建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
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   日時: 2015年10月28日(水)18:30~20:00
   場所:  福岡アジア都市研究所会議室
   人数: 30名くらい

 平成27年度第2回都市政策資料室ミニセミナー

 「小さな本屋がつなぐ人とまちー書店ブックスキューブリックの試み」
 
 講師:大井実氏(福岡けやき通り&箱崎の小さな本屋ブックスキューブリック店主)

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 ブックスキューブリックとは、福岡のけやき通りと箱崎にある書店です。大規模ではありません。ゼロからはじめた本屋さんとのことです。店の名前は、映画監督のスタンリー・キューブリックからで、2001年から店を始めるにあたって連想したのが、映画「2001年宇宙の旅」だったそうです。

 こんなキューブリック店主の大井さんは以前は商社にお勤めでした。時代はバブル真っ只中。多くの人が実在の己より自らを大きく見せようとしていたのが嫌になり、会社を辞め、紆余曲折を経て、2001年39歳で独立開業しました。「多忙な社会人のコンシェルジュ」がテーマ。
 箱崎店は2008年開業で、2Fカフェで展覧会やイベント、トークショーなどを頻繁に開催。飲食・雑貨・文化催事などとの複合実験なのだそうです。
 また、作家さんも書店数店で交通費をだしてよぶとのことで、作家さんにとってもイベントは絶好のPR手段で、お客様との強いきずな形成に役立っており、文化発信を通じて地域コミュニティの核になることを試みていらっしゃいます。
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 2006年からは、ブックオカを始めました。ブックオカとは、ブック+福岡で、「福岡を本の街に」がコンセプト。福岡の本に関わる人々、本好きが集まってけやき通りで行われる「一箱古本市」を中心に行われるイベントの総称で、作家を招いてのトークショーや書店共同の文庫フェアなどがあります。
 大井さんは「本に親しむきっかけや風潮づくり」にしたいとおっしゃってます。

 開業に至る経緯として、福岡生まれで転校生・引っ越し20回、子どものころから本好き、万博は5回行っているそうです。ラグビー、映画、ロックはブルーススプリングスティーンが好き、新潮文庫もよく読まれていたそうです。大学は京都に行き、就職は商社でした。イタリアで彫刻家の安田侃さんと出会い、安田さんのイタリアでの大規模野外展覧会の手伝いをしたとのこと。
 
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 ーこの8月末に実家の近くのアルテピアッツア美唄で偶然安田侃さんに出会い、お話をしましたが、福岡で安田侃さんを手伝ったことのある方と出会えるとは思ってもいませんでした。

 【ところで大井さんはなぜ本屋を開業したのでしょうか。】
  ・文化に関わることを一生の仕事にしたかった
  ・身近な文化の窓口、居「場」所つくり
  ・商売=実業への憧れ
  ・イタリア体験
  ・自分の興味関心・過去の体験からの考察

 特にイタリアでの体験が強烈のようです。イタリアでは、野菜一つ買うのにも商店で、ゆっくり、店の人と話をしながら買います。食べ物とサッカーとワインと家族と友人知人、これらを大切にする人々に触れ、商店の重要性を感じました。

 【特にイタリア体験が転機とのことで】
・イタリアの中世都市国家・劇場型都市における演劇的高揚感
・人々がつどう飲みどころバールの機能、そしてパッセジャータ(散歩)がある。
・小さな店の個性によって成り立つ街の魅力がある。
・オーダーメイド型の街の人・もの・こと、人々の距離感の巧みさ
・優先順位としては、家族→友人→事業所→都市→国家の順「アンチグローバリズム」
・スローフード運動(地産地消、自販機・コンビニ無し、劇場、サッカー場)
・経済が悪くても楽しい生活
 →大井さんがイタリア人に「イタリアは景気が悪いのではないか」と言ったところ、「な~にナポレオンがきてからずっとだよ」という答えが返ってきたとか。ー私は素早いウィットある対応に感心しました。

 【本と人と街の関係について】
・全国でシャッター街がある
・ビジネス視点(利益・効率)だけでは、社会は良くならない。
 例:体育の日はハッピーマンデーとなり、単なる休日のようになってしまった。休日は増えても日がもつ本来の意味は薄れてしまった。
・右手に志、左手に算盤
・コミュニティ再生の為に、文化縁が有効と考える。
・本屋は地域の縁をつなぐ文化インフラ(文化の旗振り役)
・本屋の持っている力を再認識→ビジネスを超える

 【地域の拠点としてのブック&カフェ】
・本が持つ力で人と街を繋げる
・最初は自分の居場所つくり、徐々に社会的意義
・実業ばかりを重視する社会的風潮に対する草の根的拠点
・書店仲間がいる
・作家のトークツアーの拠点になる
・まちライブラリーをつくりたい
・独立系書店のネットワークつくりに役立つ


 【地方の時代を実現化するために】 
・低成長・少子高齢化時代に豊かさをどう実感するか。
・地方は文化的インフラ、文化に親しむライフスタイルが不足している。
・地方に一旗揚げに行く時代に
・d design travelは現代の民芸運動
・自らの資源を再認識・拡大再生産を目指さない・固有の価値を発見
・地域の小さな書店は地域文化の砦を再生、地域活性化の核、日本の地方を変える
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 この他、大井さんから、様々なほんの紹介もありました。私が読んでない本ばかりで、書名のみ挙げます。

 レイモンド・マンゴー「就職しないで生きるには」
 パウロ・コエーリョ「アルケミスト~夢を旅した少年」
 井上ひさし「ボローニャ紀行」←大井さんによりますと、下手なまちづくり本よりは、よっぽど良いとのことです。
 島村菜津 「スローシティ~世界の均質化と闘うイタリアの小さな町」
 須賀敦子「コルシア書店の仲間たち」←大井さんオススメでした。

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 最後にイタリアの作家・児童文学作家のジャンニ・ロダーリの言葉が紹介されました。

 大井さんの話を短時間ですが聞いてみて、私が考えるこれからの図書館像と共通していると思いました。

 地方の文化のけん引役、自立と工夫とアイディアで人を繋ぎ、居場所をつくり、知の再生産や創造の場にする。

 図書館は書店の敵ではなく、日本の文化の一端を担う役割を持っている者同士であると思えました。

                             岩  井

 
 
 





 
 

 







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