建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
さる12月3日(木)〜12月5日(土)に、韓国内浦地域で、韓日地域再生
デザイン方法を論じる「内浦デザインフォーラム」及び日本天草市下浦と韓国
内浦地域の住民たちの
交流会が行われました。
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日本側からは、九州大学大学院芸術工学研究院の藤原惠洋先生を団長として
旗下の大学院生2人(張慶彬、張榮)と藤原研究室と長らく交流を続けている同人の
高倉貴子氏、天草市下浦住民8人が参加しました。
韓国側からは社団法人「内浦デザインフォーラム」理事長であるハン・ギウン
韓国江原大学デザイン学部教授(前韓国産業デザイン協会会長、Echostone Korea
代表時事)を始め、江原大学大学院学生、韓国全国からのデザイン系大学の教授、
関連公務員、内浦地域住民など総勢約80人が参加しました。

今回の韓国内浦地域の訪問は、2014年から藤原研究室が行っている天草・下浦
フィールドワーク(地域再生デザインワークショップ)に「韓国内浦フォーラム」
理事長のハン先生が参加したことがきっかけとなっています。
その後、ハン先生は、藤原研究室のユニークな地域再生手法を韓国の内浦に紹介する
ため、翌年2015年9月には「
2015年天草・下浦フィールドワーク」に内浦住民と
大学院生7人を連れて参加してくださり、初めての住民同士の交流が生まれました。
それが縁になり、今回は韓国側からの招待があり、韓国の内浦地域に日本の
天草・下浦住民が訪問することになったのです。


今回の韓国内浦地域の訪問は主に3つのスケジュールを中心に行いました。
・内浦デザインフォーラムでの藤原惠洋先生の基礎演説
・内浦地域である忠淸南道(チュンチョンナムド)瑞山市(ソサンシ)・
 余美里(ヨミリ)訪問、住民交流
・韓国文化体験 キムジャン(キムチづくり) 

初日は下浦住民と藤原研究室のみなさんがぞくぞくと韓国仁川空港に到着しました。
その日、韓国中部地域では雪が沢山降ってしまい、飛行機の到着が1時間ほど
遅れてしまいましたが、無事に韓国に到着しました。
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それでも、天草・下浦ではなかなか体験できない雪だったので皆が楽しく
わいわいと盛り上がりながらヨミリ村に向かいました。ヨミリ村は仁川空港から
南に約2時間ほど行ったところにあります。
今回は今年天草・下浦フィールドワークに参加してくれた韓国内浦地区の
ヨンジャン里のバク里長(村長)さんがミニバスで迎えにきてくれました。

内浦地域に入り、初めて訪ねたところは瑞山市(ソサンシ)雲山面(ウンサンミョン)
にある雲山農協(農業組み合い)でした。 雲山農協はキム・ドンヒョン組合長を
含め役員10名と職人33人、組合員が1,452名が働いている、韓国全土でも
3位の中に入る優秀な農協です。
雲山農協がある瑞山市(ソサンシ)は主な
特産品としてお米とニンニク、朝鮮人参、ショウガ、ミ二大根などがあり
複合農業が行われています。
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今回の
雲山農協とのミーティングでは下浦側の湯貫秋男(JA本渡五和地区役人)さん
から韓米FTAの影響や、後継者育成、高齢者支援、職人の給料などに関する質問が
出て、日韓の農村の状況や農協の運営に関する様々意見交換が行われました。

雲山農協のキム組合長によると、韓国の場合、韓米FTAの影響で韓国の農村は
競争力を持つため、いろいろなブランド製品開発や品質改良などを行ったそうです。
しかし、来る12月20日に発効される韓中FTAの場合は、解放規模が韓米FTAの
5.8倍になり、とても心配されていました。
また後継者の育成のため、韓国では農魚民後継者育成事業を通じて、約10万名の
後継者を育てていました。その他、雲山農協では婦人会を通じた高齢者の世話や
農業教育など福祉活動も積極的に行われています。
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農協での懇談会が終わり、ヨミ里へ移動しました。ヨミ里は 
2009年度に
「農林水産食品部」が主管とした「新文化空間造成事業」に採択され、
2011年に建てられた「新文化空間」という所があります。
「新文化空間造成事業」は、農村地域の郷土資源を活かした文化的地域として
リモデリングし、都市民たちが昔の郷愁を感じながら伝統文化を継承することを
目的とした国策事業です。
ヨミリ村では、この授業を通じて焼き物体験やセミナを行う生活文化センター、
郷土食べ物を食べられる村食堂「ディミバン」、昔の精米所をリモデリングした
「ヨミギャラリー&カフェ」が運営されています。
今回、藤原研究室と下浦住民は、「生活文化センター」に泊まりながら
雪が降っている最中でもぽかぽかのオンドル(床暖房)体験や、村の
コミュニティ食堂で、韓国の伝統的な食べ物を沢山食べながら楽しい時間を
過ごすことができました。また、「ヨミギャラリー」ではわれわれを招待して
くださった韓国江原大学ハン先生が代表理事として大活躍されている
「エコーストンコリア(ECHOSTONE KOREA)」というベンチャー企業の
製品展示が行われていました。

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ハン先生は「韓国産業デザイン協会の会長」まで歴任した、韓国で有名な
プロダクトデザイナーでもあるし、研究者でもあります。先生は中央ではなく、
衰退している地方に興味感心を持ち、地域社会をデザインの力で蘇らせることで
大活躍しています。主な舞台として二つの地域があります。
1 ハン先生の故郷である韓国西海岸中部地域の*内浦地域
2 ハン先生が所属されている江原大学がある
江原道(道は日本の県に相当)

*「内浦地域」とは行政用語ではなく、韓国の忠淸南道西北部の生活文化圏を
  称する。朝鮮王朝実録には忠淸南道伽倻山周辺部の10個の村を内浦地域
  と呼ばれている。内浦は忠淸南道の道庁から遠く離れているし、公州・夫餘
  の百済文化圏とも離れていて、経済的、文化的に疎外されていたが、
  1988年西海岸高速道路の開通による首都圏への接近性向上、2005年から
  内浦文化圏開発事業、2013は年道庁が内浦地域の洪城郡に移転することに
  より忠淸南道の文化、行政の中心として変化しています。

「エコストーンコリア」は、このような地域で放置されている地域資源を
デザインの力で蘇らせ、地方から中央へ発信することによって、地方の影響力を
広めています。主な生産品は石を再活用した環境デザイン製品と
プロダクトデザイン製品です。

まず、ハン先生の故郷でもある内浦地域には、韓国最大の石工産業地である
熊川(ウンチョン)という所があります。しかし、毎年捨てられる石が
約1,000tに至っています。ハン先生はその使わない石を粉砕し、約2000tの力で
プレスし、環境に優しく耐久性が高い環境デザイン製品
(フェンス、アーツ
ブロック、ベンチなど)やプロダクトデザイン製品(スピーカ、照明など)
を生産しています。
また、ハン先生の大学がある江原道の春川(チュンチョン)は「玉」という質が
高い鉱物資源が豊な所です。ハン先生はその中でも質が悪くて活用性が低い
「玉」の原石を再活用し、デザインの力で付加価値を付け、名刺差し、時計、
ランプ、ネックレスなど様々なデザイン製品やアクセサリーなどを
生産されています。

 <エコストーンコリアの受賞履歴>                             
・2012年 
韓国産業デザイン協会 「PIN UPP Design Award」受賞  
・2013年 韓国デザイン振興院 「K-Design Festival」優秀商品選定              
・2014年 環境部長官(大臣にあたる)主催、「創造経済実践のための
     アイディア公募展」で最優秀賞
 
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ハン先生の地元に根付いた地域発デザイン展示を観覧した後は、すぐ隣の
「ディミバン」というヨミ里婦人会で運営しているコミュニティ食堂に移動し
地元の住民たちとの交流会を行いました。
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<藤原先生からの一言>

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<ヨミリ村の老人会の会長>

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<湯貫秋男さん>

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<ヨミ里の里長>

1次会が終わった後は、宿泊先で2次会が続いて行われました。
主なメニューとしてはヨンジャン里の、バク里長が栽培した柿で作った
干し柿と韓国西海岸の特産物である「渡り蟹」!

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二日目は朝食後にヨミリの里長さんから村案内がありました。

<カヤの木>
樹齢が340年になっている「カヤ」は朝鮮中期時代の水軍統制使「李澤(イテク)」
が1675年に済州島から持ってきて、故郷であるヨミリに植えたと伝わります。
もともと韓国で「カヤ」は南地方で自生している木ですが、中部地方に育てている
「カヤ」はヨミリ村の「カヤ」が唯一だそうです。
「忠淸南道(チュンチョンナムド)記念物174号」に指定されています。

弥勒仏>
弥勒仏は1970年にヨミリから1kmくらい離れている「ヨンジャン川」の
整備工事の時に発見されたものですが、現在はヨミリ村に建て直しています。
仏様の形象を単純に圧縮し表現しているのは高麗時代(918年〜1392年)に
流行した仏様の彫刻様式だったので高麗時代の仏像ではないかと推測されて
います。高さは約3.1mで「
忠淸南道有形文化財第132号」に指定されています。

<宣城君祠堂>
朝鮮2第目王の「定宗(ジョンジョン)」の4番目の王者である宣城君を
祀っている祠堂として、丙子の乱(1636年〜1637年の中国の
清の朝鮮侵略)から
避難し、ヨミ里に定着した宣城君の子孫が作った祠堂です。ヨミ里村の
李(リ)里長も宣城君の子孫で、現在も毎年陰暦7月7日に祭祀を執り
行っています。
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<ユギバン家屋>
1900年の頭くらいに建てられた朝鮮後期の伝統的な韓国の家屋として、
「忠淸南道民俗文化財第23号」で指定されています。今もユ氏の一家は
正門を入り、すぐ隣に1980年くらいに生活のための新しい韓屋を建てて
住んでいますが、既存の韓屋も保存し、韓屋体験ができるようにし
一般の人に公開しています。
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<アラメギル>
アラメの「アラ」は韓国語で「海」、「メ」は「山」を称する言葉で「ギル」は
「道」です。いわゆる韓国の済州島の「オルレ」のようなヨミリ村がある
瑞山(ソサン)市 のトレッキングコースで2010年開発されました。
ヨミ里はそのアラメギルの出発地でもあります。
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村のツアーが終わった後はコミュニティ食堂「ディミバン」でキムチ作り体験を
しました。韓国の中部地方ではちょうど11月終わりから12月頭の間は
キムチ作りを始まる時期です。今回は下浦住民が自ら、キムチ作り
(キムジャン)を体験しました。

<ヨミ里で学んだキムチ作り方法>
①1日間塩漬けした白菜を用意する。②大根を細かく刻む
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③刻んだ大根とガッ(カラシナ)に各種のエキス(いわしエキスと
小えびエキス、梅エキスなど)を入れて混ぜる
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④唐辛子粉を投入
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⑤出来上がったキムチソースを白菜に入れる
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⑥出来上がり!
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韓国では、キムチ作りをする時に煮込んだ豚肉と一緒に食べる習慣があります。
それで、今回の中食でも豚肉が登場、作ったキムチやキムチソースと
一緒に食べました。
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昼食が終わった後は、内浦地域の唐津市に移動し、第6回内浦デザインフォーラム
に参加しました。
最初に理事長であるハン先生及び唐津市長の挨拶から始まりました。
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フォーラムは藤原先生の基調演説の「宝ものを見つけて活かしてまちづくり〜
地域固有資源を活かした創造と再生〜」からスタート!
藤原先生は天草市・下浦の事例を通じて、よその人の役割や地域資源の価値を
再発見し、矜持、文脈、紐帯の相互補完の必要性を伝えてくれました。
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藤原先生の演説が終わったあとは、韓国の内浦地域の発展のための多様な
デザイン戦略が発表されました。
1)唐津港活性化のためのランドマーク開発計画案
2)サグァン里の環境に優しい6次産業化村デザイン研究
3)バク・ドクギの瑞山デッカイ甘柿農場の6次産業実行計画案
4)6次産業経営隊デザイン活性化研究

今回の主な話題は6次産業でした。6次産業というのは1次産業の生産、
2次産業の食品加工、3次産業の体験や観光などが複合されている産業を
称します。韓国では最近、農村の少子高齢化や人口の減少、FTAなどの
自由貿易協定による農業地域の競争力を確報するため、6次産業に関する
感心が高めています。

特に、今年の天草・下浦フィールドワークに参加してくれたヨンジャン里の
バク里長の、甘柿農園を生かした6次産業デザイン研究発表では、下浦でも
参考にできるようなアイディアが紹介されました。
柿農業の体験プログラムを通じて都市と農村の交流を深めたり、柿を生かした
多様な料理メニューの開発、体験室としての倉庫の改築、
広報方法の多角化などなど。
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夜にはフォーラムの関係者との懇親会が行われました。
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懇親会の仕上げは、宗像さんを中心とした天草・下浦の住民たちの合唱!              招待してくれた内浦フォーラムの関係者とヨミ里村の住民たちに
感謝の気持ちを伝えました。
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最後の1泊2日は、ソウルへ。
ヨンジャン里のバク里長は、内浦での公式的な日程が終わった後も、我々を
ソウルまで見送ってくれました。
その後、韓国伝統市場見学や有名なパフォーマンス「NANTA」公演観覧まで。
韓国の文化をたっぷり感じることができました。

2014年、日本創生会議レポートによると2040年には日本の約1700カ所の地域社会が
消滅すると報告しています。一方韓国でも2015年、忠淸南道研究院の発表によると
2040年には忠淸南道351カ所の自然村(住民50人以下の最小行政単位である里より
小さい町)が消滅すると予想しています。
このように両国とも、地方の人口減少や少子高齢化は、新自由主義の自由貿易協定
などの外部環境の変化の中においても、地元の資産を守りながら価値を高める
努力が求められています。

今年の日本天草・下浦のフィールドワークや韓国内浦フォーラムでは、両国の
切迫した地域の課題をお互いに公有しあいながら、各国の地方で行っている
地域再生事例を学ぶ良いきっかけになったと思います。
地元の課題をより実感しているのは地元の人であり、その課題を乗り越えるために
地元の資源や文化を新しく活用していく主体もまた、地元の人です。
今回の交流は
「地方創生」を標榜した行政や専門家集団ではなく、実際に各地域で
行っている事例に基づいた住民交流だっとので意味があっと思われます。

来年も再来年も両地域の住民交流が続き、両地域の住民の暮らしに新たな活力と
ともにそれに基づいた新たな6次産業が生まれますよう、
これからの交流も楽しみです。

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D2ジャン

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