建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
第二回ふ印ラボ中国福建省民居「永泰庄寨」研究会を開催しました!

日時:2019年12月10日(火)19:00〜21:00 (定例ゼミ後、引き続き開催)
会場;ふ印ラボ学生研究室
目的:2020年2月初旬計画の中国福建省民居「永泰庄寨」調査に向けた第二回目の勉強会を行う。


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内容

(1)研究会代表藤原惠洋先生による今夏9月実施の中国福建省民居「永泰庄寨」に関する調査報告。

・今夏、廈門理工学院大学で開講された藤原惠洋先生の集中講義を聴講した黄(ファン)さんが藤原先生に感想を伝えるためレポートを送付された。黄さんは「永泰庄寨」保存組織のメンバーで、今回計画中の現地調査のコーディネーター役をつとめられる方。中国文で届いたレポートのデーターを藤原先生が日本語に翻訳、今回の調査計画資料として配布した。
 

・同大学における集中講義のメーンテーマは「文化政策と創造経済」であった。受講生の所属に応じてテーマに弾力性を持たせ、幅広く「文化政策と創造経済」の中から各論を展開する中、とりわけ建築学科受講生を対象とした特別講演会では、歴史的伝統的な建造物文化財を対象とした「保護」がいかに創造的な行為であるかを講じることとした。そこから、中国の各地で野放図に展開している文化財や伝統的街並みの環境資源化を鵜呑みにしながら文化財を完全に観光地化するのではなく、暮らしの延長上で、その中に住う住民自らが「保護」に関わることで、歴史的伝統的な建造物文化財の中での住改善への取り組みやそこで生活しながら建物を保護・活用するためのUターンによる人材確保にもつながる、といったリビングヘリテイジに関する叡智と実践例を多々紹介した、という。
・そのため
中国福建省では先行する福建土楼がすでにユネスコ世界文化遺産に登録され、きわめて有名な観光地として多くの観光客を内外から集めていることに対して、福建民居「永泰庄寨」の保存活動を進める活動組織は保護と活用に関しては慎重に進めながら、野放図な観光地化をめざさず、むしろ地域コミュニティの要となる施設活用を図り、一例として伝統的農村生活体験施設のような活用をめざす必要があることを指摘した、という。


(2)引き続き、今夏の永泰庄寨調査後に行った大嶝島、小嶝島に関するリノベーション事業や地域再生に関する調査報告を行なった。とくに大嶝島の古民家を生かしたゲストハウスのリノベーションを進めながら経営基盤を生み出してきた華僑大学建築学科出身の若者たちが古民家ホテル再生事業に関する活動を紹介した。


(3)2月現地調査計画を改めてご案内した。

202024日〜11日(中国の旧正月が終わった翌週の7日間)にかけ、継続的な現地踏査を予定。
・乗用車の関係上、参加者は4、5人程度がほど良いだろう。

・踏査予定地は①永泰庄寨 、②世界文化遺産登録の福建土楼(比較のため)、③世界文化遺産登録の廈門コロンス島(比較のため)、を探訪踏査し比較検討を進める

・現地の宿泊、現地間移動、日々の食事など、は支援されるように現地との打ち合わせを進めたい。必要となるのは福岡〜廈門の往復航空券、自主的に取得していくこと。

(4)質疑応答

質問:庄寨が今でも完全に残っていることが不思議である。現在も人が住んでいるのか。

藤原先生回答:今も人が住んでいる庄寨がある。今回出会った永泰庄寨の家主は、マレーシアで成功を収めた華僑の人たちだった。シンガポール華僑(客家、はっか)も活躍している。文化大革命時代、海外でビジネスを成功させた華僑たちは共産党に多額の軍事支援を行なったため、マレーシア華僑、シンガポール華僑の家だから守ろう、ということで破壊されず残った可能性がある。また日本人の方(早稲田大学で出会って結婚、現地在住の奥様)が住まわれる庄寨があるので、そこを訪れればさらに詳しいことがわかるのでは、と期待している。
 

質問:永泰圏の広さはどのくらいになるのか。

回答:四国くらいの広さになるのではないか。

回答627日〜710日に福州で開催されるユネスコ世界遺産委員会に向け、早めに今回の踏査を行いたいと計画した。開催地は、永泰から北へわずか560km先。ユネスコ世界遺産委員会のエクスカーションで紹介されるはずなので、それまでには調査を終えておきたい。

 

藤原先生:中国ではもっぱら世界遺産を観光地化することが優先されている。今回訪問踏査を行う永泰庄寨に関しては、保存を進める関係者が観光ではなく住民の生活拠点や旧来の農業体験拠点としてうまく守れないものだろうか、と構想を進めていることが幸い。文化財マネジメントが最も重要で、失敗すれば観光地化で終わってしまう。しかし現地で保存活動を行う写真家の張さんには期待ができる。

 

長谷川:Jim熊先生はどのような研究をされているのか。

藤原先生:Jim熊先生は人間工学を研究しており、高齢化で指の機能が失われていく際に親指によく反応する機器の開発に力を入れている。そんな中、歴史的な構造物や古い建物があるほど、高齢化社会を見守ったり支えたりできるのではということに気がつかれたようだ。古い建物に住むことでコミュニケーションの環境が改善されたり、ほっとするような安心感を与えたり、触れることで身体性が確保されたりなど、精神的な健康にも良い影響を与えるのではないだろうか。

長谷川:今の福岡は古い建物が少ない。古い建物があれば、原風景を思い出して自然と話題を生まれるだろうし、メンタル的にも若返るのではないか。

藤原:Jim熊先生が廈門理工学院大学のプロジェクトとして支援してくれる際には、私たちが率先して元気なおじいちゃんおばあちゃんを現地で見つければ良い。Jim熊先生はそれについて10年がかりで研究したいと意気込んでいる。

 

長谷川:小嶝島、大嶝島の件でリノベーションが話題に上ったが、最近太宰府に古民家のホテルができたと聞いた。また、八女では北島さんが古民家を宿泊施設にして、空き家を再生する活動を行なっている。日本にもそのような活動が増えれば良いのではないか。

藤原先生:大変結構なことだと思う。八女の伝統的建造物群保存地区(以下、伝建地区)は単に観光のためでなく、活躍できる人材を呼び込むためのものとして扱われている。中島さんを中心に建築再生のトレーニングを行なったり、小中学生、高校生とワークショップを行うなどしている。北島さんは資金をNPOでマネジメントしており、一つの建物をリノベーションする際には、自らのお金を原資として一口およそ30万円をおよそ100人から集めて基金を作った。さらに、基金の返却に貢献する、無理のない金額を家賃として設定(およそ6万〜7万)。「うなぎの寝床」を始め、多くの人が生業の拠点として再生古民家を活用している。文化庁も八女のようなやり方(住んで、活用すること)を推進するようになってきた。

一方、金野さんが兵庫県丹波篠山で展開する「NOTE」も、みずからお金を出し合って、古い建物を積極的にリノベーションするという驚異的な活動を篠山市内で営々と行っている。最も付加価値の高い高級ホテルに再生し、別棟のレストランでミシュラン2つ星レベルのシェフが腕を振るう。食事付きでそれ相応の宿泊費を設定している。宿泊はここで行い、レストランは別棟といったように、丹波篠山全体で宿泊者をもてなしている。

現在ホテル事業は「NIPPONIA(ニッポニア)」と称されており、九州でも「NOTE八女」、「NOTE球磨人吉」が展開をはじめている。またNOTEは農村部にも進出し「創造農村」事業を展開中。耕作放棄地を宿泊者が耕作するプログラムも生み出した。NOTEプログラムは、人間としての生の喜びを味わうことのできる、自分の身体に回帰される体験が考えられている。
 

会場:再生建築の良い見本は他にもありますか。

藤原先生:最も良い再生建築の例はカルロス・カルパが設計したイタリアのカステロ・ベッキオ。石造りの古い城塞を博物館に再生したもので、大変収まりが良い。

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次回の研究会も宜しくお願いいたします。

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