
本日の3時限目は大学院の授業「芸術文化・環境論」。履修者全員がこの4月に入った修士1年で、その多くがアジアからの留学生。今日の参加者は中国3名、韓国1名、台湾1名、日本1名という構成。言葉や文化的背景の違う学生がこの授業のキーワードをどのように捉えているのか。そして、どのように考えようとしているのか。本日は、お互いの考えを聞きあい、共有してみるということをしました。難しいことはありません。ただ他人の話を聞き、今まで自らの中には無かった考え方の存在を知るというただそれだけのことです。しかしそれは、今後授業が進んでいく上で必要なことだと思われます。
テーマは「あなたにとってブラウンフィールドとは何か」
TA岩井から、4月25日に大地震が発生したネパールと、2011年に発生した東日本大震災の新聞記事及び映像、都会の限界集落となってしまったある地域の団地とそこで暮らす人々とこれを支える人々のニュース映像、高齢化日本一の限界集落で暮らす移住者の様子のニュース映像、シャッター街になってしまったしょうてん街の映像が提示されました。
その後は皆で一つのテーブルを囲み、「あなたにとってのブラウンフィールド」を考え、模造紙に書いてもらいました。



「あなたにとってのブラウンフィールド」とはという問いに対して、参加者は以下ように書きました。そして一人ひとり、自分の考えを発表します。
・被災地、・シャッター通りの商店街、 ・齢化の進んでいる地域、
・人々がより快適な生活環境を求め移動した結果捨てられた(住居)地域、
・悪いものだというイメージをつけられたクラブ、
・再生の可能性を見て関心を持たなければならない地域、
・考え方や価値観をかえれば再生する地域
この授業で「ブラウンフィールド」とは、汚染された土地のことではありません。主に「見捨てられた場所」を指します。ある参加者がだした「悪いものだというイメージをつけられたクラブ」というのは、どういうわけかわからず摘発されたり、悪いイメージが先行してしまい地域住民や大人から理解されにくいクラブを指すとのことです。この施設の利用者は、先行する悪いイメージにより心がブラウンフィールドになったということだと思います。

参加者のブラウンフィールドに対する意識を聞くことができたので、次に
「ではどのようにしたら、あなたのブラウンフィールドは解決しますか?」と聞きました。
すると、ブラウンフィールドを
「人々がより快適な生活環境を求め移動した結果捨てられた(住居)地域」と答えてくれた参加者は、
「このような問題を意識すること。人々の価値観を変えること。」と答えてくれました。一つの強烈な光のような価値観ではなく、ちょっと振り返ってみること、このことが本当に幸せなんだろうかと考えることが解決への糸口なのではないかということでした。
ブラウンフィールドにクラブを取り上げてくれた参加者は、29日に学外演習で美術館めぐりに参加した際、県立美術館の竹口学芸員から聞いた言葉がそのままクラブにも当てはまると答えてくれました。それは、「ここにいると主張しないでもいい。人々にクラブの存在を受け止めてもらうのがいいのではないか。」
また別の参加者は、ある市の条例は県の条例とは違うので、バラバラな事態が起こり、これにより住民が整合性の無い状態に置かれていると言いました。
ブラウンフィールドを「考え方や価値観をかえれば再生する地域」と答えた参加者は、限界集落と呼ばれる地域についても「お年寄りは宝。物語を沢山持っている。お話の会をすると人は集まる」としていました。
解決するには、「皆と同じ考え方を持たなくていい、一人ひとりの価値観を振り返ってみること。施設や便利さだけに投資するのではなく、人の思いや感情を重視した投資の仕方をしてブラウンフィールドをよみがえらせる方法をとるのがよい。宮崎県の椎葉村に留学生の団体で行った。その土地の人にとっては何の価値もないものが、留学生からみたら興味深いものだった。」

一人ひとりの考えをきいて、最後にこの授業全体を通しての感想を書いてもらって終わりました。
参加者のみなさんは、本当に集中して真剣に自分のこととして考え、発表してくれました。他の人の考え方を聞くことで、何らかの発見・気づきをして、今後の修士研究に役立ってくれればと思います。
岩井