建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
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 2015年8月8日(土)9日(日)公開講座の学外演習「天草・長崎で遺産即興詩人になる旅」が開催されました。


【趣 旨】

前期公開講座『世界遺産の歩きかた(その1)思想・文学・技術・演劇・絵画を通した遺産即興詩人入門』は「日本の特に九州が有する豊かな世界遺産の構成資産群を対象としながら、顕著な普遍的価値への理解を深めると同時に遺産価値と相互に影響しあった思想・文学・技術・映像・演劇・絵画を通して、より魅力的な遺産の歩き方を習得していく」というものです。

 第1回は、「大牟田・荒尾の三井三池炭鉱遺産と宮崎滔天・孫文の革命思想」

第2回は、「軍艦島を対象とした映像作品をふりかえる」

第3回は、「グラバー邸・大浦天主堂・オランダ坂を築いた天草棟梁と下浦石工」

第4回は、「世界記憶遺産山本作兵衛炭坑画と香春岳アート」

第5回は、「八幡製鉄所の鉄都が生んだオールターナティブ演劇」

第6回は、「天草の崎津天主堂・大江天主堂と『五足の靴』文学紀行」



藤原惠洋先生より

「世界遺産のサイトに行くと、日頃とは違う感性や感動が私たちの中に生み出されてくるのではないでしょうか。そこで、こうした非日常的な力に喚起されながら、いろいろな仕掛けを考えてみました。世界遺産×思想、世界遺産×文学、世界遺産×技術…と弁証法でやってみるのもおもしろいのではないか、と考えたのです。

私たちを取り巻く日々の社会や世界には、旧態依然とした世界を軽々と飛翔して超えて行く想像力や、社会の矛盾や課題に立ち向かう際に大きな勇気を与えてくれる力がまだまだたくさん隠されています。私たちは、そうしたもうひとつの力をどのように獲得していったら良いのでしょうか。今回の公開講座の大テーマには、世界遺産に触発されて生み出されるもうひとつの潜在的な力の喚起という期待が組み合わされています。」


【五足の靴とは】
「1907年(明治40728日から827日まで、九州西部中心に約1ヶ月旅した、5人(与謝野寛、北原白秋、木下杢太郎、吉井勇、平野万里)による紀行文。その年の東京二六新聞に旅程より10日ほど遅れて87日より910日まで、5人が交互に執筆して、29回にわたり連載された。」
 

【旅 程:88日(土)】

9:00 九大大橋キャンパス集合・出発

1)天草を知る

12:30 天草キリシタン館見学
13:15 昼食 肴菜屋 赤こしょう 

2)天草石工の故郷・下浦探訪

14:30 下浦地区で弁天様などを見学

3)世界遺産候補と鉄川与助

16:00 崎津天主堂見学 

4)五足の靴はここであの人に会う

17:00 大江天主堂見学

5)高浜散策

18:00 高浜地区 茶碗屋旅館宿泊 

【旅程:89日(日)】

9:00頃 高浜地区を出発

9:40   富岡港着

6)海を渡った「五足の靴」

10:00発 富岡港出航→高速船で茂木港45分
10:45着 茂木港着

1107  茂木港バス停発(長崎バス)

           稲佐橋行きバス

11:27 「浜の町」下車 (1210)

7)オランダ坂フィールドワーク

その後徒歩。オランダ坂登り口より活水学院あたりを散策。下浦石の確認等。

13:00 軍艦島コンシェルジュ事務所 常盤桟橋

 8)軍艦島フィールドワーク

13:40 軍艦島クルーズ出航 

14:00 伊王島

14:3515:25 軍艦島上陸 

16:05 長崎帰港

9)グラバー園下フィールドワーク

16:30 別経路で長崎市内に来た九大バスに乗車 → 大浦天主堂界隈を散策

18:00 長崎出発 20:00 大橋着

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 個性的な参加者をのせてバスは出発
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 天草市まで3時間半。藤原研究室ではバス移動の際、自己紹介と「あるお題」に答えるということをします。一緒に旅をするみなさんとお近づきになるためです。お気軽に答えて下さいませ。
 一巡目の質問は「みなさんの健康法は?」 皆さんからは「5本指ソックス利用」「ブルーベリーを食べる」「スムージー」「エアロビ」「あんまり考えない」「玄米パン」「あたたかいシャワー」といった答えがありました。
二巡目の質問は「石好きですか?」皆さんからは 「旅行に行ったらお土産として石を持って帰る。採取した日を書いておく」「石を集めるのは男性の趣味だと思う」「我が家の100坪の庭の風景になってる」「砂漠の薔薇」「宇美神社で子宝石をもらってきたらその通りになった」「腎臓結石もってる」「秋吉台の鍾乳洞」「親から翡翠をもらった。中国ではこれは身代わりになる」「出島も石」「ロッククライミングで死ぬ思いをした」という答えがありました。
 ↓の山は天草の岩屋というところの飛岳です。採石場でした。
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 天草の岩屋です。この近くに三角西港があります。ここは明治時代にムルドルにいよって設計されました。明治の時代は、大牟田で採った石炭を上海などに持っていく鉄路とその後の海路を必要とし、鉄路は三角駅までできたが、西港は拡張しようにも背後に山があり、鉄路は東港に向かう。鉄道と西港が結びつかなかったので、三角西港は明治20年にできたものの、ほどなく港は機能を失っていく。一方、大牟田には三池港ができ、石炭は三池港から海外へいくことができるようになる。このように使われた期間が短かったので三角西港は美しいまま保存され、世界遺産の構成資産の一つになります。
 ここをつくった棟梁は天草の石工出身の小山秀で、近くの飛岳やぞうがたけから採掘された石で港をつくりました。この小山秀はこの旅の中でずっと追っていく人物です。
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 そうこうしているうちに天草キリシタン館につき、見学。まずは天草の歴史を概観するということをしました。
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天草は夕日がきれいなところです。
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 昼食は天草キリシタン館の下にある「赤こしょう」です。税込1080円でランチ。
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 昼食後、下浦に着き、早速 トランセクトウオーク。初めての下浦の方もいました。
下浦は、江戸時代後半に松室五郎左衛門が石工の技術を伝え、そこから石加工をするようになりました。下浦の石は、柔らかく、現在のような機械がなくても切り出しやすく、加工しやすいとのことです。
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 トランセクトウオーク開始。
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 下浦石↓の加工作品。
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 下浦のお米の刈り取りはもう終わっていました。
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 おしかさまで集合写真をとりました。
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 下浦石は加工しやすいので、建材にもなります。
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 ↓千葉平五郎石材店の千葉順二さん(仕事中)と出会いました。
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 下浦地区を見た後は、1時間弱移動して、来年の世界遺産候補になっている 崎津天主堂へ向かいます。
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【崎津天主堂】世界遺産‘長崎の教会群とキリスト教関連遺産’の構成資産

﨑津は、天草諸島の下島の南部に位置する漁村で、土地が狭いため海上に柱を立てたカケ(作業場)や、密集した民家の間にトウヤ(細い通路)が発達する。

(参考)濱名志松(1983)『五足の靴と熊本・天草』国書刊行会


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 この日の最後は、大江天主堂とガルニエ神父にであうことです。教会は17時までは開いており、この時間を過ぎると扉が閉められるということなのですが、私たちは間に合いました。

【大江天主堂】

現在の白亜の天主堂は19331月竣工したもので、当時で総工費二万五千円を要し、そのうち二万円はガルニエ神父の私財から出し、残りの五千円を信者が拠出した。工事を担当したのは五島出身の鉄川与助。

(参考)濱名志松(1983)『五足の靴と熊本・天草』国書刊行会

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 五足の靴の目的は、ガルニエ神父に会うことでした。公開講座の参加者のみなさんもガルニエ神父にであって何か得るものがあったでしょうか。
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 ↓ 泳いでいる方もいます。
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 このようにして、初日は終了しました。みなさま いかがだったでしょうか。五足の靴が天草の旅をした時期と同じ時期に、その足跡を辿ることにより、何がみえましたか。今回は、五足の靴の旅の他に、小山秀之進、鉄川与助という棟梁も登場しました。
 昔、都会から来た五足の靴と地元で生きている人々の交流により、何が生まれたのか。五足の靴のメンバーは天草の人々から何を得、それを創造的活動にどのように生かしたのか。
 私は天草で生きる人々の力強さを感じました。農業、漁業、石加工で生きる、商業の都会では見えなくなってしまう人間の根源をみました。
                                       岩井

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