建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
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 2017年9月14日(木)~15日(金)北海道美唄市にある安田侃彫刻美術館アルテピアッツア美唄と赤平炭鉱で開催される直前のアートプロジェクトを巡ってきました。(※赤平炭鉱は別の記事でアップします)これは日本文化政策学会北海道大学大会(2017年9月16日~18日)に参加する前入りを利用して北海道を見てみようというもので、偶然にも旧産炭地を知る旅になりました。
 日時:2017.9.15(金)
 巡った人:藤原先生 岩井千華 藤原旅人
 巡った場所:美唄市、滝川市、赤平市

 9月15日(金)美唄市内をみる→アルテピアッツア美唄→滝川→赤平炭鉱
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 ↑北海道の寒冷地仕様の住宅を見る。美唄市は豪雪地帯です。
 ↓安田侃彫刻美術館アルテピアッツア美唄を訪問しました。
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 アルテピアッツア美唄は、美唄市出身の彫刻家・安田侃(かん)が今なお創り続ける大自然と彫刻とが相響する野外彫刻美術館です。美唄市は、かつて北海道有数の炭鉱都市として栄えましたが1973年に閉山。1981年安田侃氏がアトリエを探していた時に、旧栄小学校に出会い、まだ使われている幼稚園をみて、「この子どもたちが、心をひろげられる広場をつくろう」と思い、それがアルテピアッツァ美唄誕生のきっかけとなりました。1992年に学校跡地を中心に広大な敷地に彫刻公園が開園。木々の中に40点あまりの作品が配置されています。展示空間としてよみがえった校舎や体育館では、さまざまな展覧会やコンサートなども開かれるようになり、中央の芝生の広場では、夏は水遊び、冬は雪遊びにやって来る大勢の子どもが走り回る場となりました。
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  ↑ 旧栄小学校の教室2つ分を使った展示。
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 ↓時空を超える門か。
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 ↑”ひとつがふたつ”。私の見立てではミケランジェロのロンダニーニのピエタ(ミラノ)のようみ見えました。
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 アルテでは全ての作品をみましたよ。安田侃の作品はどれも見る側の想像力を誘発するもので、生活や仕事の中で私たちが出会う「こうしなければならない」主義から心を解き放ってくれるものであると思って見ています。芸術が持つ包摂性があると言えるのではないでしょうか。これは「だらけた」「なんでもあり」の意味ではなく、作品ごとに共通したものがありそこにリズムを感じるので統一性が感じられ、破綻したものを感じません。アルテに来ると、同じモチーフで「向きを変えて置く」、「大きさや素材が違う」作品に出合います。モチーフは同じなので、同じなのに、見る側は「同じ」としてみないのではないでしょうか。私は西洋絵画の特に宗教画が好きでローマにも見に行ったことがありますが、例えば異なる画家が描いたペトロでも同じ持物(アトリビュート)を持たせることで、それがペトロだということがわかる絵画はよく見ました。安田侃作品はこれとは正反対で、同じモチーフ、同じ作品でもその作品が置かれる場所で違った動きを見せるというか、その場所々々の文脈を作品が吸い込んでしまい、同じモチーフの作品でも違って見えるのです。そしてなぜか作品達は昔からそこにあったような顔をしているように見えるのです。このため、季節が変わり場所の様子が変われば、季節ごとの作品達に出会えます。

 ↓は、アルテピアッツア美唄から更に奥にいった我路のファミリー公園内にある安田侃『炭山(ヤマ)の碑』です。これは、炭鉱で亡くなり今も地下深くに眠る人々への鎮魂の碑として美唄市からの要請を受けた安田侃氏が構想し設置したと聞いています。アルテピアッツア美唄より10年以上前の作品です。
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↓次に現在は炭鉱メモリアル森林公園になっていますが、炭鉱があった当時はピットだった部分を見てきました。
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 美唄市にあるアルテピアッツア美唄、炭鉱関連施設巡りはここまでです。炭鉱が閉山してそれに伴い人口も減少した美唄市ですが、旧栄小学校跡地につくられた安田侃彫刻が野外に置かれているアルテピアッツア美唄は、そのような中、芸術による地域再生の嚆矢ではなかったかと思います。その再生とは、賑わい創出ではなく、芸術家が土地の文脈を考慮に入れずにつくるものでもなく、経済優先でもなく、炭鉱の土地に鎮魂をした後、土地の文脈に即し、炭鉱繁栄時の文化の豊かさを芸術に転換することで継承し、人々の心の豊かさを願ったものであったと個人的には思っています。

そして、滝川の松尾ジンギスカン本店でラム食べ放題に挑戦!予想を上回る〇〇でした!

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 松尾ジンギスカンの創業は1956年、松尾政治が開いた「松尾羊肉専門店」が始まりです。 大正時代、軍需資源として羊毛の国内自給を目指した国の計画によって、綿羊飼育のため、滝川、札幌の月寒(つきさむ)地区など全国5ヶ所に種羊場が開設されましたが、戦後は繊維の科学的発達により羊毛そのものの使われる頻度が少なくなり、羊毛だけではなく、羊肉をはじめ羊の様々な活用が研究されました。当時、毛のとれなくなった高齢の羊は、臭みがあって食べにくいものだったのですが、松尾氏は、羊肉を玉ねぎとリンゴのタレに漬け込む方法でタレづくりに10年ほど試行錯誤して開業しました。つまり、羊は食べるのが目的だったのではなく、羊毛が目的であったため、使われなくなった羊をなんとか利用したいという工夫の結果が現在のジンギスカンになりました。
 北海道で食べられるジンギスカンには、1)前もって羊肉を独自のタレに漬けこんだものを焼く派(空知地方)、2)肉は漬け込まずそのまま焼いて口に入れる直前にタレをつけて食する後づけ派(札幌) の2つのやり方があり、ジンギスカンそのものは北海道遺産に認定されていて、松尾ジンギスカンは漬け込み派です。ジンギスカンは肉だけを食べるものではありません。膨らんだジンギスカン鍋の縁にもやし・ピーマン・人参・かぼちゃ・ネギなどの野菜をたっぷりおいて、上部の鍋が膨らんだところで肉を焼きます。野菜は漬け込みタレをかけて煮るようにして火を通して嵩が減った状態で食べるので、多くの野菜を摂取することができます。しめは、うどんを野菜と同じようにして煮ます。羊肉は脂身が少なく健康食と聞いていますし、羊肉の中でも1歳未満の子羊の肉であるラムはやわらかく食べやすいです。私が子どもの頃は、小学校の運動会でもジンギスカンをしていたように記憶しています。とりあえず焼けば美味しく食べられるので、家庭では、ホットプレートやフライパンで焼いていました。調理に手間はかかりません。そんな道民食をジンギスカンの聖地でいただきました。
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             ↑ ラムの漬け込みジンギスカンです。
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 ↓この碑は今回初めて知りました。
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 美唄市も滝川市も大きな北海道では空知地方に含まれ、2010年まで空知支庁が岩見沢市にありました。2010年からは空知総合振興局に改組されています。(北海道庁は札幌市にありますが、札幌市は石狩地方といいます。)空知の旅は、地域にあるものを再生し成功したものを確認する旅でした。北海道民は新しモノ好きと言われていますが、スクラップ&ビルドではなく、アルテピアッツアにしても松尾ジンギスカンにしても、そこにあるものを工夫して再生して新たな内容にしたものを提示したからこそ、人々に受け入れられたのだと思います。

                                         岩  井

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