建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!



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九州大学芸術工学部公開講座〈建築探偵シリーズその12〉第4回 黒ダイヤから白ダイヤへ〜世界記憶遺産山本作兵衛炭坑画と香春岳アート〜
「世界遺産の歩きかた(その1)〜思想・文学・技術・映像・演劇・絵画を通した遺産即興詩人
入門〜」
2015
72日(水)183021:15(延長しました) 九州大学大橋キャンパス5号館531教室


藤原惠洋先生による九州大学公開講座 建築探偵シリーズその12では「世界遺産の
歩きかた(その1)〜思想・文学・技術・映像・演劇・絵画を通した遺産即興詩人
入門〜」と称し、ユネスコ世界遺産の顕著あの普遍的価値を再認識すると同時に
遺産と相互に影響し合った思想・文学・技術・映像・演劇・絵画を通して、自分自身の感受性や創造性のありようを振り返りながら、世界遺産と私たちの関係を
より理解を深めていこうという試みです。
 

早くも、折り返し地点となりました第4回は、元九州国際大学学長・現田川市石炭・
歴史博物館副館長の清水憲一先生と、この日、めでたく九州大学文書館助教に就任されたばかりの門司赤煉瓦麦酒館館長の市原猛志先生という豪華ゲストにお越しいただき、貴重なお話をいただくこととなりました。
今回は筑豊地方田川を中心にした日本の近代化遺産、産業遺産の魅力を、多角的な視点から探ろうと
深めてゆきました。

 

産業遺産の中でも、昨今最も注目を集めているのは世界遺産候補「明治日本の産業遺産革命群」でしょう。これは九州・山口を中心とした関連地域から構成される資産群です。数日後にはドイツの
ボンで開催されるユネスコ世界遺産委員会において審議される、といった目前の状況です。

一方で、わが国初のネットワーク型の世界文化遺産を「シリアルノミネーション」という手法でめざす構成資産群には、当初明治期石炭産業の重要な産地であった筑豊地方も含まれていましたが、途中から期待されていた田川地区の炭鉱遺産数件は除外されてしまいます。

その後、起死回生の策として、筑豊地方の数多くの炭鉱で長らく坑夫を体験していた山本作兵衛がリタイア後に描き出した一群の「炭坑記録画」が、当時の田川図書館の永末十四雄さんをはじめとする評価者によって支えられながら一大コレクションの様相を見せることとなり、遅れて田川市ではこの山本作兵衛炭坑画を日本初の世界記憶遺産として認定されるための努力を積み重ねることとなり、ついに2011年認定されることとなりました。
あらためて筑豊は日本の近代化産業を語る上では外す事のできない炭田の一つでした。
しかし閉山後の筑豊では石炭産業の栄華を語ることも少なくなり、その後は「負の遺産」と言われるようになっており、現代社会から打ち捨てられた産炭地に、いったいどのような今後の地域再生の可能性があるのでしょうか。本講座のテーマがめざすものも、本来はこうした地域再生への道筋を求めていくことにあります。

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今回は藤原惠洋先生のナビゲートで、清水憲一先生、市原猛志先生、さらには本研究室も携わった田川市「まちあるきガイド養成講座」(2014年 文化庁の助成を受けて田川市石炭・歴史博物館が行ったルート
マップづくり事業)で生まれた成果を振り返ると共に、特別講師のそれぞれの
視点からさらなる田川の魅力や可能性を語っていただきました。
 

前半は、藤原先生から昨年度展開した「田川まちあるきルートマップづくり」事業を振り返りを通して、どのような視点や方法で地域に介在してゆくべきか、その独自の手法と数々の取り組みについてお話されました。

地域の人々や学生らとまちを歩く中で即興的に作品を生み出し、人々の声や記憶を集め、神戸芸術工科大学谷口文保先生による「香春岳アートプロジェクト」と展覧会開催など、その切り口は実に多岐に渡りました。
近年、地域社会を驚愕させた「地方消滅」という言葉に対抗するように、単に人口や経済といった側面ではない地域社会の可能性を、多数のフィールドワークや市民参加型ワークショップの成果から述べられました。
 
 

 続いて壇上にあがられた清水先生は、官営八幡製鐵所の創立期、北九州地域経済史、産業遺産の評価・
保存活用を専門研究とされています。近年は、産業遺産が地域の中でどのように活用され、地域の誇りとなることができるのか、作兵衛画や国内外の炭坑画、筑豊炭田といったフィールドからもアプローチされています。

清水先生も藤原惠洋先生と同じく文化庁世界文化遺産特別委員会委員として国内推薦候補の審議に携わると同時に、かつて九州・山口の近代化産業遺産群と称していた頃の推薦書作成専門委員として製鉄および造船に深く関わる中、韮山の反射炉を構成資産に加えるなど、第一線でご活躍されました。

そのような調査、議論、評価といったことをされる中で、産業遺産を評価する基準がないことに危機感を感じるようになったそうです。
産業遺産をきちんと評価し、保存し、活用するための専門家を養成する必要がある。これらを受けて清水先生も理事の一人として活躍されている産業考古学会の中でガイドラインを作成する動きを牽引されています。
 

またこの間、明治日本の産業革命遺産の世界遺産登録化に批判的だった韓国政府の動きに関しても、清水先生から独自の見解を示していただくことができました。とりわけ歴史家としての立場から、近代化遺産だからといって、限られた歴史に対してだけで評価を与えられるべきではない。歴史的な出来事を区切って語ることは本来の価値を失いかねないものとして受け止める必要がある。とくに評価される遺産の背景をなす歴史全体を押さえていく必要がある。その際、大きな歴史を橋渡しする歴史観の醸成が必要である。またこうした視点を市民や鑑賞者へ的確に伝えるためには、わかりやすく優れたインタープリテーションの必要性があると述べられました。

その中から、朝鮮半島や中国からの強制連行、強制徴用の問題に対して、他の地域がこれまで示してきた歴史との向き合いかたや世界各国の事例を紹介いただきました。

 

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市原先生は、田川市の悉皆調査を通して、まちの小さな物語を集めていくことの
大切さをお話いただきました。田川に残る様々な遺産、商店街、食文化、角打ち文化(!)など実に多彩な対象から、地域の由来や産業がもたらした影響、生まれた文化、根付いた人々の生活が見えてくる、これらをきちんと評価しインタープリテーターとして橋渡しする人材がいれば、その地の魅力資源に溢れた場所として活かしていくことができるのではないか、と示す中、田川という地域の可能性を語られました。
一方で、産業遺産は、土木、建築、技術など様々なものが互いに重なり合い、影響を与え合っているものであり、ひいては地域にも影響を与えている重要なファクターであると述べられ、たくさんの事例を見せていただきました。

 



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 終了後はねぎらいの懇親会へ。

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藤原先生、清水先生、市原先生のお話を通して、産業遺産の価値、魅力、可能性は
実に幅広く、これからを生きる私たちに沢山の示唆を与えてくれるものなのだと
いうことが改めて感じられました。
文化財、産業遺産、世界遺産といった評価は遺産の価値や重要性を伝えてくれる一方で、時としてレッテルとなり、画一化された狭い見方に陥ってしまっている現状を、自分自身の意識のを含め痛感
しました。
遺産の評価基準、遺産のシステム全体や周囲への影響力といった包括的な視点、国際関係やインタープリテーションの重要性といったお話から私たちは遺産が持つ沢山の価値をまだまだ引き出し、守り、活用していくことが大切なのだということを学びました。
清水先生、市原先生、どうもありがとうございました。
 

 

次回の公開講座は715日(水)1830〜 
「八幡製鐵所の鉄都が生んだオルターナティブ演劇〜鉄都を駆け抜けた劇団
うずめ劇場と北九州演劇祭〜」です。

 

 

國 盛

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