建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

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14日(火)1300〜 福岡県田川市福岡県立大学にて13年以上続く「山本作兵衛
を<読む>会」に参加させていただきました。山本作兵衛は筑豊で半世紀以上に渡り
炭鉱夫として勤め、炭鉱の資材置き場の夜警をしている64歳の時から、炭鉱の記憶を
記録に残そうと筆を取り、作画を残した作家です。20115月には、ユネスコ世界
記憶遺産として日本初の登録を遂げ、福岡県立大学の森山沾一先生はその過程に
おいて中心的なご活動をされました。

 

森山沾一先生と藤原惠洋先生のご関係は大変長く、1994年に没後50年を記念して
発足した「尹東柱の詩を読む会」において出会われ、共に韓国踏査にも及んで
いらっしゃいます。2014年には田川市石炭・歴史博物館の事業として文化庁の
助成によっておこなわれた「まちあるきルートマップ事業」のご報告や、田川市
民参加型ミュージカル「炭坑よ、永久に!」でもご対面されており、2015年には
藤原先生が主宰される九州大学公開講座にもご参加下さっています。

 

山本作兵衛を<読む>会は、2002年に作兵衛さんのご遺族の方々から、福岡県立
大学に旧家や遺品の調査依頼が入ったことから始まります。当時の学長から依頼を
受けた森山沾一先生は「これは宝の山だ!」と思われたそうで、メモ帳や膨大な数
の日記を同大学の生涯福祉研究センターで保管すると同時に、日記の解読と
アーカイヴ化に取り組まれます。活動は、<読む>会設立以来、毎週火曜日の
午後に集まって行われてきました。現在は14巻目の研究叢書を発行され、22歳から
毎日付けられてきた日記の解読は、現在1974年頃にさしかかっています。
丁度「筑豊炭坑絵巻」を発刊する前後で、上野英信や元田川市石炭・歴史博物館の
館長であった永末十四雄さんが作兵衛翁の自宅に訪れている様子が垣間見えました。

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13時、福岡県立大学の生涯福祉研究センター2階 中会議室で<読む>会が開始。
森山沾一先生と、読む会の会長を務められている野村喜七郎さんから、近況報告
などが行われました。

後に、4つのグループに分かれ、データとして取り込んだ作兵衛の日記を皆で解読
してゆきます。日記は毎日欠かさず記されており、日時、気温、妻タツノさんが購入
された品物の品数や値段まで克明に記されています。淡々とした記録的なものの
中にも、上野英信、永末十四雄、大牟田からの来訪者の記録や、炭坑記録画の進捗、
モーテル設立反対運動のこと、世界情勢に及ぶまで作兵衛さんの好奇心旺盛な様子が
伺えます。記録魔ともいえる書きぶりの中にも、実直でチャーミングな性格が垣間
見えました。

 

日記の筆跡は、炭坑記録画で見てきたそのものでした。しかし書かれているものは
ゴットン節や記録画にあるような過去の情景、記憶ではなく、現在の日々の暮らし
が淡々と記されていました。過去の情景を描く一方で、現在の暮らしを文字で残す。
この往復の間に作兵衛さんがいると思うと、大変興味深かったです。

 
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<読む>会は、発足当初は学生さんも参加されていたそうですが、現在は平均年齢
75歳で20名程のメンバーで定期的に行われているそうです。中には元炭坑関係者や
石炭・歴史博物館のボランティア経験者の方もいらっしゃいました。
世界記憶遺産として登録された炭坑記録画においては、つい独創的な絵画の方に
目が向きがちですが、<読む>会のように地道に日記の解読とアーカイヴ化を
継続している様子を間近で見る事で、地域の遺産を保存活用する際には、丁寧に
活用されうるような土台作りをすることが必要不可欠であると感じました。
 

<読む>会に参加後は田川市初代市長林田春二郎の元別邸、料亭あをぎりで
彫刻家・アートプロジェクトプロデューサー・NPO法人iArtRevo代表の
母里聖徳さんに会い、近況をお聞きしました。

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あをぎりの真下にある石壁に描かれたアーティスト・ユキンコアキラによる
グラフィティ。左側上に山本作兵衛の肖像も見られます。 

森山先生、<読む>会の皆さま、あをぎりの皆さま、大変お世話になりました。
どうもありがとうございました。



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後日、福岡市博物館にて開催中の展覧会「山本作兵衛の世界」も拝見しました。
山本作兵衛の炭坑記録画が生まれた背景が、時代、地理的条件、炭坑労働の実情
といった視点から詳細に語られ、どのようにして記録画が生まれたのかが
前段階としてたっぷりと示されていました。また原画の迫力はさることながら
なぜ炭坑記録が人々の心を打つのか、記録として価値があるのか。
炭坑記録画の成立に尽力した炭坑経営者、文学家、現代美術家、専門家らによる
視点や、福岡市博物館館長の有馬学氏による解説などを通して、より深く理解
することができました。

國 盛 

 

 

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