2016年6月18日〜19日にかけて、2016年天草下浦・フィールドワークの第2回
準備会議と九州大学大学院教授
藤原惠洋先生による講話「下浦石工の歴史と功績」
が下浦地区コミュニティセンターにて開催されました。
午前中は大学で借り受けた公用車のバッテリーが上がってしまう(!)トラブルに
見舞われましたが、18日は天気にも恵まれ、藤原先生の運転で天草に向かいました。
熊本に入ると、やはりまだ熊本地震の影響があちらこちらで見受けられ
胸が痛みました。道中は、熊本地震後の三角西港を目視調査し、上天草市にある
大空食堂で昼食をいただき、本渡の丸尾焼に立ち寄り
下浦のコミュニティセンターに到着しました。
天草・下浦フィールドワークは、藤原研究室が20年来九州・山口地域の各所で
行ってきた地域固有資源を活かした地域再生研究の一つであり、2014年から
毎年開催されています。参加者は国内外の大学生、大学院生、デザイナー、建築家、
アーティスト、研究者等様々な分野で活躍する社会人が各地から集い
下浦地区の住民の方々と恊働して行われ、100人程の規模で2泊3日〜4泊5日で
行われてきました。
下浦は江戸時代中頃に佐賀肥前の藩士、松室五郎左衛門が石工の技術を伝播して
以来、石工の町として栄えてきました。長崎のオランダ坂の石畳やグラバー邸の
庭石、2015年にユネスコ世界遺産として登録された「明治日本の産業革命遺産」の
構成資産である三角西港、軍監島の護岸にも下浦石工が携わっています。
近年は、地域衰退や後継者の不足から縮小を余儀なくされており、フィールド
ワークはその課題を様々な人々と乗り越え、下浦の魅力をもっと活用し拡散して
いくことを目的としています。
準備会議は、下浦地区振興会の方々と計18名で行われました。今年も例年
行われている参加者の民泊、参加プログラム、懇親会について様々なアイデアが
出され、さらに音楽祭の計画も行っています。参加プログラムは、フィールド
ワーク参加者がそれぞれ関心のあるテーマに分かれて、会期中グループワークを
通してデザイン提案を行うものです。下浦実行委員会の方々が考案した
「下浦再生デザインプラン」と、これまでのフィールドワークで実践してきた
プログラムを合わせて、より地域の課題や挑戦が反映されたものに
なりつつあります。
19時からは、下浦地区の石工さん方々にもお越しいただき、藤原先生による
講話「下浦石工の歴史と功績」が開催されました。藤原先生は、30年以上
近代建築を中心とした建築史の研究を行う中で、下浦石工の卓越した技術と
仕事ぶりを見つめてこられました。産業集積の場所である下浦、そして
下浦石工という石工クラスターの存在は、もっと世の中に知らしめてゆけると
述べられました。石工とは、単に地域固有の資源からモノを作り出す存在では
なく、その地域の景観やインフラ、さらには地域社会そのものをつくったり
守ったりと、極めて社会的影響力のある存在であったと価値付けられました。
その中でも下浦石工の仕事は極めて優れており、その足跡は古い文献、
研究論文、長崎のグラバー邸やオルト邸、リンガー邸をはじめとする近代建築の
随所に残っており、藤原先生はそれらを丹念に見つめてこられました。
下浦フィールドワーク以外でも、大学・大学院の授業の中で学生を連れて
石工の方々の仕事ぶりを拝見したことや、小山薫堂氏と幕末明治黎明期の
長崎や天草一帯で大活躍を遂げていた天草棟梁・小山秀之進の足跡を辿った
様子などが話され、下浦という地域や歴史的背景が、社会からも注目され
評価が高まっている様子が伺えました。
講話会終了後は、下浦のお母さん達が作って下さった美味しいお料理を囲んで
懇親会が行われました。大塚さんからは玉ねぎときゅうり、黒川さんからは
ビールを2ダース、湯貫さんからはすももと人参、松岡会長からはたけのこを
いただきました。民泊先では近藤さんのお宅にお世話になり、宗像さん、
近藤さん達と夜中までいろいろな話を聞かせていただきました。
朝食でいただいたきゅうりがとても瑞々しく、お庭の畑からいただきました。
2016天草・下浦フィールドワークの参加者募集はもうすぐ始まります!
國盛