建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
IMG_9574 
  2015年10月27日(火)11:00~
 
 佐賀県伊万里市にある伊万里市民図書館を訪問しました。

 図書館対応者:古瀬義孝館長

  主催者: 「身近に図書館がほしい友の会」代表:力丸世一さん

  参加者:力丸さんご夫妻、中島さん、島谷さん、小田さん、長谷川さん
       福岡市義(西区)池田良子さん、福岡市義(東区)森あや子さん、私、岩井です。
IMG_9736
IMG_9737
IMG_9739
IMG_9740
 古瀬館長からお話を聞きました。以下は資料から基本情報。

 建設時の目標「伊万里をつくり・市民とともに育つ・市民の図書館」

 → 市民とともに育つ =人が育ち町が育つ拠点としての図書館

 現在の図書館が開館したのが、平成7年7月7日
 敷地面積は7692.14㎡、建築面積が4053.96㎡、延べ床面積4374.51㎡、
 鉄筋コンクリート 一部鉄骨 平屋建 一部4階。

 設計:寺田 大塚 小林計画同人
 総事業費 23億6480万円(設計費含む)
 財源:地方債1,661,700千円(まちづくり交付金70%補てん)
     積立金650,000千円  一般財源53,100千円
 職員:職員6名、嘱託8名、臨時4名

 開館時間 火曜日から日曜日  10時~18時   金曜日10時から20時

 現在の蔵書39万点

蔵書収容能力  1階開架17万冊、2階開架書庫10万冊、3階閉架書庫20万冊

図書館システム 書誌情報は、TRCマーク  
           システムは、富士通アイリス・フィエラ 2012年10月更新

予算 当初予算25年度は1億12百万円   資料費は1千8百万円
       
IMG_9497

 【沿革】など

  この図書館が建てられる以前は、公民館2階の図書室で、登録者数が2千人。(以前の市立図書館は昭和29年~平成7年まで)。これでは子や孫に図書館とはいえないものを残すということで、昭和61年に図書館作りを進める会ができ、バスをしたててあちこち見に行き、理想の図書館、自分たちが目標としている図書館を見つけにいったそうです。
 
 今では当たり前ですが、市民(女性や子どもにも)に移動図書館を通じて、本の貸し出しを推し進めた日野市立図書館のようにしたいという思いから、平成3年6月に移動図書館ぶっくん1号の巡回開始。ぶっくん2号は平成5年4月巡回開始。
 平成4年4月に図書館建設準備室を設置。
 平成5年6月から平成6年2月まで、「図書館づくり伊万里塾」(勉強会)を8回開催。
 平成6年2月起工式、設計者説明に市民200人が参加
         ぜんざい200食を「図書館づくりをすすめる会」が用意し、祝う。
 平成7年4月図書館の引っ越しを市民200名が手伝う。
 平成7年7月7日開館  9月井上ひさし開館記念講演会。

 その後も、毎年2月は、めばえの日として、ぜんざい200杯を市民に振る舞い、一緒に祝っているそうです。            (今では、300杯になったとのこと)

 ※雇用に関して:嘱託を雇うに当たっても、雇止めはしない、報酬は上げる、産休育休は与える ということです。
=====================================

 伊万里市民図書館には、「図書館フレンズいまり」という図書館支援市民活動団体があります。
 これは、「図書館づくりをすすめる会」がひきつづき、活動しているもので、
 現在の会員数は392名、年会費1000円、
 目的は、図書館活動に協力、提言し、市民のための図書館であり続けるよう、守り育てる。

 活動内容は、①講演会などの企画実施  ②図書館の支援協議提言、③図書館ボランティアの活動支援他

 特に③、伊万里市民図書館には布絵本ボランティアなどいくつかのボランティア団体が入っています。例えば布絵本をつくるには、その布を購入するということが必要です。この布代の一部をこの「図書館フレンズいまり」
が支援してくれるのだそうです。ボランティア団体で一番困るのは、必要経費、実費などのことですが、これを図書館フレンズいまりが出してくれるとは!ボランティアを支援するボランティアという発想が素晴らしいと思いました。

 この他、図書館の草刈りをしたり、図書館を連動した商店街とのスタンプラリーに取り組んだりするそうです。

=====================================
 
  -伊万里市民図書館は本当に画期的だったと思います。まず、行政が市民の意向を取り入れたということ、そして、この図書館の建築をみてもわかるのですが、設計者が伊万里の土地柄を理解し、市民が愛着をもてる意匠にしたというところです。(他にも工夫が凝らされています)。私は北海道にいた時は、図書館は行政から与えられるものだと思っていました。
 市民が志をもち、なんとかしようと自主的に動き、勉強会をし、専門家の説明を聞き、意見を言い、引っ越しを手伝うという自主の精神があるものだということを九州に来て初めて知りました。
 自分たちのことは自分たちで決めて動くという民主主義の原点、そして、自由な活動および図書館ができてからも引き続き支援するという責任を知ることができました。
 
IMG_9500
 この図書館には、150席のホールもあります。このように何もない空間で、新春カルタ大会もできるし、上から階段状の座席が下りてきて、講演会もできます。2階には赤ちゃんや幼児がお母さんと一緒に講演会などをみることができるスペースもあります。
IMG_9506
 ↑これはこの戸の開いた部分を使って人形劇をする仕掛けです。左側には背景をかけるのにつるバトンもあります。

IMG_9510
 図書館つくりに関わった人たちの名前。現在の古瀬義孝館長は当初は市役所職員として関わりました。
IMG_9515
 ↑ここも上からテント状の覆いが設置されています。
IMG_9517
 ボランティアルーム。奥の戸をあけると色んな団体の作品や使う道具が収納されています。
IMG_9516
 ギャラリー↓
IMG_9518
 ギャラリーの前の空間。このポチポチの透けた仕切りで、人がいるのがわかるというのが、個人のスペースのようなパブリックのスペースのような感じで良いです。
IMG_9520
 この自販機は、フレンズ伊万里が電気代3000円を図書館側に支払い、ここからの収入は図書館フレンズいまりへ入り、それが活動や支援の資金に使われます。
IMG_9524
 ↓図書館の近くには食事ができる場所がなく、ここの喫茶室でカレーライスなどを食べることができるというのは、滞在型図書館ならでは。
IMG_9526
 ↓この新聞棚の新聞は図書館の保存用ではなく、切抜き用とのこと。図書館が開館するのが10時。それまでは図書館に入るとことはできません。しかし。それより前にこの喫茶室が開き、この新聞も自由に読んでいいのだそうです。ここの新聞は購入ではなく、新聞社から寄附していただいているのだそうです。
 熊本県菊池市の図書館をつくる市民の会の事務局長の井藤さんから、「図書館は夜遅くまでしなくてもいいから、朝早く開けてほしい。という希望を聞いたことがあります。」年配の方、会社をリタイアした組にとっては、朝早く行く場所があった方が良いということを実践しています。
IMG_9530

 図書館フレンズ伊万里の事務室。↓
IMG_9522

IMG_9527
IMG_9528
 この図書館では半分くらいの空間にオルゴールのBGMがかかっています。この日は私の好きな映画音楽。
IMG_9536

 ↓はカウンター。伊万里市民図書館には3つカウンターがあります。一般貸出しカウンター、児童図書貸出しカウンター、レファレンスカウンター。出入り口が広く司書さんはすぐに書架に出て対応してくれます。

 ここの図書館を使って勉強して企業した人がいます。個人的に以前来た時に、出会った、福島徹さんです。
会社を退職された後、ここの図書館で勉強して、様々な本を読み、家庭用小型風力・水力発電機をつくり特許を得ました。図書館がビジネス支援を下といえます。福島さんは図書館に毎日のように来るので、職員さん達にもよく知られ、愛されています。。この日は「福島さんはいますか?」と職員の方に聞いてみたのですが、残念ながら福島さんにあることはできませんでした。
IMG_9548
IMG_9533
 泣けてくる図書館設置条例↓。今の日本で必要な要素が入っています。
IMG_9534
 新着本
IMG_9535

IMG_9550
 TPPや原発の特別コーナーをこんなに広く設置。
IMG_9540
IMG_9541
IMG_9542
IMG_9543
IMG_9545
 館長室はスケスケのガラスです。
IMG_9563
書架へ移動。
IMG_9566
この有田焼の置物は↓、本の正面を出して見せるのを支える道具、棚には溝がありますが、ここに正面に向けた本を置きます。
IMG_9552
IMG_9561
IMG_9557

 書架と書架の間の通路は、車いすと人ひとりが通れるだけのスペースがあります。書架の高さは146㎝。この図書館のために特注してつくってもらったそうです。そして、書架の間にはこのような椅子があります。椅子の背のボードは、裏側に回ると特集本の陳列スペース。
IMG_9553
IMG_9554
IMG_9565
 レファレンスカウンター。
 そしてこの先の図書スペースを利用できるのは高校生と社会人。ゾーニングができていると思います。
 ここには先ほどのBGMは聞こえてきません。
IMG_9569
IMG_9573
 こんな表彰状発見。国立国会図書館の協同レファレンスデータベースに多くの事例が採用されたということの表彰。非常に優秀です。私も北海道で司書として働いていた時、このデータベースに一度採用されたことがあります。農業関係でした。↓
IMG_9570

IMG_9574
IMG_9575
IMG_9578
 伊万里市民図書館は、このような絵画の貸出もしてくれます。以前訪問した時、聞いたのですが、家庭訪問がある場合、お客さんがある場合にこの貸出し絵画は利用されるようです。
IMG_9585
IMG_9591
 ここは地域の人の「書斎がほしい」という要望に応えてつくられた部屋。伊万里学の部屋です。
IMG_9595
IMG_9594
IMG_9597
IMG_9599
 図書館には禁止のことをストレートに書いて壁に貼ることが多いのですが、(あれやっちゃいけません、これやっちゃいけません等)ここは、館長に聞くと、大人の人が使うところなので、そのような子供じみた表現はやめようということになり、笑いを取り入れた表現になっています。
 日本にある図書館の多くに、図書館の壁に 「〇〇禁止」とか禁止事項張り紙が陳列してあるのをみると、子供じみていて嫌な気持ちになっていましたが、ここは違うのですね。 
 大人の扱いをしないと、日本の若い人はいつまでたっても大人になれないと思いました。
IMG_9598
IMG_9601
 伊万里が輩出した偉人達。
IMG_9603
IMG_9602
IMG_9608
 雑誌コーナー
IMG_9611
IMG_9612
IMG_9615
IMG_9616
 こちらは中高生のコーナーです。勉強もできます。
IMG_9618
 中高生のコーナーです。イラストを描くのが好きな人が多いとのことで展示をしていました。
賞をだしているそうです。↓
IMG_9619
IMG_9624
IMG_9626
IMG_9627
IMG_9628
 子どものコーナーです。↓
IMG_9636
IMG_9639
 この木はツクリモノですが、シンボルツリーです。伊万里は伊万里焼の出荷地。イスノキの意味はよくわかります。
IMG_9640
IMG_9643
IMG_9645
IMG_9647
IMG_9651
 紙芝居もたくさんありました。
IMG_9667
IMG_9652
IMG_9664
 お話部屋へ。
IMG_9666
 お話部屋。登り窯をイメージしてつくられてます。ここで読み聞かせをするのですが、この中には子どもはもちろん大人もよろこぶ仕掛けがありました。
 この丸い球は、いわばバトンです。ここに背景を吊り下げることができるそうです。
IMG_9654
 そして、天井はこの天の川と星座たち!おうし座の足元を流れ星が流れています。流れ星は本当に移動します。
 これがあったから伊万里市民図書館の開館日を平成7年7月7日にしたと古瀬館長。
IMG_9656
IMG_9657
IMG_9660
 白の穴あきボードはこのように絵本をたてて、絵の美しさを見せることもできます。
IMG_9669
 古瀬館長に質問をする池田良子・福岡市義。
 私ももっと質問をしたかったです。古瀬館長によるとこの後、まだ、視察が入っているとのことでした。
 お忙しいところ2時間以上、私たち一行のために時間をさいて下さいました。お陰で伊万里市民図書館の魅力がさらにわかりました。
 図書館をつくる過程、その後の運営、一市民として感激するばかりです。
IMG_9671
 この日は小学生が社会見学に来ていました。
IMG_9673
 子どものコーナーにはトイレと授乳室、そしてピアノもあります。
IMG_9681
IMG_9734
IMG_9713
IMG_9724
IMG_9675
IMG_9678
IMG_9682
IMG_9683
IMG_9686
IMG_9693

IMG_9696
 この図書館にはテレビや将棋盤もあり、年輩の方が楽しんでました。
IMG_9690
 この中の男性に尋ねてみたところ、千葉から視察に来た議員団だそうです。千葉には以前、貸出冊数日本一だった有名な浦安図書館がありますが、それでも九州・佐賀県の伊万里市にきたのですね。20名くらいの一行でした。
IMG_9730
IMG_9704
 中庭の様子↓
IMG_9705
IMG_9706
IMG_9708

 喫茶室で振り返りの会。
IMG_9697
IMG_9698
IMG_9699
 ・図書館のある意味を考えさせられた。
 ・市民の声を取り上げる図書館に感激した。
 ・このような図書館を継続して運営していくことに意味がある。
 ・理念をみることができる。
 ・各図書館は連携すると生きる。
 ・読書教育の保障機関。
 ・愛情を感じる図書館
IMG_9736
 伊万里市民図書館のこのファザードは、伊万里焼を出荷した伊万里港をイメージしているとのことです。そして、図書館玄関に入るまでのアプローチが長く、この間に外界から気持ちを切り替えるのだそうです。
IMG_9737
 築山の様。
IMG_9740
IMG_9742
IMG_9739
IMG_9745
 館長から説明を受ければ受けるほど、感激する図書館です。今回は見ませんでしたが、移動図書館2台がいつも走っています。図書館を利用するのが不便な地域に移動図書館は行きます。伊万里市民図書館のベースの考え方「全域平等サービス」を実現しているのです。職員の方の労力は大変なものであろうと想像します。しかし、それでもする、この姿勢に心を打たれます。

 本当はこの図書館は隅々まで配慮が行き届いているのだけれど、それをギャンギャン大声で声高に叫ばず、静かに市民を支えているという姿勢が感じ取れます。

 ここを利用する子供たちは、大きくなったらこの図書館で育てられたという感覚を持つのではないか、そんなことを感じてしまいました。

 他の地域の図書館活動をしている方から、「市民ののぞみを取り入れてくれる図書館がいい」という意見を聞いたことがあります。使いやすいように、より良い図書館になるように意見をいう一方、図書館の職員では人手が足りない草刈などは市民が支援する。私を含め、一般の市民は図書館が完璧であるとは思っていません。足りないところはお互いが補い合って、地元の人々を大切にして、個人のアイデンティティが地域の歴史や文脈につながることを証明できる機関としての役割が重要なのではないかと思います。便利さだけを求めているのではなく、一人ひとりのそれぞれ違った愛着が持てる図書館が求められていると思うのです。

 またこの図書館に滞在した短い時間の中でも、ベビーカーに乗った赤ちゃんとおかあさん、目の不自由な人、年輩の男性たち、小学校低学年の児童という社会的立場の弱い方々と会いました。赤ちゃんや児童は声をあげるのですが、ゾーニングで分けられていることやオルゴール音のBGMがあるお陰で、勉強に集中したい人を妨げません。
 岐阜県可児市の文化創造センター<アーラ>の館長・衛紀生氏は、「我々は興行師はない。」といい、このアーラのことを、「人間の家」と表現しました。若者がこの劇場でフツーに勉強し、人々がフツーに集っているのを私は実際に見ました。

 伊万里市民図書館も、図書館ではなく、人間の家になってほしいです。フランチャイズ店図書館は厭きます。そして、嘘が多いように思えて仕方がないのです。新しい雑誌を購入できるなど便利なところがあるかもしれませんが、そこに私という利用者のアイデンティティは存在しないです。利用している人間のアイデンティティが感じられない図書館は感激しないし、人間の家にはなれません。これからの地域に求められているのは、派手で息の続かないパフォーマンスではなく、地味で地道に人々を受け入れ、人々のところに赴くことをいとわない「人間の家」だと思います。

                                  岩井千華

                        


  

Add Comments

名前
URL
 
  絵文字
 
 
livedoor プロフィール
『日田ラボ』 最新記事
『きくけん』 最新記事
カテゴリ別アーカイブ
月別アーカイブ
記事検索
ギャラリー
  • 第8回九州大学図書館創造研究会を開催します!2018年1月19日(金)
  • 韓国・済州島・西帰浦市の李仲變芸術通りを歩きました!
  • 韓国・済州島・西帰浦市の李仲變芸術通りを歩きました!
  • 韓国・済州島・西帰浦市の李仲變芸術通りを歩きました!
  • 韓国・済州島・西帰浦市の李仲變芸術通りを歩きました!
  • 韓国・済州島・西帰浦市の李仲變芸術通りを歩きました!
  • 韓国・済州島・西帰浦市の李仲變芸術通りを歩きました!
  • 韓国・済州島・西帰浦市の李仲變芸術通りを歩きました!
  • 韓国・済州島・西帰浦市の李仲變芸術通りを歩きました!
  • 韓国・済州島・西帰浦市の李仲變芸術通りを歩きました!
  • 韓国・済州島・西帰浦市の李仲變芸術通りを歩きました!
  • 韓国・済州島・西帰浦市の李仲變芸術通りを歩きました!
  • 韓国・済州島・西帰浦市の李仲變芸術通りを歩きました!
  • 韓国・済州島・西帰浦市の李仲變芸術通りを歩きました!
  • 韓国・済州島・西帰浦市の李仲變芸術通りを歩きました!
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ