建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
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2015年11月8日(日)九州大学大学院芸術工学研究院 環境・遺産デザインコース
部門藤原惠洋研究室と、明治大学理工学部建築学科 都市計画講座山本俊哉・
田村誠邦・鈴木義丈研究室の合同研究発表交流会が 開催されました。
6日(金)〜9日(月)までの4日間のうち、8日(日)は福岡県大牟田市・熊本県
荒尾市両県にて共同フィールドワークを行いました。2015年7月にユネスコ
世界遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成資産の一部となった荒尾市万田坑跡、
大牟田市三池港と関連施設や、石炭産業科学館などを見学する一方で、かつて
賑わいを見せたものの閉山によって著しく衰退した大牟田の中心市街地を
歩きました。

スケジュール
  8: 40〜   九州大学大橋キャンパス出発
10:15〜 大牟田石炭産業科学館
12:00〜 昼食 高専ダゴ 船津店
13:30〜 世界文化遺産万田坑跡地見学
15:00〜 学生バス乗車 三井港へ移動
15:30〜 三井港見学
16:00〜 三井港倶楽部
16:30〜 大牟田市内新栄町界隈へ移動 中心市街地のフィールドワーク 
18:00〜 学生バス乗車。大橋キャンパスへ帰還


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石炭産業科学館
 九大大橋キャンパスから出発した一同は石炭産業科学館に到着。石炭産業の歴史を
学びます。通称、石炭館と呼ばれる施設は全国の旧産炭地に各地存在しますが、
なかでも大牟田は三井三池炭鉱の足跡を辿り、近代炭鉱を中心とした展示となって
います。 石炭産業科学館で勤務され、NPO法人大牟田・荒尾炭鉱のまちファン
クラブの元理事長でもある中野浩志さんにガイドをいただきました。
そもそも石炭とは一体何か?なぜ燃えるのか。石炭の種類や燃料としての種類、
用途、どこに埋まっているのか。どのようにして採掘するのか、といったことなど
実は知らないことだらけです。そのような基礎から始まり、三池炭鉱の地形や歴史、
繁栄を極める一方で、常に生み出され続けた様々な暗い歴史といったものも
学ぶことができました。
この日は大牟田在住の芸術家、梅崎弘さんを中心に3年目となる炭都国際芸術祭の
展覧会がオープンしたばかりで新しい展示も行われていました。
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昼食は高専ダゴ!
昼食は高専ダゴをいただきます。ダゴとはお好み焼きのことで、大牟田人の
ソウルフードです。名前の由来は有明高専にもとづき、産炭地に欠かせない
技術者・技能者育成を目的に創立された国立高等専門学校の近くで開店していた
ダゴ屋さんが、昭和40年代に有明高専の学生にたっぷり安くお好み焼きを
食べさせようとして、どんどん大きくなっていたという由来があります。
元々のお店が有明高専の近くにあったことからそのまま名前が付いています。
有明高専の学生の他、炭鉱マンやその子ども達もよく食べていたこのこと。
大きさ縦30cm×横50cmくらいの鉄板を覆い尽くすほどのお好み焼きを
ひっくり返す瞬間は歓声が上がりました。

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国指定重要文化財 世界遺産構成資産 荒尾市 万田坑跡
午後は荒尾市万田坑跡を見学。 明治35年(1902)年、三井鉱山が模範炭鉱となるよう
総力を挙げて建設し、第一立坑は 当時わが国において最大規模のものでした。
現在、第一竪坑は坑口以外現存せず 第二竪坑、安全灯室、浴室、扇風機室、
ポンプ室、倉庫、職場などが現存します。 こちらでは万田坑ファン倶楽部の会長、
瀬戸洋さんにガイドをいただきました。三池炭鉱の中での万田坑の位置付けや、
日本の中やアジアの中での万田坑の位置付けといった全体的な歴史に触れる一方で、
施設の一つ一つの作りや役割、時代の変化に伴う技術革新の様子なども語って
いただきました。 明治大学の先生方は、建築や都市計画専門ということから、
その保存管理状況や遺産としての運営方法などに興味を持たれていました。


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世界遺産構成資産 三池港
石炭の積出港として整備された三池港は1902年から干拓などの工事が始まり、
6年の歳月をかけて1908年に開港します。それまで三池炭鉱は、遠浅の有明海に
運搬船を接岸させることができず、一度対岸の長崎県島原市口之津に小型船で運び
そのあと大型船に石炭を積み替えることで上海・香港に輸出していました。
この手間を省き、直接三池から輸出することが可能となるように、築港することと
なりました。 初代事務長の團琢磨によって、イギリスの各産炭地の港を手本に
造られた港は、100年経った今でも現役で稼働している大変貴重な港です。



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 市指定文化財 港倶楽部
港倶楽部は、1908年に團琢磨が三池港の港湾整備を行ったと同時に建設され
外国高級船員の宿泊や接待、皇族や政財界人の迎賓館として広く利用されました。
当時の贅を尽くしたとされる港倶楽部には、伊藤博文や井上馨など日本を代表する
人物の書や昭和天皇が行幸された際の貴重なお写真などが残っています。
ハーフティンバー調の建築からは船旅の疲れを忘れさせるような別荘のような
雰囲気が漂っています。館内のご案内は藤田さんにいただきました。
一時期は炭鉱閉山によって解体の危機に面するも、一口株主を募り、市民主体の
経営団体が発足し乗り越えることができました。現在は総合結婚式場、レストラン
として営業しています。 



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大牟田の中心市街地散策
最後は大牟田の中心市街地を散策しました。大牟田の中心市街地は江戸時代、
大牟田川沿いと、国道208号線が交わる場所あたりに石炭問屋の橋本屋があった
ことで商店が集まり、やがて鉄道の開通などに伴って著しく拡大してゆきました。
人口のピークは1960年に20万人を突破するまでになりますが、現在は11万6000人
と半減しています。中心市街地は1970年代にピークを迎えますが、現在はその
大半が閉店し、かつての名残を残したまま風化が著しくなっています。

この日はお父様の代から運営されている古書店、古雅書店の古賀知行さんに
当時の銀座通り商店街の賑わいや暮らしなどをお話いただきました。
古雅書店では大牟田周辺の歴史文化に関する書籍や、産業遺産に関する書籍を
中心に販売されていらっしゃる他、郷土の歴史本の編集・出版もされています。
また、1960年代に開店し、三井三池炭鉱専用の接待キャバレーとして運営
されていたFUJIに立ち寄りました。ここは現在、大牟田出身の竹永省吾さん
によって、バーやライブハウスとして運営されています。当時の様子がそのまま
残るお店は雰囲気のある空間となっていました。



今回のフィールドワークでは石炭産業によって興隆し衰退した一地方都市の
現状を把握することができました。万田坑という石炭産出の場から輸出を
担った三池港といった産業システムとしての全体性、炭鉱操業時の光と影、
そして閉山後に世界遺産として賑わう炭鉱遺産とその一方で寂れている
市街地の現状など、そのコントラストは非常に強烈なものでした。
明治大学の学生の中には都心出身の方も多く、地方の衰退ぶりを初めて
目の当たりにするといった感想もありました。また中心市街地の衰退は全国的な
問題となっていますが、その中でも著しい事例だということを聞いて、大牟田
在住の私は驚きを感じました。地域の歴史文化を踏まえながら、地域の中に
人々がもう一度と集える場をどのように創出してゆくべきか、今一度考える
機会となりました。
この日ガイドやご案内をしてくださった石炭館の中野さん、万田坑ファンクラブ
の瀬戸さん、港倶楽部の藤田さん、古雅書店の古賀さん、大牟田ふじの竹永さん
本当にどうもありがとうございました。

國盛

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