建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

「私たちが任されたのはデザイン選定まで・・・」という安藤君の説明は危険だ。彼は「デザインは形の問題だけだ」といっているように聞こえる。デザインは多様な力に動的均衡を誘導することであり、力学から経済、工期など、時には政治をも含む多様な力のバランスを見つけ出すことである。求める物は美なのだが、その美は宇宙や地球上のすべての要素が設計のなかに動的に調和することなのだ。
 

 調和や均衡は次の瞬間に崩れていくのだがその振動を時に呑み込み、時に修正して新たな均衡を取り戻す、そのプロセスなのだ。決して形だけではない。選定後に約束したコストや工期をどうクリアするかの判断だって含まれている。
 

 安藤君がデザインは形態だけと考えている筈はない。恐らく責任を回避するための発言なのだろう。友人でもある彼のこの姿勢はがっかりである。
 

 ザハの案は「流麗な流線型で・・」というがこの形態だけを見ると1950年代のアメリカで流行したストリームライン(流線型)と同じである。当時は鉛筆削りまでまるで高速で走るような形が評判だった。国立競技場は走る巨大自動車ではない。「有機的形態が美しい」ともいう。確かに中国の複数のザハの建築も韓国のデザインセンターも有機的で美しい。ここに掲載する模型写真はどこか女性の陰部に似ている。そう有機的なのだ。
 

 日本の美意識は生体的、有機的な形が放つ臭気を持ってはいない。自然との一体感を知る日本人はむしろ「風のイメージ」であって「動物のイメージ」ではない。日本人にとって美の究極は「死」なのであって「生」ではないのだ。このことをザハは知らない。
 

 僕は環境は調和していればいいとは思っていない。特に、グローバル化の進む世界の中での日本は違和感を呑み込む美意識を育てなくてはならない。その意味で僕はザハの建築の日本での建設を否定してはいない。多様な美意識が衝突しながら渾沌という動的均衡を保っていくことが好ましいからである。
 

 政治でいえば、「憲法9条」の戦争放棄で生きるプリミティブな平和主義には賛同できない。多様性の時代には安倍首相のいう「積極的平和主義」は必要だろう。一方で戦争(好ましくないこと)をしながら一方で握手(平和)する時代に突入している。ザハの建築は日本の美意識への挑戦であり戦争である。純粋な日本の美意識が支配する都市は京都だけで十分だ。東京はそれでは済まされない。東京は渾沌(=動的均衡)の魅力で突き進むべきだろう。
 

 安藤君には積極的は発言を期待していた。ザハの美意識が日本のそれと異なっている・・・日本文化への挑戦だと受け止めてこの建築が経済政治技術工学の様々な次元で動的均衡を持つ案として成立させていくことを彼の立場なら主張するべきだろうし、努力するべきだろう。「僕たちの役割は感動的な形を選ぶところまでだった・・・」という発言は悲しく、寂しい。
 

 僕は結論として「ザハの案は回避するべきだろう」と思う。ザハに借りが出来るが又のチャンスに東京の町中に挑発的な建築をつくって欲しい。戦争を仕掛けて欲しい。調和を壊して欲しい。国立競技場は妹島和世の案で実現したい。日本の美意識に立脚しながら挑戦的に世界に主張しようとする新しい日本の美意識を感じさせる。彼女ほど日本の思想と美意識を知っている建築家はいないと思っている。肥満体で動物的なザハに代わって、やせっぽちで植物的な妹島さんの建築を建てたい。
 

 新しい時代の日本の建築が生まれるだろう。最近、飛行機の中で観たシンデレラの映画の最後にこんなセリフがあった。「優しさと勇気を!」というのだ。美しい生きざまはこの「優しさと勇気」だろう。僕はこれを「記憶と願望」と言っている。

 優しさを噛みしめながら勇気をもってザハの案を妹島案に切り替えよう。

写真は陰部のようなザハの案と大地と風のような妹島(SANAA)の案

 

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