参院では14日、東京オリンピック・パラリンピック関する施策について内閣委員会・文教科学委員会連合審査会が開かれ、蓮舫代表代行が新国立競技場の整備費等について政府の見解をただした。
蓮舫代行は、先般就任した遠藤東京オリンピック・パラリンピック担当大臣に、新競技場の建設費が開閉式屋根の建設を除いても2520億円にまで膨らんだ ことに対する認識を尋ねた(資料1)。遠藤大臣は「文部科学大臣が決断し、政府で決定したこと」「(建設費用の)中身については熟知していない」など、他 人事のような答弁を繰り返し、蓮舫代行の「誰が責任を持って建設を進めるのか」との問いにも明確に答えられない始末。蓮舫代行「このまま新国立競技場を建 設するのは非常に危険だ」と強い危機感をあらわにし、具体的な資料に即して現在の建設計画の問題点を問いただした。
新国立競技場の整備費等について政府の見解をただす
蓮舫代行は、そもそも2014年5月に公表された基本設計段階の「1625億円」という概算費用について、この金額が、消費税5%であった2013年7
月時点の単価で算定されていること(資料3)や、「キールアーチ」と呼ばれるの屋根の建設の困難性を認識しながらそれを織り込んでいなかったことを問題
視。「なぜこのような試算が行われたのか」との蓮舫代行の質問に、日本スポーツ振興センター(JSC)の河野一郎理事長は「基本設計条件として2013年
12月に文部科学省が決定した金額が1625億円であり、基本設計条件にこの単価を使用した」と答弁。蓮舫代行は「(試算は)文科省の上限額に合わせたの
ではないか。この時点で正確な試算をしていれば、大臣が(建設計画を見直す)政治決定もできたのではないか」と指摘した。
続いて、2520億円という整備費に対し、現時点では2200億円が財源未定であることや(資料1)、すでに決まっているスポーツ振興基金を125億円
取り崩すことに伴う利回りの減収については一般会計から補てんされることが決まっているとし、「ずさんな整備計画のツケを税金で補てんするということが既
に着々と決められている」と批判した。さらに新競技場の収支見込みについても、JSCが発表するたびに赤字が膨らんでいる事実を明らかにし、整備のみなら
ずその後の維持管理を含めて国民負担が膨らむおそれがあることを指摘した(資料5)。
さらに、新競技場以外の9競技・7会場についてIOCの方針に基づいて財政的な観点から見直しを進めた結果、1700億円の削減効果が見込まれることに
ついて、当初の当該競技の整備費が638億円しかないという矛盾を指摘した(資料7)。つまり、当初の整備費がいつの間にか大きく膨らみ、その金額を見直
したことによって1700億円という削減額が算定されたはずだが、その膨らんだ整備費自体が公表されていない。蓮舫代行は「文部科学省に聞いても『把握し
ていない』と言う。誰がかじ取りをしているのか、まったく答えが返ってこない」と、不安感を示した。
その上で、政府が新競技場の建設計画の見直しを困難とする理由として、2019年のラグビーワールドカップに間に合わせなければならないことを挙げてい
るのに対し、建築家の槙文彦氏らが「ラクビーワールドカップを別会場で行い、新競技場の工期を延長した上で見直しをするべき」との提案を「現実的だ」と
し、新国立競技上のデザインを行ったザハ・ハディド氏のデザインを破棄した場合の支払いは15億円程度と見込まれることや、ラグビーワールドカップの会場
については政府としての機関決定ではないことなどから、新競技場の建設計画を見直し余裕を持って整備を進めるために、ラグビーワールドカップの会場変更を
関係者に説明・説得することこそ遠藤大臣の責務だと迫った。
蓮舫代行は「今だったら見直しできる。3000億円近い政府案がいいのか、1000億円で2020年に余裕を持って間に合わせる槙試案がいいのか、国民
に見える形で比較検討するべきではないか」「踏みとどまる決断をしてもらいたい。このまま進めるのは、次の世代に負の遺産しか残さない」などと重ねて政府
に見直しを要請したが、政府側の姿勢に変化はなかった。蓮舫代行は「ギリシャの財政破綻は他人事ではない。ギリシャの借金は2000億円、日本はこれをは
るかに越える予算で本当に新競技場を作るのか。2020年、東京は3人に1人が65歳以上だ。人口減少時代に入る中で、やはりこの競技場は見直すべきだ」
と訴えた。