2016年9月5日(月)大分県立図書館にて「図書館総合展フォーラム2016in大分-障害者・本・図書館員をつなぐ図書館づくりのために-」が開催されました。プログラムは以下です。
福岡市総合図書館内には福岡市立点字図書館があり、一度担当の方にお話を聞いたことがあるのですが、行政が直接運営しているのではなく、福岡市身体障害者福祉協会が運営してます。点字の本を見せてもらったのですが、そもそもの数が少なかったり、点字を打つ作業が大変労力のいるものであったり、借りる人も総合図書館まで来るよりも点字図書を郵送しての利用ということでした。また、上海の図書館学会で視覚障害の方とご一緒し、障害のある方がどのように図書館をりようしているのか興味があったので今回のフォーラムに行ってみました。
今回の講師は、視覚障害のある植村先生、障がい者サービスが専門の野口先生、介護の現場で働くあべ先生です。
障害といっても 視覚障害、身体の障害、学習障害などがありますし、子どもの時から障害がある場合や、人生の途中で障害を持った方もいます。昔は障害のある人は学校教育を受けなくてよかったということでした。まちづくりに関わる私たちはこのような障害を持つ人も町を構成する一員ということを常に頭に入れておく必要があると思いました。
植村先生からは、障害者が図書館に移動する困難さ、図書館で希望の図書を選ぶことの困難さが語られました。障害のある人がわざわざ困難を感じてまで図書館に行くこと、そうまでしても図書館では思うような本に出会えないこと、図書館が使いづらいことが報告されました。加えて、「うちの図書館ではこのような障害者サービスをしています。」と言っても広報ができておらず、障害を持つ人に伝わっていないのではないかというおはなしがありました。植村先生は、図書館で働く人々に対して、「街に出よう。自己満足で終わるのではなく、できないことの理由を挙げるのではなく、街にでて障害のある人のところへで向こう」とい話をされました。
※障害のある人へ、図書館の広報をする場合は、ヘルパーさんに伝えるのが好いのではないかという提案があとからありました。
図書館総合展の特徴は、協賛している企業のPRタイムというか、企業紹介タイムがちゃんとあることです。参加者は、自分の聞きたい「〇〇先生」だけを聞いて、協賛している企業とはこのようなフォーラムの場ではあまり交流や情報交換の機会を持たないイメージがありましたが、図書館総合展はちゃんと協賛企業と図書館を結びつけることをしています。協賛企業があるお陰て、参加料無料で講演会やフォーラムを聞くことができるのです。アメリカの全米図書館協会主催のALAという研究会も協賛企業ブースがありますが、参加費も支払います。しかし、日本の図書館総合展は無料で重要・最先端の話が聞けるのです。誰がこの運営費を負担しているのかということをちゃんと認識しながら、専門家の話を聞くという当たり前の認識が薄かった私にはこの方法はもっともなやり方だと思えました。
↑は、内田洋行のユリウスというシステムです。これは貯金通帳のように読書記録を記録できます。読書通帳のデザインもご当地に合わせたものにするそうです。残念ながら九州ではまだどの図書館も納入していないということでした。
キハラのリーディングトラッカーは学習障害のある方が本をよみやすくする道具です。このようにするだけで読めるようになるそうです。
熊本に本社がある図書館什器の会社(主に棚)・金剛(こんごう)は、熊本地震で被災した会社です。しかし、被災した会社が被災した町の文化財をおく棚を寄付しました。企業のこのような社会貢献へ向く姿勢を更にきちんと評価することが必要だと思いました。
大分県立図書館です。↓。大分出身の磯崎新建築1995竣工ということでした。柱の多いのが特徴です。
第2部は分科会。
↓は、学習障害のあるの文字の認識の仕方です。こんな見え方をしていたとは全く知りませんでした。これでは情報に接する、物語を味わう ということが困難です。
分科会では、ある図書館で働いている方から、「よく来る利用者からクレームが来た。予約の案内を電話でした、いや受けていないというものである。このような場合、別室で相手の話をカウンセリングマインドで聞いて、対応した。よく聞いてみると、この利用者は中途から障害者になってしまい、どうも図書館員から馬鹿にされているという捉え方をしたということがわかった。」というものでした。
ここでの問題点は、この図書館員の方は心理学を学んでいて、カウンセリングマインドを知っていて使えたから対処できたということです。普通の司書課程には心理学や障がい者理解といった科目はありません。私は学童保育で働いた経験がありますが、自閉症の幼児への読み聞かせはできないままでした。(自閉症といってもじっとしていることではありません。叫んで走り回るということをする場合があります。自閉症といっても人によりさまざまなのですが、理解がすすんでいないことも多いです。)
他の先生たちからも報告がありました。
今回のフォーラムを通して、障害といっても、発達障害、学習障害、身体の障害、視覚障害などなどがあり、子どもの頃からの障害、人生の途中からの障害があることを改めて認識しました。図書館は何ができるでしょうか。点字図書や対面朗読、バリアフリーの考え方と実態、ピクトグラムによる案内など 現在の図書館では足りないことが多ことがわかりました。司書課程に「障害を持つ人への理解とバリアフリー図書館」といった科目を入れる方がいいと思います。
岩井
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2015年に開館した大分県立美術館も見てきました。こちらは坂茂さんの建築です。大分は文化にも力を入れているということがわかります。