建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
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 熊本学園大学水俣学研究センター2015年度第12期公開講座「九州・熊本の産業遺産と水俣」の一環で、
旧日本窒素肥料株式会社水俣工場の建物内部を見せていただきました。
  
   日程:2015年11月3日(火)13:00~15:00
   場所:旧日本窒素肥料株式会社水俣工場
   参加者:約80名
 
 この公開講座チラシより

 「水俣にも1908(明治41)年操業を開始した旧日本窒素肥料株式会社水俣工場の建物が残っています。現在は、(株)江川の水俣工場として活用されています。水俣でもあまり知られていませんが、これは水俣の近代化を進めた貴重な建物です。そこで私たちは、産業遺産とは何かを学び、熊本そして水俣の産業遺産を見直したいと考えました。」

 福岡から水俣までは以下の行程で行きました。新幹線を使いませんでしたので片道4時間かかりました。
    大橋~大牟田:西鉄大牟田線
    大牟田~八代:JR九州鹿児島本線
    八代~水俣:肥薩おれんじ鉄道(土日祝限定わくわく切符で行きました。)

 写真は、おれんじ鉄道の車両です。たまたまこの車両でした。
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 水俣駅で釜さんという駅員さんに道を教えられ、集合場所の公民館玄関前(図書館と同じ館)までその通りに行きました。
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 集合時間の午後1時には沢山の方々が集まっていました。
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 これから旧チッソ工場に向かいます。
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 ここです。到着しました。
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 南側
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   レンガの建物があった跡。
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   東側。建物の長さは40m。イギリス積み。柱と柱の長さが違います。目地はモルタル。このアーチ状のものは以前は窓で、縦長。これは洋風建築の特徴で縦長窓にしないと強度が弱いそうです。
 目地は、はじめは 漆喰、後にセメントになりました。横にずれるのを防ぐ役割。
 
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         ↓今回この旧日本窒素肥料株式会社水俣工場の建築についての解説をして下さった磯田桂史・熊本大学五高記念館客員教授・熊本近代建築研究所所長です。
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 昔の商業や銀行の建物は塔を立ち上げて装飾しているのが特徴で、この旧工場にも似た特徴がみられます。
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 西側に移動します。
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 その前に北側の壁は32mあります。
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 西側から入ります。

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 ↓の写真の右側が先ほどの東側壁と反対側の西の壁になります。ここは増築した木造資材置き場。
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 この穴を入っていくと工場です。
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西の壁↓。 
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 穴を通ってでてみると、このような大きな空間。窓が北側。
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 こちらは↓南側をみているところ。
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 太い柱はありません↓。H型のが4つ。
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 これが一番丈夫そうなものでした↓
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 ↓写真右が東の壁、奥が北側の壁。鉄骨の小屋組み。陸梁。柱は必要ないらしいですが、「地震が来たらどうなるのだろう」と若干こわいです。
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 南側を向いている。北の部分は鉄骨だったけど、南の小屋組みは木でした。屋根のこう配が違うとのことで、後からのものだということです。
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 【このレンガはどこから持ってきたのですか?」と磯田先生に聞いてみましたところ、直接はわからないが、この近くで煉瓦をつくっていたのは宇土の自助社と、八代の会社でそこからもってきたのではないかということでした。
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 昔のお風呂です。↓
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 市原猛志さん(九州大学百年史編集室助教で、近代化遺産、産業遺産に詳しい)が来ており、このレンガを「からみ煉瓦」(精錬廃棄物の煉瓦)とし、珍しいということをはなされました。
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 右が熊本学園大学水俣学研究センター長の花田昌宣先生、左が熊本学園大学社会福祉学部福祉環境学科の中地重晴先生。
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 花田先生は、この建物の歴史を固めてストーリーをつくっていきたいと話されました。
 この建物は壊される予定とのことです。現在、市民参加の会をつくるための準備会をつくっています。

 この後、私は徳富蘇峰の生家を見学して帰りました。
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 水俣と聞いて、まず、やはり、小中学校の社会科で学んだ水俣病が心に浮かびます。水俣病は、小中学校時代の「水銀のたまっている魚を人間が食べたことによりおこる病気」、日本の公害病の一つくらいのことしか覚えていませんが、この水銀(種類はわかりません)を排出した工場が本日見学したこの工場です。今回その地を訪れてみて、普通の工場、それほど大きくない工場だったのではないかと思うようになりました。この穏やかな不知火の海に以前は水俣病の問題があったとは想像できません。

 水俣病について正確な情報を調べてみますと環境省水俣病情報センターがでてきますので、そこから水俣病のあらましと社会的背景を書きます。
 「水俣病の原因企業は、チッソ(株)(水俣工場)と昭和電工(株)(鹿瀬工場)です。両者は、第2次世界大戦後の復興に続いて高度経済成長のさなかにあった日本を支え、 発展させる原動力の役目を担っていた化学工業分野の企業です。

 なかでもチッソは高い開発力を持ち、独自の技術で次々と生産設備を更新して製品の増産につとめました。 チッソの成長に歩調を合わせるように水俣の町も急速に発展を遂げました。 そして、工場と従業員の納める税額が水俣市の税収の50%を超えるなどしたため、チッソは地域の経済や行政に大きな力を持つようになり、 水俣はいわゆる企業城下町へと変貌しました。

こうして地域社会の支持を受け、安い労働力、豊富な用水、自前の発電力そして天草の石灰岩や石炭など手近にある原材料を活用し、 また廃棄物や廃水の処理についても優遇されていたので、チッソは増産を重ねることができました。一方で労働環境や自然環境への配慮は後回しにされていました。」



 現在は、水俣病事件をこえて、水俣学というものがあるとのことです。水俣学とは「水俣病事件を医学、生物学、生態学、工学など自然科学の分野ばかりでなく、社会科学的な分野も含め、多面的、総合的に学ぼうとするものである。そして、そこから普遍的な環境、福祉、生活、教育、学習、行政などのあり方を探ろうとするものである。」藤原書店PR誌「機」2004年4月号により。

 現在の私個人の旧チッソの工場への認識は、「日本の近代化に貢献しそして後年公害も起こした。」というところで止まっております。あの建物はどのような歴史を背負ってきたかや建物としての価値が全て解明されることと思います。あの建物に新たな活用法が見つかればと思っています。

                                岩   井
























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