[発表]高口
・今回はスペシャルゲストを迎える。英語を使用。(議事録は日本語表記)
口頭による発表は「Living with Heritage サンボー・プレイ・クック滞在調査報告」
(1)スペシャルゲストの紹介
・ パラPhalla (Eav Chheng Phalla):昨年夏、滞在調査を支えてくれた友人。サンボー・プレイ・クック(Sambor Prei Kuk)ローカルガイド。大学4年生。
(2)今回のプレゼンの目的
① 昨年度の調査報告:まだ研究室の新しいメンバー、そしてお世話になったパラに報告ができていなかったので、これを期に報告したい。
② サンボー・プレイ・クックとふ印ラボをつないでみる!:せっかくのオンラインなので挑戦的な取り組みをしたいと考えた。
③ ローカルガイドの生の声を聞く、コロナウイルスの影響は?
(3)サンボー・プレイ・クックについて
・ カンボジアの首都プノンペン、アンコール・ワットで有名なシェムリアップのちょうど中間。高速バスで3時間+トゥクトゥクで1時間の場所。
・ 2017年、カンボジアで三番目の世界遺産に登録された。6世紀〜7世紀、アンコール王朝の前身として栄えた真臘の王都、イーシャナプラと考えられている遺跡。
・ 19世紀末、フランスによって調査・保護されるが、1960年代〜1970年代の内戦で活動を中止。現在、この地域には人が居住し、遺跡は信仰の場となっている。古代の水利システムが用いられ、農業が営まれている。
(4)滞在調査について(2019年9月5日〜26日)
・ 調査の目的:過去の遺物であるサンボー・プレイ・クック遺跡群が、現在を生きる人々の営みにどのように組み込まれ、生かされているか、12日間にわたる滞在調査を通じて、地域の住民と交流し、自分自身の感覚で体験しながら捉えることを目的とする。
・ キーパーソンの紹介
【吉川舞さん】Napura-works代表。北海道出身。アンコール遺跡救済チームで活動後、2015年にNapura-worksを設立。地元住民と共同し、コミュニティ・ベースド・ツーリズムに取り組む。一児の母。
【ソフェアリーさん】サンボー・プレイ・クック遺跡群の保護を進める現地政府機関National Authority of Sambor Prei Kukの観光開発部副部長。
・ メンバー:滞在は高口一人ではなく、吉川さんとソフェアリーさんによってメンバーが組まれた。
【小迫遥】Napura-worksのインターンシップ生。立命館大学国際関係学部3年生(当時)。クメール料理について調べる。
【ソキア】KCIT観光学部の学生、当時21歳。
【パラ】当時、ローカルガイド一年目、大学3年生。
現地の2人はガイドの練習をすることが目的。
・ サンボー・プレイ・クックの遺跡について
【中央寺院エリア】主要なエリア。「空飛ぶ宮殿」の彫刻、八角形の構造など、「サンボー・プレイ・クック様式」と呼ばれる独特な建造物が見られる。
【ロバン・ロミアス遺跡】主要な遺跡群から北へ2km離れたアクセスの悪い地点にあり、四輪駆動車かバイクでいく必要がある。Phallaの専門。
【古代都市跡】木造の宮殿や住居があったとされる。都市の構造、水利システムについて、まだわかっていないことが多い。
・ サンボー・プレイ・クックの村について
【サンボー村】田園風景が広がる村。地区最大の高等教育機関KCIT(Kampong Chheuteal Institute of Technology)があり、農学、電気、電子、コンピュータサイエンス、観光などが学べる。
【コンポン・チュティール村】市場があり、一番賑わいのある村。近くには遺跡の水利システムを支えてきた最大の川、セン川がある。
【オークルケー村】オークルケー川は古代都市跡とつながる。夕方になると子供たちが泳ぎに集まる。家のすぐ近くに名もない遺跡が建っている。
(5)わかったこと
① 住民と遺跡は密接に関わり合っている。
・ 遺跡には聖霊が宿ると考えられ、大切にされてきた。
・ 稲作などの農業に古代遺跡の水利システムが利用されている。
・ オークルケー川のように、水利システムは住民たちの憩いの場になっている。
② 一方、遺跡の存在は住民たちにあまり認識されていない。
・ 遺跡は住民にとって当たり前の存在なのかもしれない。
・ 住み良い暮らしのため、伝統的なライフスタイルを変えつつある。(例、農業のあり方、家屋の様式など)
③ 遺跡と伝統を守る観光開発の取り組み。
・ ホームステイやローカルガイドなど、コミュニティ・ベースでの観光開発を推進。
・ 伝統的な食文化、住文化を守ることが観光資源になる。
・ コミュニティの協力によって、持続的な保護と活用ができる。
(6)Phallaへの質問
① Phallaにとって私たちと過ごした12日間はどうだった?
・・・ガイドになりたてで経験がなかった。12日間のガイドを通じて、自分が何を学んでいるのか、何をしようとしているのか、改めて考えるきっかけになった。英語を使う貴重な経験にもなった。カンボジアの文化、日本の文化を紹介し合う機会になった。
② 遺跡や村を観光客に案内しているときに一番大切にしていることは?
・・・観光客によって持っている時間が異なる。12日間滞在する観光客もいれば、1時間しか滞在しない人もいる。そういった人たちに最良のガイドを提供する。
③ コロナウイルスの影響は?
・・・ローカルガイドの仕事がなくなった。お金を稼げない。一方、観光客が来なくなったので、遺跡が壊されることがない。