建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

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2015
715日(水)18302100 九州大学大橋キャンパス5号館531教室

藤原惠洋先生による九州大学公開講座 建築探偵シリーズその12では「世界遺産の
歩き方(その1)〜思想・文学・技術・映像・演劇・絵画を通した遺産即興詩人
入門〜」と称し、ユネスコ世界遺産の顕著あの普遍的価値を再認識すると同時に
遺産らと相互に影響し合った思想・文学・技術・映像・演劇・絵画を通して、
より理解を深めていく試みです。
 

いよいよ後半戦となりました第5回目は、1995年に北九州で発足した劇団
「うずめ劇場」の女優、松尾蓉子氏を特別ゲストにお招きし、鉄の都八幡を背景に
生まれた演劇の土壌とその独自性、そしてそこで生まれた劇団「うずめ劇場」の
足跡や地域における役割を講義いただきました。
 

うずめ劇場の女優として大活躍されてきた松尾蓉子さんは、生まれも育ちも
北九州市。満洲から引揚げた祖父母や、北九州の大日本製糖に務めていた父、
芸事の好きな器用な母の元で育ち、小学校一年生の頃から宝塚に憧れるなど演劇の
道に目覚めてゆきます。高校卒業後は女優を目指して横浜へ赴き、やがて北九州へ
戻る中でうずめ劇場主宰者のペーター・ゲスナー氏と出会い、最初はスタッフ
として関わり、のちに女優として舞台で活躍するようになります。
 
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 うずめ劇場は今から20年近く前に一人のドイツ人、ペーター・ゲスナー氏に
よって発足しました。1996年に旗揚げ公演を行ったのち10年間は北九州を中心に
活動、2007年以降は東京を拠点に現在も継続しています。ペーター氏は東ドイツの
ハーレ出身、ベルリンの壁崩壊に衝撃を受け広い世界を見てみたいと、かねてから
好んでいた日本に移住し、ドイツ語講師の傍ら劇団を立ち上げます。鉄の都として
栄えている北九州に劇団はいくつもあり仕事もあるだろうと思っていたら、当時は
自主事業による創造的な劇団は全くなく、自らが立ち上げることになったという
のが契機となりました。


ペーター氏と藤原惠洋先生はうずめ劇場が旗揚げをする以前から深い親交があり、
1994年の北九州演劇祭実行委員会委員を務められた時にさかのぼります。
当時は日本語があまり得意ではなかったペーター氏ですが、藤原先生とは東ドイツ
ハーレやデッサウといった場所の歴史に対する興味関心や、当時から皆の前で
堂々と歌を歌ったりするペーター氏のコミュニケーションの高さ、そしてうずめ劇場
公演の素晴らしさから、長い親交を持つようになったとのことです。
のちに観劇を欠かさない藤原先生が、公演場所として大分の由布院美術館を紹介
するなど、劇団との関わりは深いものとなります。

うずめ劇場は、1996
年に「わが友ヒットラー」(三島由紀夫)を上演、次に八幡の
仲宿八幡宮にて野外演劇「赤目」を上演、八幡西区黒崎正覚寺にて、イントレで
足場を組んで上演した「浮世混浴鼠小僧次郎吉」を上演。日本のアングラ演劇にも
強い影響を受けた作品を次々と生み出していきました。ペーター氏は後に日本の
アングラ演劇をテーマに、ドイツのライプツィヒ大学で修士号を取得します。

野外公演は場所の選定、周囲との折り合い、天候、舞台セット、照明、音響と
大変困難なものだそうですが、「夜壷」や「レオンスとレーナ」といった作品は
北九州の象徴である東田第一高炉を背景にした特設ステージで上演し、北九州の
中で培われてきたものづくりの精神や、演劇が地域の人々にとって親しまれてきた
ものであった土壌などが響き合う経験であったそうです。

当時の上演作品の映像を見ながら、松尾さんより詳細な解説、エピソードなどを
語っていただきました。

北九州は昔から演劇・芝居のまちであり、八幡製鐵所で働く人々を中心に福利厚生
として芝居が楽しまれていた一方で、これまで人々はチケット代を払ったことは
なかったとのこと。もう一つは、北九州という地が石炭、石灰、鉄鉱石から鉄を
作り、どんどん質を高めて、1901年から鉄鋼を作っていく。そのような地域には
クリエーションやイノベーションの精神が根付き、地域と劇団が相互作用し合った
といいます。
 

松尾さんは、初めてうずめ劇場のコンセプトを読んだ時の衝撃も語ってください
ました。これまで芸事を行うときは、どこか好きなことだけをしているといった
後ろめたさを感じていたけれど、うずめ劇場は真っ向から、「自分たちはまちの
為にやる。まちはそれを真っ向から受け止めなければならない」という姿勢を
見せていたので大変驚いたとのこと。当時、そういった姿勢を持った劇団は
非常に存在であったといいます。さらに、のちに行政と共に行った門司港ホテル
を舞台とした「牡鹿王」のエピソードや、やがて東京に拠点が移り調布市を拠点
とした「せんがわ劇場」についてもお話いただきました。
 
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講座終了後は赤木酒店で交流会。それぞれが演劇との関わりや講座の感想を
述べながら、さらに松尾さんよりたくさんのお話をいただきました。
 

 

製鉄のまちを背景に生まれたうずめ劇場について、女優の方からの視点で語られる
経緯やエピソードは、主宰者や観客や行政といったそれぞれの立場を情熱を
持ちながらも冷静に見ている様子が興味深く、上演映像を見せていただきながら
解説される裏話も楽しく聞かせていただきました。野外演劇はこれまでぽつり
ぽつりと観てきた程度でしたが、今後は劇団がどういうポリシーや意図、運営の
仕方でもって上演に臨んでいるのかも関心を持っていこうと思いました。
また北九州という鉄の都を背景として成り立つ芸術文化の独自性が、うずめ劇場の
成り立ちや協力者・鑑賞者たちの反応といったものから浮彫りにされていく講義は
今後様々な地域における芸術文化の土壌を考察する上で、大変示唆に富んだもの
となりました。松尾さん、どうもありがとうございました。



國 盛 

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