建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

「ゼロからのスタート」“大正ロマンの駅”復活の裏側 乏しい資料、工事6年超…

 歴史的建造物が集まる北九州市門司区の門司港レトロ地区にあるJR門司港駅が10日、大規模な改修を終えてリニューアルオープンする。重厚なネオルネサンス様式の木造2階建て駅舎は1914(大正3)年創建時の姿に復元された。「平成」も残りわずか。「昭和」の時代をもさかのぼる「大正」のロマン漂う建築物の復活には、6年以上の歳月と並々ならぬ苦労があった。
 改修は20129月にスタートした。復元の手掛かりとなる資料は当初、古い書籍に掲載された写真のみ。復元を主導した公益財団法人「文化財建造物保存技術協会」(東京)の今岡武久さん(52)は「設計図すらないゼロからのスタートだった」。
 今岡さんらは国立国会図書館(同)や、各地の鉄道博物館を巡って資料を収集した。駅舎の壁の塗装は、サンドペーパーで丁寧にはがした。解体工事を通じて建物の増改築の変遷をたどりながら、開業時の姿をあぶり出そうとした。
 作業の途中で、開業当時12等待合室だった部屋に塗りつぶされた「飾り壁」を発見した。15年に宮内庁の資料の中から建物全体の寸法などが分かる設計図が見つかり、屋根飾りの詳細な唐草模様もつかめた。
 解体だけで3年を費やし、復元駅舎の設計図が完成した。今岡さんは「解体というよりも遺跡の発掘作業に近かった」。今でこそ笑って振り返ることができるが、雲をつかむような作業の積み重ねでようやく「糸口」が見え始めた。

ネズミの巣から…

 改修前に会議室や展示室だった2階には、1914年の開業から81年まで営業をした高級洋食レストラン「みかど食堂」が復活。皇族も利用した貴賓室、次室(控室)も再現した。
 貴賓室のドアノブは高さ約80センチの位置にあり、明らかに低い。今岡さんは「現代のドアノブより20センチほど低い。大正時代の建築物の特徴的な高さで、現代人との平均身長の違いが背景にあるのかも」と解説する。
 貴賓室の薄紫色の壁紙や五頭式シャンデリアは当時の写真などから復元。カーテンは、壁の内側にあったネズミの巣から見つかった切れ端を手掛かりにした。「忠実に再現したい」との執念のたまものだ。踏み出すと靴が沈むふわふわの赤いじゅうたんの貴賓室は、みかど食堂の個室として活用される予定。
みかど食堂ではさらに、塗りつぶされていた壁の中から配膳口も見つかった。次室のじゅうたんは、当時の新聞記事の記述を基にオリーブ色に再現した。 
九州初の電気時計
 駅構内には開業時をしのばせるスポットが多い。水飲み場の「帰り水」と、手洗い場の「手水鉢(ちょうずばち)」は建築当時からあり、現在も使用できる。青銅の手水鉢は戦時中、軍への供出を免れたことから「幸運の手水鉢」と名が付き、パワースポットとしてコインを投げ込む観光客も多い。九州の鉄道の起点を表す「0哩(ゼロマイル)碑」も設置されている。
 駅舎正面の時計は、18年に九州で初めて設置された電気時計。創建当時にはなかったということで撤去も検討されたが、希少性を考慮して残すことにした。コーヒーチェーン「スターバックス」が出店する1階の旧3等待合室の壁は、一部に穴を開けてガラス張りにした。耐火性を上げるため壁内部に瓦が塗り込められた工夫が一目で分かる。もちろん、駅舎の景観にも配慮しながら、しっかり耐震工事も施されている。
 「100年以上を経た駅舎を次代に引き継いでいきたい」と語る今岡さん。その引き締まった表情は、未来の100年に引き継げる「門司の宝」を再現できた自負に満ちていた。

JR門司港駅

 1891年に九州鉄道(JR九州の前身)が、鹿児島線の起点駅「門司駅」として開設。石炭の積み出し港として門司港が発展するのに伴って駅舎が手狭になり、1914年に移転して現在の駅舎が建てられた。42年、関門トンネルの開通に伴って「門司港駅」に名称を変更した。駅舎は88年、鉄道駅として全国で初めて国の重要文化財に指定。現役駅舎で重文に指定されているのは、門司港駅以外では東京駅のみ。JR九州は2012年、老朽化に伴った駅舎の大規模改修工事に着手。昨年11月、1階のコンコースやみどりの窓口の工事が完了し、駅舎の利用が一部再開していた。 (西日本新聞より転載 201939日付)

 

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