2017年6月4日(日)9:00~18:00九州産業考古学会年次会が福岡県八女市で開催され、藤原研究室からは岩井と韓くん、九大研究員のジムクマさんが参加しました。
スケジュール
10:00~ 総会(八女伝統工芸館)
10:45~ 講演 大石道義「八女地方の伝統的地場産業の構造・価値と地域づくりについて」
11:40~ 八女伝統工芸館見学(ガイドつき)
12:10~ 昼食
13:00~ 旧八女郡役所古建築再生活用現場
13:45~ 隈本木工所/八女独楽工房
14:40~ 井上水車場
15:00~ 馬場水車場/線香原料
15:40~ 休憩(「ホタルと石橋の館」)
16:35~ 内野天然樟脳工場(みやま市)
17:20~ 荒木精蝋工場(みやま市)
総会です。大石先生から「植物資源に依拠した地場産業が、田園風景をつくり、文化的土壌を育んだ。」田崎広助、青木繁、坂本繁二郎はこの八女・櫨の国が生んだ画家たちであり、彼らのいたところは2k㎡の範囲におさまる。ここに昭和の文化勲章をもらった人たちがいる」総会終了後は大石先生が本日見学させていただく制作場でつくられているものの説明とその一部を使ってワークショップをした際の作品を見せて下さいました。
下は杉葉を粉砕したものでつくった絵。
↓以前、矢部線が走っていた場所にこの工芸館はあります。
仏壇は、分業制で5人の職人がそれぞれの分野の仕事をして、最後に仏壇やさんが組み立てて製品となるとのことでした。細かい彫りものは、えんぴつや黒マジックでかいてすぐ彫るということです。この大きな仏壇は、材料費だけで3,800万円、本来は1億4000万円する。伝統工芸がつづくのは分業制だから。
八女福島の灯篭人形は、30分の出し物に53名が関わっていて、人形一体に6人がつくそうです。放生会の公演は3日間行われるのですが、3日目の千秋楽が一番息があって良い公演になるとのことでした。
館内見学後は、八女のものをつかった美味しい食事。ダゴ汁など。
↓次は旧八女郡役所を見学。
旧郡役所には、今は朝日屋(酒屋さん)が入っていました。朝日屋の高橋さんがお話をして下さいました。明治20年につくられて、大正2年まで使われていました。戦時中は銃弾工場、その後はエサを売る店でした。郡役所時代には、八女郡是があり、どういった産業があるか田中けいすけ氏が挙げて、これらを発展させていこうとしたそうです。入るとすぐ朝日屋さんです。
↓この柱の下の穴のところまでが床だったそうです。
高橋さんを含めたこの郡役所の支援団体メンバーで壁ぬりをしたそうです。
えほん屋ありが10匹はこの5月にオープンしました。
次に隈本木工所で独楽をみました。
独楽の材料はマテカシ。
八女の独楽の特徴は、上部中心部におへそがあること。独楽をまわせない人がいるので、独楽に螺旋状の溝をつけて、まずは、ひもを巻けるようにしています。現在では、学校で先生の授業で独楽まわしを教えることもあるとか、教える側の先生も独楽まわしを体験していない人がいるということです。
井上水車場。
次に馬場水車場。ここは線香の原材料となる杉粉をつくっています。現在、現役で動いている線香水車は馬場水車場と井上水車場のみです。馬場さんは、伐採後の杉山から杉葉を集め、乾かして、水車を使って粉にしています。
馬場猛さん。大正時代、集落としてこの水車場をつくりました。それを先代の馬場次男さんが敷地ごと買い受け、現在は二代目の馬場猛さんが営んでいらっしゃいます。
。木製水車の寿命は約20年。馬場さんは平成20年10月に水車を再建しました。
水車がまわっています↓。
まだ粗い杉。でも本当のお線香の色はこの色。緑でもラベンダー色でもありません。あれは着色だそうです。
かなり細かくなるまでひきます。
原材料の杉の葉です。この他にタブの葉も入れています。
次は内野天然樟脳工場。私は樟脳は防虫剤と思っています。
日に当てていない生蝋です。
ヨーロッパへ輸出するものです。
今まで八女には何回も行っているのですが、今回は初めて隈本木工所、馬場水車場、内野天然樟脳工場、荒木製蝋を見せていただきました。それぞれ、独楽、線香の粉、天然樟脳、製蝋と作っているものは違いますが、一人、二人で地域にある資源を使って優れたものをつくっていらっしゃいます。人が最小限の動力でものをつくりだしていく過程に感激しました。
岩井