建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
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(上の写真はシアトル公共図書館。2004年5月にオランダ人建築家Rem Koolhaas 及びJoshua Ramusがデザインした11階建ての中央図書館。広さ4,557㎡。地下駐車場33,758㎡。大きくて全体が写真に入りません。)

 私は2015年6月23日(火)~29日(月)まで、アメリカのシアトルとサンフランシスコへ図書館研修に行ってきました。これは図書館総合展運営委員会と丸善株式会社により企画されJTBが実施したものです。公共図書館司書、大学図書館司書、図書館を支える業者の方々、出版社の方の参加があり、企画されたスタッフの方などあわせると30名以上の団体になりました。
 スケジュールは以下です。
 6月23日(火)成田→シアトル 
                ①シアトル公共図書館
 6月24日(水)シアトル      
                  ②ワシントン大学図書館視察(説明案内・施設見学・意見交換)
        ③マイクロソフト社図書室視察(説明案内・施設見学・意見交換)
 6月25日(木)シアトル→サンフランシスコ
        ④スタンフォード大学図書館視察(説明案内・施設見学・意見交換)
 6月26日(金)サンフランシスコ 
                  ⑤カリフォルニア大学バークレー校図書館視察
                       (説明案内・施設見学・意見交換)
        ⑥サンフランシスコ公共図書館視察
        ⑦アメリカ図書館協会(ALA)総会オープニングレセプション
 6月27日(土)サンフランシスコ 
                 ⑧ALA総会セッション参加
       ⑨ALA受賞者・関係者からのレクチャー
 6月28日(日)サンフランシスコ→シアトル→日本へ移動
 6月29日(月)成田空港着

 シアトルは、マイクロソフト創立者の一人ポールアレンの出身地であり、ビルゲイツの寄付金を管理する会社がある地です。また、シアトルにはボーイング社の工場、アマゾン本社、マイクロソフト本社があり、それぞれおおよそ、8万人、6万人、4万人の方々が働いているとのことです。ポールアレンがジミーヘンドリックスのためにつくったホールもあり、これは上からみるとギターの形をしているとのことです。シアトルの2つの変わった建物として、ジミヘンのホールとシアトル公共図書館があげられているということでした。私たちのツアーがシアトルを訪問した時は6月下旬で気温は22~3度、北海道のようなさらっとした空気の中、チェリーが旬であちこちで売っていました。
 ↓シアトル空港の様子。
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 バスに乗り、パイクプレイス見学へ。
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 ↓はマウントレーニア山。シアトル市の南東約85マイル(約140キロ)のところにあり、ワシントン州を東西に分断する14,410フィート(4,392メートル)の標高を誇り(世界21位)。 
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 水陸両用車です。ダックツアーといって最後は水に入るそうです。↓
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今回のこの図書館研修参加者には、児童書出版で有名な偕成社の今村正樹社長、京セラ丸善の代表取締役の松木憲一社長をはじめ、東京商工会議所の渡邊さん、国立国会図書館の小沼さん、大日本印刷の鈴木さん、名城大学の檜森先生はじめ、司書として働く方々のみならず、図書館に関係する仕事をしている様々な方がいらっしゃいました。主催者側の企業の方も加えて30名くらいになってます。
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 シアトルはスターバックスの発祥地。↑パイクプレイスという市場にスタバ1号店があります。
 ↓日本とは違う市場のディスプレイを面白く感じました。
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 本屋さんもありました。
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 ↓はトイレです。
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 パイクプレイス見学後、シアトル公共図書館へ。シアトルとは、57万人の人口で大手の企業がある街で、図書館は中央館と26の分館がある。
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 1)シアトル公共図書館は、創立1890年、分館26館、移動図書館1台。蔵書数250万冊。2015年度予算653万ドル(8億円以上)。この建物↓は中央図書館で145万冊の蔵書が可能、現在は100冊。書籍専用の棚が9906あり、公共使用の無料コンピューターが400台。英語の他スペイン語、中国語、ベトナム語、ロシア語、東アフリカで使われている言語の小説、映画及び音楽を提供している。バイリンガルの職員がいて、読書グループや講演会、トークイベントが開催され、公共用講堂、無料インターネット、ギフトショップ及びカフェがあります。
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 館長からお話を聞きます。
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 シアトル中央図書館は1906年に土地代100,000ドル、上物200,000ドル、書架など20,000ドルの合計320,000ドルの費用でたてられました。約5100㎡あり、クラッシックボザールデザインの建物だったということです。カーネギーが出資したとのこと。
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 1960年に建替えをして
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 再び2004年にも建替えました。建物を建てる時には必要な空間を先に決めてから建物の形を決めたそうです。箱が先にありきだと思っていた私には驚きの考え方です。
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 図書館は公共のものですが、その基金は民間からで、オープンから11年たちスタッフが680名になり、プログラムも多様になってきたとのことで、子どもへの教育活動やコミュニティにたいしてアウトリーチ活動をしているとのことでした。
 1998年にこのシアトル公共図書館でLibrary for all という運動があり、中央館の新設と26の分館の建替えがあったということです。
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 ↑天井は音を吸収する素材でつくられているそうです。↓はこの図書館にはエレベーターはありますが、階段はありません。傾斜2%のスロープで登っていきます。階段ですぐ目的地にいくより、あちこち見ながら行く方が楽しいのではないでしょうか。
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 シアトル公共図書館ではホームレス支援をしています。A4三つ折りのリーフレットですが、「Laundry&Showers Rsource List」がおかれており、ホームレスの人がどこに行ったら洗濯やシャワーを無料で使えるかの案内をしています。非常に感動しました。人を助ける・支援するということの根源があるように思えました。困っている人は何が必要なのか。何が求められているのか。図書館は頭脳だけを扱う機関ではないと思えました。人、丸ごとの人生を支援するとはなんなのか、考えさせられます。
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 赤い廊下もあります。
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 床には様々な言語で小説の有る部分のフレーズがかかれていrます。
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 この青い袋は、子ども向け福袋のようなものです。黄色いタグに大まかな分野は記されているのですが、中に何の本が入っているのか、具体的にはわかりません。しかし、そのことがかえって子どもにはワクワクしていいということです。
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 シアトル公共図書館の利用者への具体的プログラムまでは聞くことができませんでしたが、この中央館は大きく、階段の無い2%の傾斜で各階をまわることができる内部(エレベーター有)は、それだけでゾーニングになっており、加えてコンピューターが400台も無料で使える環境は現代の利用者に合っているように思えました。

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 さて次の日24日(水)はワシントン大学図書館です。↓は大学内に沢山ある図書館の一つ、スザロ図書館。
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 ワシントン大学はワシントン州シアトルにある州立大学。設立は1861年学生数は54,000人、教員数5,800人、Seattleがメインキャンパスでこの他Tacoma とBothellがある。パブリックアイビーグループの一つで7名のノーベル賞受賞者を輩出している。アメリカで教育と研究をリードするAssociation of American universities 62大学のメンバー。2014年度の大学年間予算は約7,680円。3つのキャンパスに16の図書館が点在する。
 専門図書館員70人、蔵書数750万冊、電子ジャーナル10万冊、電子書籍60万冊。スザーロ・アレン図書館には200万冊超の蔵書があり、総面積3万㎡以上の閲覧コーナー。土日も開館。月~木の開館時間は午前7:30~午後10:00まで。
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 教会ではなく図書館です。
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 大胆な耐震がなされていました。
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 その後、学内を移動し、ワシントン大学東アジア図書館の日本研究司書の田中あずささんから同図書館を案内していただきます。アメリカの図書館の場合、様々なタイプの司書がいます。日本ではサービス担当と図書の登録や装備担当という業務があるかと思いますが、はっきり分かれているというより渾然一体となっているように思います。アメリカの図書館のように仕事がわかれているとは思えません。
 田中さんは特定の学部・学科のために存在しているサブジェクトライブラリアン。書籍の目録つくりをするのはカタロガー、図書館の使い方を教えるインストラクションライブラリアン、学生の勉強スペースをでデザインするスペースライブラリアン、留学生のために図書館を使いやすくするインターナショナルステューデントライブラリアン、など、様々な専門司書がいるとのことです。田中さんは特定の学部・学科のために蔵書の構築・管理、資料購入の補助金申請・予算管理、レファレンスを担当するサブジェクトライブラリアンです。ワシントン大学には法学・数学・芸術などの学部図書館が10以上あり、サブジェクトライブラリアンが50名以上いて、約180の研究領域に対応。田中さんが勤務する東アジア図書館もそんな学部図書館の一つで、日本研究・中国研究・韓国研究をサポートしているとのことです。
 そして、そんな専門司書同士が協力して、多分野にわたる研究をサポートするそうです。教授陣や大学院生たちの研究テーマに必要な資料を選ぶには教授たちと面談したり、著書や論文を読んだり、時には一緒に食事をしたりして何に興味をもっているのかを知るということをしているそうです。加えて年間20人の大学院生もサポートしているとのこと。また、彼らがそれぞれの研究テーマについて話し合うJapanologistsColloquiumという集まりが人気でこれは日本をテーマに研究を進めているどんな先行の大学生・院生でも参加でき、気づきやアイディアを出したりするそうです。この他、日本研究の動向をしり、これから必要になるかもしれない情報や資料を集めて蔵書構築をするため、アジア学会やシンポジウム、公開講座に出席することもするそうです。
 
 アメリカでライブラリアンになるには図書館学修士号を取得し、在学中にインターンシップやプロジェクトをして経験を積むことが必用で、田中さんは韓国学で修士号を取得した後、2008年にシラキュース大学で図書館情報学修士号を取得したとのことです。

 日本の図書館とはシステムも司書の資格の取り方も専門職としての仕事内容も全く違います!!!
 日本の図書館は、茫漠としたジェネラリストが運営している場合が多いのではないでしょうか。日本では図書館司書の資格がなくても図書館で働けるし、貸出と返却だけ、棚に本を戻すだけの仕事をしている場合もあります。修士号は必要ではなく、短大卒の基礎資格でこれに図書館関係の科目15単位で司書資格はとれます。専門の職業意識を高めるために研究会にでたり、大学の先生たちの論文を読んだり交流会にでるということもしなくても済みます。田中さんは20人の院生をサポートしているとのことですが、司書が個人的に院生をサポートしてくれるなんで日本の図書館ではないと思われます。
 こうやってアメリカの大学の図書館のサブジェクトライブラリアンと日本の司書を比較すると(単純比較ですが)かなりの差があるのがわかります。日本の図書館、もうちょっとなんとか改善していくことができそうです。
                              ↓田中あずささん。

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 私は九州産業技術史研究会に若干かかわらせていただいているのですが、なんと、日本産業技術史研究会の学会誌『技術と文明』をワシントン大学で発見しました!!!海を越えてアメリカ大陸に『技術と文明』があるとは!
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 学部生のための図書館にも行きました。
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 ↓ここはグループ学習、ディスカッションをするための部屋だそうです。
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 ここは論文指導のための部屋。
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 ↓このコンピューターの数。
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 青い服の女性は大学院生ですが、助成金をもらうためのアドバイスや書類の作り方を指導してくれるそうです。
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 ↓は食堂
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 シアトル公共図書館、ワシントン大学図書館とも、日本の図書館とは違うように思えました。大きく言えば、社会のあり方そのものが日本と違うのでしょうか。まず、利用者の図書館への意識が違うように思えました。日本では図書館も大学もお上から与えてもらうものですが、アメリカは自分たちで求め社会の上層部に突き上げていくもののような印象を持ちました。この後、サンフランシスコに行くのですが、サンフランシスコで出会った現地コーディネーター(米国在住30年)の方から、「米国に住んでいると一般市民の自分たちが社会を動かしているという気持ちになる。」と言われました。社会に対する当事者意識の持ち方が、日本とは違うように思えました。
加えて、アメリカは厳しい競争社会でもあると思います。よく働きよく学ぶ人たちで成り立っているのではないか、その為、教育や図書館(社会教育)は必要不可欠なものであり、これらに対する意識の持ちようが日本と違うと思われました。米国の社会、人々の学習や知識への希求と比べると、日本の図書館は日本人にとってあってもなくても同じではないか。日本人に図書館は本当に必要なのだろうか。単なる小説の貸本屋になっていないかという疑問を感じました。

                                     岩   井



















 


                                                 


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