建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
ひた演劇祭第5回のご案内。
今夏、8月29日(土)〜30日(日)にパトリア日田にて開催されます。
詳細は以下へ。
http://hitageki.com


昨年は、
このような寄稿を読むことができました。






photo2


<寄稿>繋がる人・広がる輪
 ~三度目の日田を訪ねて






















夏休みの宿題に追われる子どものように、どこか切羽詰った気分で訪れる。それが毎年8月末に行われるひた演劇祭だ。芸術繁忙期の秋を前に準備は万端か、夏にやり残したことはないかと自問自答する車内の時間はあっという間に過ぎ、夏の白い日差しを受けながら、三度目の日田に降り立った。メイン会場のパトリア日田も、水と緑の変わらぬ心地よいアプローチで迎えてくれる。

 第4回を迎えたひた演劇祭、そのプログラムを見渡して浮かんだ言葉は「進化と展開」だ。

 日田市唯一の劇団ソングラインは、前年度の市民参加企画「芝居やるばい!」の戯曲講座を受講したことから、初めてオリジナル作品『豆、暗闇に弾ける』の書き下ろし・上演に挑戦。作品は劇場にもほど近い、歴史的な町並みを残す豆田町を舞台にした時代劇で、笑いも涙もアクションもある欲張りな構成だ。劇構造やテーマ云々より、好きなことを盛り込んだパワーを感じさせる舞台に触発されたとように、客席からは市民の笑い声が盛んに起きていた。

 ゲスト公演も話題性十分。作・演出・音楽を手掛ける糸井幸之介と、主宰兼看板女優・深井順子がタッグを組むFUKAI PRODUCE羽衣、その二人がひた演劇祭のため、新作ひとり芝居『橙色の中古車』を引っさげての登場だ。

 アルゼンチンを一人旅する女が出会う恋と抒情、その終わりに出会う人生の深淵を垣間見るような夕暮れの光景。深井のエネルギッシュな演技と歌が、見たこともない南米の土地と人を会場内に鮮やかに映し出す。初めて観る羽衣ワールド、その懐の深さと間口の広さは日田の観客を一人残らず南半球へと連れ去っていた。

 九州のアーティスト+日田市民の企画も負けてない。今年新たに加わった「芝居やるばい! 踊り編」は実に大きな収穫だった。

 構成・振付を手掛けたマニシアは日田出身で、海外でも活動する振付家、パフォーマー。高く気持ちよい吹き抜け、その下にあるロビーに集まったダンサーは赤ちゃんから年配者、ハンディを持つ方までみな白い衣裳をまとっている。カフォンが刻むリズムに様々なカタチの身体が揺れ、跳ね、繋がる様子は、ネイティブ・アメリカンの儀式のよう。水と木という、日田の恵みを象徴するアイテムを上手く使い、構成された作品は生命の喜びと愛に溢れていた。演劇祭プロデューサー・高野桂子とそのご父君もパフォーマーだったことも、カンパニーの求心力を高めたのではなかろうか。

 そして、本家の「芝居やるばい! 劇団編」を率いたのは、宮崎を拠点に劇団こふく劇場の代表であり、県立劇場演劇ディレクター、そして同県三股町の演劇フェスティバル・まちドラ!のディレクターも務める永山智行。『木になる僕らのものがたり~tasteful clogs cafe~』は、水と緑豊かな町・日田の特産である下駄を置くカフェを舞台に、 ささやかでもかけがえのない「個の想い」が交錯する様を丹念に描きながら、日田という土地の背景や魅力を浮き彫りにしていく。

 第2回で同企画『川面に浮かぶ』を手掛けたのは長崎の劇団F’s Company主宰・福田修志で、その時も町と人の歴史をすくい上げ、劇化する誠実な創作と市民の真摯な演技に感激したが、今回も演劇にすれたはずの筆者の胸を、温かく柔らかくほぐしてくれる上質な作品だった。

 企画のために立ち上がった市民劇団けちゃっぷゆでたまごは、明けて翌年1月に一日限りの博多公演も実現。市民の底力と演劇愛を、予想外の形で示したこともトピックと言えよう。


 駆け足で振り返った4回目のひた演劇祭、そのために手繰り寄せた記憶と感触は、今年も私を日田に引き寄せようとしている。

(編集者・ライター:大堀久美子) 

Add Comments

名前
 
  絵文字
 
 
プロフィール

藍蟹堂

藍蟹堂。感受性は海の底から波濤や世界の波瀾万丈を見上げる蟹そのもの。では蟹とは?

『日田ラボ』 最新記事
『きくけん』 最新記事
カテゴリ別アーカイブ
月別アーカイブ
記事検索
ギャラリー
  • ケンミンショーにも紹介天麩羅や「ひらお」空天(く〜てん)いろどり定食!
  • ケンミンショーにも紹介天麩羅や「ひらお」空天(く〜てん)いろどり定食!
  • ケンミンショーにも紹介天麩羅や「ひらお」空天(く〜てん)いろどり定食!
  • 20240327しばしの別れ、珈琲「手音(てのん)」で薫をいただき豆を買う!
  • 20240327しばしの別れ、珈琲「手音(てのん)」で薫をいただき豆を買う!
  • 20240327しばしの別れ、珈琲「手音(てのん)」で薫をいただき豆を買う!
  • 20240327しばしの別れ、珈琲「手音(てのん)」で薫をいただき豆を買う!
  • 20240327しばしの別れ、珈琲「手音(てのん)」で薫をいただき豆を買う!
  • 西鉄バスの未来志向バス停
  • 西鉄バスの未来志向バス停
  • 西鉄バスの未来志向バス停
  • 西鉄バスの未来志向バス停
  • 西鉄バスの未来志向バス停
  • 西鉄バスの未来志向バス停
  • 小さなお社だからこそ原型!塞神社(福岡市南区清水4丁目)の背後に屹立する樹は神さまと大地を繋ぐアースならん
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ