを進めていく必要がある、そしてそのためには適切な段階的プログラムが欠かせない、と加担してくれることになりました。私たちが日田時報社創業の地を蘇らせるためのリノベーションは、まさに誰もが参加しあって場の変容とイノベーションを進める参画型ワークショップそのものなのだよ、と教えてくれたのです。
そこから私たちは緩やかなリノベーションを通した場づくりを始めました。
定例のひた未来まちそだての会も、この場での開催にこだわるようになりました。
たとえ参加者が少なくても、持続的な開催を営むことで、毎月、毎週、あかりが灯るようになっていきました。
それまで倉庫として薄暗かった建物から、定例会の際に放たれる明かりが屋外へも広がるようになると、夜のひととき前の道路を行き交う人々方からも関心の目が向けられるようになったような気がします。
さて、リノベーションには、誰もが参加し、誰もが力を発揮できるための適切な包容力溢れたプログラムが欠かせません。
それを藤原先生が、とてもわかりやすい段取りとして組み立ててくれるようになりました。そこで私たちは、後ろをついていきながらも、どのような人材が必要か、どのような得意技が必要か、どのような時間が必要か、どのような地域社会の理解や連携が必要か、どのような情報発信と情報共有が必要か、と事細かにプログラムを通して、私たち自身のリノベーション実践能力を高めていく努力を重ねるようになりました。
1、ひた未来まちそだての会が集って場の清掃をしました。
2、ひた未来まちそだての会とふ印ラボ〈九州大学藤原惠洋研究室〉が共創しあうワークショップを重ねて場の未来像を描きました。
3、ひた未来まちそだての会とふ印ラボが協働で、場を覆っている天井板の上にどのような構造体や天井裏があるのか調べました。
4、そこで大きな空間の可能性を求めて天井板を剥がしました。
5、気づいていなかった構造体の梁と桁が出てきたので、ふ印ラボでは建物の由来を調べることにしました。
6、驚いたことに、建物は、戦時中に小倉陸軍造兵廠の日田疎開に伴って小倉から移転され再建されたものである可能性が判明しました。
7、さらにふ印ラボ 高所作業部隊(学生たちが大活躍)が梁と桁を拭き掃除したことで、戦時体制の建物の特徴をよりわかりやすく知ることができるようになりました。
8、ひた未来まちそだての会とふ印ラボが毎週、毎月集まって、壁、床、建具、かつて暗室として使っていた部屋、などの壊れていた箇所を次々と取り外しながら、丁寧に清掃を重ねていきました。
9、ふ印ラボによる提案ワークショップを重ね、空間や壁全体に書棚を伴わせたブックカフェのような交流の場として蘇らせることにしました。
10、木製の特別な書棚群をふ印ラボから搬送して南側壁一面に設置しました。
11、誰もが集えるための大テーブルを何度か試作しながら、最終的には九州大学藤原惠洋研究室から搬送したものを設置しました。
12、藤原先生が全国各地のまちづくり・まちそだて・まちづくろい現場を創出してきた記録や関連書籍を多数、搬送した書棚に並べました。
13、誰もが集えるための椅子やソファーもふ印ラボから移送して設置しました。
14、80年以上も前にできた場を、新たな場として蘇らせるため、私たちが自分で建物へ介在した証となるような手づくり壁仕上げを参加型漆喰塗りで進めることにしました。
15、藤原先生が編み出した、天然ジュートむしろを下地にしながら筑豊の田川産業特製「城かべ」という漆喰を塗ることとしました。その際、日本を代表する日田市の左官業原田進親方に相談をしたところ、お弟子さんの坂倉正規さんにご指導をいただくことができました。
16、藤原先生は日田市の双美工務店の高倉英治さんや大工さんと何回も打ち合わせを重ね、日田時報社時代の記念すべきネーム入りガラス戸や建具をそのまま生かした再生を進めました。
17、藤原先生は、こうした埃舞うリノベーション作業の途中にも、必ず玄関入り口付近に日田時報社時代に用いていた写真撮影用のステンレス半球板に季節の花を生けがら、前の通りを行き交う老若男女の方々へ出来上がったらどうぞお立ち寄りくださいね、と優しく、にこやかに声をかける態度を示してくれました。
18、最近は、通りがかりの近隣住民の方々をはじめ、近所の小学生や、学校帰りの高校生ものぞいてくれるようになっています。リノベーションの現場が、緩やかな「公共性」を生み出していることがとてもよくわかります。私たちがめざしていた「公共性」とは、このような場だったのだ、だからこそ、リノベーションに誰もが力を添えてくださるように的確な情報を発信し、言葉を交わし、気持ちよく協働作業を生み出し、流した汗を共有し、いつしか私がこの現場を生み出したんだ、と言える参加者を一人でも多く育てていく、ことがたいせつだったということをあらためて理解できるようになりました。
19、この場を、これからどのような方々との交流が生まれる場にしていくのか、まちそだての場としてどのように営んでいくのか、私たち自分自身が蘇る場や他の方々へ気遣いを育んでいく場としてどのようなプログラムを生み出していくのか、が問われます。
20、もともとここは日田時報社の創業の地でした。かねて日田時報社が地域貢献へ挑んでいた「日田時報」という地域新聞発行のこころざしを再度、評価していく必要があります。そのためにもこれからなすべき場づくりの意味や意義、その効果が問われるのです。私たちはこうした場を生み出す仲介役になりたいと願ってきました。数々の体験知をもとに藤原先生からは、そうした場を生かしていくには「棲みつく=Dwell in」ということがとてもたいせつだ、と教えてもらいました。そのためには十分な力を私たち自身が育むことが求められます。そのためにこそ、これからもみなさんとともに歩みながら、真摯に誠実にそうした役割を任じてみたいと考えています。
このように生み出されつつ場へどうぞお立ち寄りください。
そして、一杯のコーヒーを飲みながら、一冊の書物に目を通しながら、日田の可能性をどのように発掘し、日田のこれからをどのように生み出していけば良いのか、日田のまちそだてを担いたいと笑顔を重ねている私たちとともに地域課題解決への実践を取り組んでほしいのです。
この地で生きていくための暮らしの知恵や叡智を分かち合いながら安全安心で健康な日々を成就するための自助の内在力や自己決定能力を高め合います。
人口減少や少子高齢化を危惧するばかりはなく、集った方々の得意技や体験知を共有しあいながら共助をはを育んでいきます。
毎年襲われる災害へ向けた個人やコミュニティーや地域社会全体の防災対処力や防災回避力を育んでいきます。
地域の人やものや事に関する眠った物語の発掘や、まちあるきを重ねながら歴史的文脈・地域的文脈の解きあかしを進めていきます。
そこに生まれそこで育った地域の子どもたちや次世代を地域社会の包容力と寛容力を生かしながらたいせつに育みあいます。
訪ねて良し、出会って良し、交わって良し、地域社会全体でのホスピタリティー(おもてなし力)による観光まちづくりを進めていきます。
この地へもたらされた天与の地域固有資源や景観資源、文化資源をおおいに生かした農林業や付加価値加工産業の未来図を描き合います。
市内のどこに居住していても誰もが移動する自由と権利を保障される公共交通のあるべき姿や豊かな暮らしのあり方を導き合います。
このように語り合いたい地域課題は少なくありませんが、全国的な改善・解決策や、世界的な先進事例も数多く把握しあうことから、私たちの討論や意見交換は単なるポエム(一人語りや文学的詩作)や独白で終わらせず、ともに集いあう面々の支え合い・分かち合いを高めていくための場としていきます。
毎日、誰かが場を運営するマスター役を買って出るようにしたいと考えています。
あなたも、私たちの仲間として場のマスター役に参加しませんか。

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藍蟹堂。感受性は海の底から波濤や世界の波瀾万丈を見上げる蟹そのもの。では蟹とは?

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