建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
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  11月14日は、先生たちによる発表が次々と行われました。11月14日 午前:Jia先生からこの会議の趣旨説明と中国の先生たちからのお話。
     午前:藤野先生、藤原先生を含む5人の先生の発表。
     午後:太下氏、野田先生、伊藤先生、鬼木和浩氏を含む6人の先生たちの発表。
        食事会

 11月15日 午前:藤野先生を含む7人の先生たちによる発表。
        分科会形式でそれぞれの部屋で学生及び博士号取得者による発表
        (1人10分程度)
        午後は、日本からの参加者はそれぞれの視察の場所へ。
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  着いた会場はこのような立派な建物と立派な会議場でした。
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 このカップの中は中国のお茶で会議の間中、お茶の給仕がなされていました。
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 休憩時間にはこのような美味しそうな食べ物もでました。
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 景徳鎮といえば、官窯の焼き物で有名です。お皿などいかにも中国らしいものがイメージされますが、現在では、下のようなものも作っているとのことです。
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 ↓神戸大学の藤野一夫先生による発表が行われました。藤野先生の発表は、今後の文化政策(特にアジアでの)を考える上で基調講演にもなる考え方の提示だったように思われました。
 「東アジア文化都市と東アジアの未来のために」として、
  ①東アジアにおける日本の文化政策の課題、
  ②ヨーロッパにおけるドイツ文化政策の課題、
  ③文化政策の理念的・法制度的基盤の確立、
  ④メガイベントからマイクロ・アートプロジェクトによる国際協力へ、
  ⑤カントの「歓待の権利」と東アジアの未来について話されました。
  私は特に④メガイベントからマイクロ・アートプロジェクトによる国際協力へ で、藤野先生が、日本各地の地域独自の古くからある地道でたくましい文化と、企業が仕掛ける画一的な文化もどきのイベントを、「大地に根を張った多様でたくましい草花」と、「造花、一時的な華やかさ」と、表現なさった時は、私が日頃思っていることを端的に表現して下さったと思いました。
 若い時は、都会の文化もどきのイベントに憧れることはありましたが、九州にきて、地域(田舎)の人々による、たくましく生きる草花の生命力に例えられる地域の文化に接すると、なんだこちらの方がいいじゃないと思えるようになりました。以下に藤野先生の発表のほんの一部ですが載せます。

 「日本ではイベント文化が現代社会、あるいは市民的公共性の形成と発展を妨げ、本来あるべき文化を衰退させてきたからである。1960年代からの高度経済成長、そしてバブル景気を通して、イベントとしての文化事業が全国に広がり、文化は一過性の華やかな消費財となっていった。1970年の大阪万博がその大きな転機となった。…しかしどれも画一的な一過性のイベントに終始し、お祭の後には何も残らなかった。東京に本社を置く大手の広告代理店がこれらの博覧会、イベントをプロデュースしてきたが、各地域の市民や住民がそのイベントに主体的に参加することはほとんどなかった。市民もまたクライアントとして、華やかなイベントを消費するだけだった。大地に根を張った多様でたくましい草花ではなく、見た目が美しいだけの切り花、それがイベント文化である。それでも、生きた切り花であれば、花瓶の中で数日間は目を楽しませてくれる。もっと劣悪なのは、造花だ。生命を持たない作り物によって一時的に華やかさが演出される。造花は、お葬式の花輪のように使い回しが可能なので、日本中いたるところで画一的な文化イベントが開催され、それによって地域独自の個性的な文化の衰退に拍車をかけてしまった。端的に日本の文化行政の失敗である。…文化とは本来カルチャー、つまり、人の心を耕して、その潜在能力を発揮させる営みである。(中略)質の高い芸術を創造し、発信し、享受するためには、長期的な展望に立った新しいシステムが求められる。そのためには、従来の文化消費とは異なる価値観と方法を模索しなければならない。」
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次は藤原先生です。「東アジアの歴史的環境の保全と文化遺産を活かした創造的まちづくり」と題して発表されました。藤原先生の研究者としてのスタートは1980年代初頭で、フィールドとしての最初がこの上海だったそうです。上海での調査は苦労の多いものでだったそうですが、それでも、世界中の研究仲間達による応援を得て、上海の都市形成過程の多くを跡づけることができたとのことです。
 「1840年のアヘン戦争、そして翌々年1842年に締結された南京条約から、清朝はなかば植民地化を余儀なくされますが、その際に開かれた新興の港が上海の誕生でした。」
 近年、藤原先生は文化財や世界遺産を厳格に保護し守っていくことから、疲弊した都市と地域をこの文化財の活用を通して再生していくことに心を向けていらっしゃいます。文化財をまちづくりに積極的に使っていこうとするものです。そして、近代建築・近代化遺産の活用に向けて、次の視点が重要であると指摘しました。
  「•      自分自身の誇り・矜持として理解すること。

      仲間や来訪者に自分の言葉で語り伝えていくこと。

      地元にある遺産や関連の近代化産業遺産の由来・来歴、見学する際の見所や遺産の魅力などについて、自分の言葉で来訪者が親しみわかりやすく理解できるように伝えていくこと。

      廃墟ではなく、遺産として、包括的な価値を学びとり、これらを尊重しつつ、産業の仕組みやシステムを教えてくれるものとして理解すること。

      遺産を過去から受け継ぎ未来へ手渡していくために活かしていくこと。」

 そして、文化遺産の持つ3つの効用に関しては、以下のように述べていらっしゃいます。
   

    〈文脈の再生〉Resurrection of the context

     •      これはどこから来て、どこへ行こうとしているのか?

 〈矜持の再生〉Resurrection of the pride

     •      地域固有の価値

    〈紐帯の再生〉Resurrection of the community
          •      旧来の村社会の復古・復旧ではなく新たなアソシエーションの構築へ
          •      ソーシャルキャピタル=人間関係資本
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 昼食後は、太下義之氏、野田邦弘先生、ウラジミール・クレッグ先生、伊藤裕夫先生、鬼木和浩氏が発表されました。
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 発表終了後、みなさまで夕食に行きました。1時間くらいバスに乗っていました。
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 どこへ連れて行かれるのかと思いましたら、ここでした。
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 2日目、なんだか上海に慣れてきました。
 先生たちの話を聞いて、日本側の先生たちと中国語側の先生たちの文化政策の目指す方向が違うように思えました。中国は大きな人口をかかえ、これから文化で発展していこうとする政策や実績。日本は、既に発展を終え、発展プロセスの振り返りとそれへの評価、そして今後は古くから地域に根づいている文化を見直し大切にし、活かしていこうという姿勢。
 国が違うので文化政策も異なるかと思いますが、それぞれの国の国民にとって現段階そして将来にわたってどのような取り組みや政策が必要なのか、また、どのようにしたら国民が文化に接し、心身ともに豊かに暮らせるのかを考えるキッカケを与えてくれました。

                                    岩  井










 


 

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