建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

小池博史ブリッジプロジェクトメルマガ67号(小池博史ブリッジプロジェクトからメール配信) に、 ふ印ラボ最強のバリ舞踊家小谷野哲郎さんが 小池博史を論じた「小池台本と形化する舞台との関係について」をアップしています。


1)「小池台本と形化する舞台との関係について」 小谷野哲郎(バリ舞踊家)  

  この度、小池さんのこれまでの台本を集めた著作集が出版されるということだ。  
私自身、2008年にパパ・タラフマラ時代の作品「ガリバー&スウィフト」に参加したのが最初  
で、小池台本を渡され、それを舞台に立ち上げていくという作業に気づけば早10年関わってき  
たことになる。  
  おそらく作品ごとに参加するメンバーそれぞれ、小池台本の読み方、舞台へのイメージの作り  
方があるだろうが、私の場合、まず全体を流し読みする。すると、小池さん自身が「舞台空間  
もリズムだ」と言っているように、作品全体のリズム感が伝わってくるのだ。「わかる」とか  
「わからない」とかはひとまず置いておいて、まずはただそのリズムを捉える。すると、小池  
さんがイメージする作品の流れが見えてくる。  
  小池さんが台本を書くとき、おそらく、作品のかなり細部にわたるまで、すでに完成して舞台  
になっている姿が思い描かれているように思う。以前、作曲家に渡すための台本を見せてもら  
ったことがあるが、そこには秒の単位まで細かく音楽の長さが設定されていた。ということは  
、それぞれのシーンの長さがすでに小池さんの中では秒の単位で決まっているということだ。  
また、小池さんのリハーサルでは、冒頭からひとつずつ細かくシーンを作っていく。演出家に  
よってはまず全体をざっと作って細部を整えていく人や、作りやすいシーンから作っていって  
組み合わせる人など、色々なタイプがいる中、小池さんは必ず冒頭から細かく作っていく。彫  
刻に例えるならば、大きな木から人の彫像を彫り出すのに、足先から細かく彫り出していき、  
頭のてっぺんまで行き着いたときには細部にわたるまで完成した像が出来上がっている、とい  
うような感じだ。すでに頭の中では完璧に完成している像を彫り出していくのでなければ、で  
きることではない。  
  その完成している像を書き起こしているのが小池台本、と言えるが、そこには決して詳細に全  
てが描かれているわけではない。細かく書かれている部分もあるが、それよりも、もっと詩的  
な、イメージを喚起させるような言葉が並んでいる。  
「煙の中を2頭の鹿がニュッと現れる。鹿はねっとりと性的に絡み合い、するりと消える。そ  
の姿を見つめているのがビーシュマ。自身が時計のメタファーとなっている。時計化した、ミ  
ニマルな動きだ。  
  カラカラ音が流れるときは必ず文字が浮かび上がり、文章が流れる。字幕となって浮かび上  
がる。かすれた古代文字の雰囲気がなくはない。基本英語字幕だが、場所に応じて現地の言葉  
が映写される。以下は字幕とビーシュマの語りだが、この間に、白い服を着た人々が出てきて  
はもぞもぞと蠢いている。粘菌のように静かにリゾーム状に。原初的なエネルギーが渦を巻く  
かの如く。しばしばストップが入るが、その塊の蠢きは、静止を入れつつ次第に分離し、激し  
さを増していく。  
  一方、ビーシュマだけは最初から仮面を付け、床に置かれている衣装を儀式性を伴いながら  
着ていく。喋り出す。喋りを止めると動く。それは字幕と関係した動きで、相似形だ。」  
これは、現在リハーサルが進行し、間も無く初日を迎える「幻祭前夜2018〜マハーバーラタよ  
り」の冒頭部分。  
  また、  
「明転すると、三つのポジションに、人形のように座っている三人の男たち。少しずつ、ギギ  
ギッギギギッと動き出す。と、突如、颯爽とひとりずつ動き出し、自慢話を動きで表現してい  
く。鉄砲を持っている。間違いなく、何かをしとめていることを表現に入れ込む。ぐちゃぐち  
ゃにならず、滑稽でありつつ、スタイリッシュである。三人ともに、自己表現が終わると、全  
員、一瞬、座ったかと思いきや、一気に活性化して登場してくるスタイリッシュな傍若男たち  
。みんな格好は良い。ビリリと格好をつけて歩く。どこか威張った感じで移動する。しかし、  
どこかしらぎこちない。ときどき、間接がグニュリと動き、昆虫のようにすら感じさせるので

ある。それは機械に見えなくもない。 
  舞台上には三本の突っ立っている棒がある。棒は簡素に立っていたり、投げ捨てられている。 
うなり声を上げ出す。うなり声はまるで動物を威嚇するようで、声はポリフォニックに変わ 
っていくが、バリっぽいわけではない。 
  三人の動きは、音とピタリと嵌っているとも、音とは乖離しているようにも見える動きで、 
音と身体の動きがまるでセッションをしているような印象さえある。まだ、戦闘前の動きにす 
ぎない。すなわち、町の男たちの自尊心と自慢話と空威張りとが、恥ずかしげもなく露呈され 
る。ときどき静かなピアノが鳴る。」 
  こちらは、日本全国世界各国で公演を続けている「注文の多い料理店」の冒頭部分。 
どちらも、何かを予兆させるような象徴的な言葉が並んでいるが、非常にイメージ的であり、 
ここから実際の舞台に立ち上げていくのは、言うまでもなく役者の仕事である。 
  小池さんの舞台を観れば誰しも思うことだが、役者たちの身体の強さは、他のどのような舞台 
でも見ることのできないほどのものだ。ただ単に早くたくさん動けるとか、跳べるとか、力が 
強い、というようなものではない、舞台上で立ち舞う強靭さ。それは、ひとえに小池さんの強 
烈なイメージを体現するのに必要な強靭さだ。 
  私自身バリ舞踊家である他、近年の小池さんの作品には能楽師、琉球舞踊、京劇、タイ舞踊と 
いった伝統・古典の役者たちが多く参加しているが、それは何百年という時間をかけて先人た 
ちから伝えられてきた強靭な身体性がそこにはあり、そのくらいの強度を持ったものが小池台 
本と出会ったときに立ち現れる世界のものすごさがなんとも面白い。 
  逆を言えば、小池台本にはそのくらいの強度を持った伝統・古典の世界に向き合えるだけの強 
さがあるのだ。 
  もちろん、そういった伝統や古典のアーティストたちだけではない。コンテンポラリーや舞踏 
、サーカスなど、現代的な表現のアーティストも多く参加しているが、それぞれが個性的で、 
クセがあり、皆一筋縄では行かない役者ばかり。 
  小池さんを筆頭に、やたらとクセの強い人間たちが集まって初めて立ち上がってくる小池台本 
の舞台。だから、どれもこれも、小池台本の舞台の出演者は、おいそれとは替えがきかない。 
今回の「幻祭前夜」もそうだが、再演でキャストが変更になることもある。そんなときは、再 
演と言っていいのかどうかわからないほど、参加するキャストによって、違う作品の様相で立 
ち上がってくるのだ。 
  私の親しいある人が、「クセが強いというのは、旨味がたっぷりということだ」と言っていた 
。 
  噛めば噛むほど味が出る、旨味たっぷりの舞台。 
  クセの強い小池台本を調理して舞台に形化していく、これまたクセの強い役者たち。 
何度観てもその度に新たな発見があり、何度演じてもその度に深くなっていく作品。 
アッサリとオシャレに軽く明るくわかりやすいものが好まれる現代の中で、こんなにもクセの 
強い舞台はなかなかないだろう。しかし、そこには本当に自分自身の奥深くに効いてくる滋味 
が溢れているのだ。 
   一度そこに触れたらそれこそ「クセ」になる小池台本とその舞台。今年もこれから「幻祭前夜 
2018」全国5ヶ所ツアー、「注文の多い料理店」離島公演、と続いていく。 
本が出版された暁には、そのクセのある素材が実際の舞台でそれがどのように調理されている 
のか、なかばゲップが出るくらいの旨味を存分に味わって欲しい。 
「そしてその‘声’は繰り返すようになってさらにスピードを増し、どんどん音化してスキャット 
となってしまう。 
   三人はスキャットのスピードに釣られるかのごとく、たいへんなスピードで、脱いだり、取

ったりしていくのである。それはきわめて滑稽で、バタバタしている。もちろんリズムが伴い 
、動きはカタカタしたパペット人形のようである。するとその後、からだを叩いたり、首を振 
ったり、口をからからと動かしたりしつつも次第に、プリミティブになって、グルグルグルグ 
ル、奇っ怪な素速い盆踊りの如く踊り出す三人。グングン、スピードが増していくが、ストッ 
プし、『にく~♪にくにくにくにっくにく、おまえはミディアム、ぼくレア、あなたはウェル 
ダン、ぼくレア、にくがぼくらを待っている、ああ、ああ、おなかがぼくらはぺったんこ 
~♪』」(「注文の多い料理店」より) 

スクリーンショット 2018-06-10 12.28.51
 

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