4月29日(金)は、芸術文化環境論の授業恒例の「福岡市の3館美術館めぐり」をしました。
これは藤原先生の芸術工学部での授業「芸術文化環境論」が母体となっているもので、この日は、芸術工学部の学生の他、大学院の学生と伊都キャンパスで「まち歩きとブラ遺産」の授業とっているこの4月に入ったばかりの新入生も大勢参加しました。
福岡市にある美術館3館(福岡市美術館・福岡県立美術館・福岡アジア美術館)巡り
4月29日(金)9:30~18:00まで
参加学生 九大芸術工学部3年
九大芸術工学府大学院生
九大基幹教育 伊都キャンパス 合計130名弱
福岡市美術館 9:30-11:00 (レクチャー:神保学芸員)
福岡県立美術館 13:00-15:00 (レクチャー:藤本学芸員)
福岡アジア美術館 16:00-18:00(レクチャー:中尾学芸員)
学生は各美術館で以下のことをしました。
1)ボランティアガイドさんと一緒にコレクション展作品を見て味わう、今回、県美では印象派展を鑑賞する
2)レクチャーとして学芸員さんから以下のお話を聞き、それをワークシートに書いて提出する。
1)この美術館のミッション
2)この美術館のコレクションの特徴
3)企画・管理運営の特徴
4)教育普及活動(アウトリーチ)の特徴
福岡市美術館での受付から始まります。
初めに講堂で神保学芸員のレクチャーを聞きます。
福岡市美術館のミッションは、市民の教育・文化の発展に寄与し、アジアの中心都市を目指し都市機能を有する福岡で市民の要望に応えながら造形文化の発展を推進していく。
コレクションは、古代から現代まで約16000点の作品があり、7割は寄贈。西日本出身者やゆかりのある人物、近代美術の流れを展望できる国内外の作品を収集するといった方針の元にコレクションしている。
公立美術館では開催されてこなかったジャンルの作品展であっても美術的な価値を認めて実施するという挑戦的な企画運営が特徴。
アウトリーチ担当の学芸員が多く、学校授業の受け入れ、ギャラリーガイド、美術関連図書収集、ファミリーデイ、いきようよう講座など様々な人がアートを体験できるように企画している。
レクチャーの後は、グループに分かれてボランティアガイドさんと一緒に美術鑑賞。
ガイドさん達は自らの解釈を押し付けることなく、学生の絵への関心を上手に引き出してくれました。
私はジョアンミロの作品を学生と一緒に見ました。教会の鐘がなっているような作品に思えました。
次は福岡県立美術館。
ここは↓福岡県立美術館です。
県立美術館では、博物館法第2条で規定されている条項の他に、人に寄り添うホスピタリティの提供も目指している。コレクションの特徴は、尾方家絵画資料(5000点)、児島善三郎、高島野十郎など福岡県ゆかりの作品を多く収蔵している。デザインや工芸も多いのが特徴。
企画としては、年2回の自主企画、3回のコレクション展、2回の大型巡回展、移動図書館展、県展がある。
アウトリーチ担当が特にいないが、移動美術館展は地域住民とともにもりあがるものでアウトリーチといえる。
学生はコレクション展と印象派展を交代でみました。印象派展に感銘を受けていた学生もいたようです。
私はコレクション展におおっときました。
最後はアジア美術館。
アジ美ホールでボランティアガイドさんを紹介していただき、早速作品を鑑賞市に行きました。
これまでも絵画や彫刻などは美術を見なされてきたがそれ以外ものは美術品か。
名刺入れや籠も美術品に含まれるのではないか。「何が美術なのか」「何を根拠に美術とするのか」を問いかけ考え直してもらうのがこの美術館のミッションである。それをアジアの近現代における美術作品の収集展示をとおしてしようとしている。
西洋の作品を模倣するだけでなく、独自の発展を遂げてきたアジア美術の作品を系統的に収集している。
コレクションは2000点を超える。アジア美術の価値があまり認められてこなかった時から収集していた。
99年開館以来、予算が少なくなっていて、再構築することが課題である。
アーティストのレジデンスプログラムにより、アジアの作家と地域住民が交流し、普段アートに触れてこなかった人々がアートに参加することができるようになり、これがあるとリーチになることを期待する。
今年も無事終了しました。
美術館は ミッション、コレクションの特徴、企画・管理運営の特徴、普及活動の特徴が明確です。1館1館が独自性を持っていて、その独自性が重要になります。1館1館が唯一無二の美術を持っていると思われました。また、ここでしかできない美術体験ができることが美術館の価値だと思います。
私が研究対象としている図書館は、全国均一、どこでも同じ資料を無料で使えて、田舎でも都会でもどこでも同じサービスを受けられることに価値があります。本は単価が安いので自分で買うことができますが、美術品を個人で買うことはなかなか普通の人にはできません。図書館には分館や地域館があり、住んでいる場所の近くに小さな図書館がありますが、美術館の作家の作品を小さな館に分散しておくことやアチコチ気軽に持ち出すことはできません。しかし、美術品は本物がもつアウラ(オリジナルなものが「いま」「ここ」という一回性においてもっている重みや権威。W・ベンヤミンが「複製技術時代における芸術作品」(1936)で用いて有名になった概念)があります。私は美術館に行く時は、オリジナル作品がもつ唯一のアウラを味わいに行きます。本物の美術作品が持つ力を味わいに行くのです。美術館がミッションやコレクションを通じて提供してくれる作品のアウラや美術の持つ力は、何物にもかえ難い時があります。
そして、個人的に圧巻だったのが、福岡県立美術館の「開館30周年記念コレクション展連続企画 あなたの暮しのための工芸」です。日本絵・洋画・久留米絣・陶磁器・ガラス・彫像などなど「暮らし」の視点からのとらえ直しの再提示です。絵なら絵だけ、陶磁器やガラス食器ならそれだけ、という特別展はみたことがありますが、このように幅広い内容の組み合わせを扱った企画展初めてみました。生活の為につくられた作品が多いと思うのですが、それが価値あるものだと思わせてくれました。これを担当したのが、美術館めぐりでお世話になっていた学芸員の竹口浩司さん。美術館めぐりの県美でのレクチャーでは、美術館行ったことの無い学生にもわかる基本でありながら、基本を面白く乗り越えてくれて大人も笑えるプレゼン。竹口節は何回聞いてもすごいな~と思っていたですが、竹口さんはこの4月から広島に異動されました。残念です。
①それは何か ②どうやって作られたか ③なぜ作られたか ④どう使われてきたか を想わせる企画展でした。
若い学生のみなさんには、普通に美術に接することができる喜びがこの3館美術館めぐりを通じて伝わったでしょうか。
岩 井