以下、毎日新聞の記事を転載しています。(毎日新聞 2015年04月27日 東京朝刊)
【カトマンズ金子淳】ネパール中部で25日発生した巨大地震は、観光客に人気の首都カトマンズにある仏教遺跡を直撃した。エベレストでは日本人を含
む外国人登山客が雪崩に巻き込まれて死亡。今回の地震の被害は広範囲に及ぶ見通しで、ネパールの成長産業として期待される「観光」が立ち直るには、かなり
の時間がかかりそうだ。
カトマンズ中心部近くにそびえる高さ約50メートルの塔「ダラハラ」。地震で根元部分を残して崩れ去り、多数の観光客らががれきの下敷きになっ た。ダラハラは19世紀に建てられた見張り塔。1934年の地震で被害を受けたが再建された。10年前から一般公開され市内を一望できる名所として親しま れていた。
カトマンズ盆地には、仏教やヒンズー教の寺院が集まるパタンや、中世の街並みが残るバクタプルなどの古都が集中。主要な史跡は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録されているが、木材やレンガを使った古い建築物が多く、甚大な被害を受けた。
インドと中国に挟まれたネパールは、アジア最貧国の一つ。2013年の1人当たり国民総所得は約730ドル(約8万6800円)と、インドの半分以下にすぎない。
工業化の遅れが顕著で、就労人口の6割以上が農業に従事する。他に目立つ産業がないため、海外へ出稼ぎに出た人々からの送金に依存する経済体質となっており、海外からの送金の国内総生産(GDP)に対する比率は2割超と、南アジアでも突出している。
こうした中、期待がかかっていたのが観光産業だった。ネパール共産党毛沢東主義派が90年代から武装闘争を続けていたが06年に終結を宣言。治安 回復に伴い外国人観光客が増え、07年に50万人の大台を突破した後も順調に数を伸ばし、観光年の11年に約73万人、12年には約80万人を記録してい た。
また、世界中から登山者が集まる観光シーズンを迎えていたエベレストでは雪崩がベースキャンプを直撃し、少なくとも17人が死亡した。
昨年4月にも雪崩で山岳ガイドのシェルパら16人が死亡・行方不明となる事故が起きた。それから1年が経過し、登山客が戻り始めたところに再び悲劇が襲った。